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「ナミヤ雑貨店の奇蹟」の小さな奇跡

「ナミヤ雑貨店の奇蹟」を最初に知ったのはアマゾンプライムであった。この映画は2017年公開とのことであるが、当時はまったく知ることはなく、今年家内が見放題対象になっているのを見つけ、一緒に観ることになった。なかなか面白いストーリーであり山下達郎の主題歌もよかった。原作が東野圭吾であったのでなるほどな、と思ったのであった。

さて、つい一ヶ月前のことである。たまに行く地元の大手古本屋で一冊の本を見つけてレジに向かおうとしたところで「ナミヤ雑貨店の奇蹟」の文庫本に気がつき、ついでにと購入した。その後読みたい本が何冊かあったので存在を忘れかけた時、物置棚を整理していた家内が気がつき、存在を思い出させてくれたのである。

文庫本は400ページちょっとであったが、映画をはるかに超えた面白さで、一気に読んでしまった。現代と行き来する時代が70年代、80年代というのも自分にとって思い出深く物語の中に入り込んでしまった。小説全体に漂う’誰もが誰かの役に立つことで明日を迎えることが出来る’というテーマに深く共感できた。

そして私の記憶は2011年にさかのぼる。この年の東日本大震災直前に桑田佳祐がアルバム「MUSIC MAN」を発表、発売日前後にWOWOWでアルバム全曲のスタジオライブが放送された。アルバムの中でもっともお気に入りであった「月光の聖者達 ( ミスター・ムーンライト )」だけはスタジオライブで演奏されず、曲をバックに東野圭吾のコメントが流された。コメントの中で、ビートルズ解散後にファンになったこと、ビートルズ解散に接したことで生き方を見つめ直した男の話を着想していることに触れていた。解散後にビートルズファンになった自分としても、この小説のことが非常に気になったのであるが、一冊も読んでいない私が、彼の多作の中から見つけ出すのは無理だろうと諦め、年月だけが過ぎていたのだった。しかし、この小説こそそうだったんだ。東野圭吾、ビートルズ、桑田佳祐がつながったことに二重に感動してしまった。

「ナミヤ雑貨店の奇蹟」はアマゾンプライムの見放題期間を過ぎたようであるが、その後契約したNetflixでもう一度観ることが出来た。やはりよい映画だ。しかも山下達郎の主題歌「リボーン」は原作、映画に共通するテーマにぴったりの曲だ。映画、原作、桑田佳祐、そして最も重要なビートルズのエピソードが絡まって心に残る、そんな得難い経験をもらった。
傑作小説サンキュー!

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