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『神様探し』〜第3話 懺悔〜

【懺悔】

 懺悔(ざんげ)とは、それぞれの宗教における神、聖なる存在の前にて、罪の告白をし、悔い改めることをいう。



神様は優しい‥



「アナタハ、カミニ、チカイマスカ?」

『はいっ誓います!』
「はいっ誓います!」



俺らの前で幸せそうに
神に誓った2人は



1年後簡単に
誓いを破り


今はそれぞれ幸せそうに
暮らしてる

神様は優しい‥


だってよ
簡単に誓いを破ったのに
二人とも
天罰なく許してくれるんだぜ‥



それなら‥
俺との約束も‥
そろそろ許してくれよ‥



"23年前の2月18日"


俺は神様と約束した


『神様!俺の願いが叶うならもう
一生馬券も当たらなくていい!』


と神に誓った


だとしても


あれからもう23年だぜ‥


そろそろ許してくれても
良いだろう


『だって神様‥
あんたは優しいんだろ‥
あんな約束してごめん‥』


どこにいるかわからない神さまに
毎年この時期なると"懺悔"をしている‥


町外れの神社‥
路地裏の地蔵‥
こんなとこにいるはずもないのに‥


23回目の娘の
誕生日が明日に迫ってた



まさに23年前の
"その日"が


俺が神様と約束した日だ‥


俺の趣味は競馬だ


馬券を買い始めてもう30年以上になる


競馬=ギャンブルという
イメージが強いが俺にとっては趣味だ

好きな名馬のドラマを買う


競馬は次の世代に血が受け継がれ
続ける終わりなき連続ドラマ


月9なんかよりよっぽど
感動する連続ドラマ

もう一度言う
決してギャンブルではない。


ギャンブルと趣味の違いが
わかってない奴に教えてやる!


"小遣いの範囲"で楽しむのが趣味

"手をつけてはいけない金"に
に手をつけてまでやるのがギャンブル!


ましてや‥妻の出産費用に
手を付けるヤツなんて問題外だ


そんな奴は競馬を
やる資格すらない


チャゲ&飛鳥なら当時の
俺を殴りに行っているだろう‥

俺は愛する娘のために買う馬券がある

1つは娘の"名前"が馬名に入った馬券

もう1つは娘の誕生記念に買う
「誕生記念馬券」


しかし後者は2 2年連続ハズレている


そのレース名は


「ヒヤシンスステークス」


娘が誕生した時のレース


そして明日は娘の23回目の誕生日

食卓テーブルの上には1日早い
誕生日ケーキが置かれていた

♪Happy birth day to you × 2
 Happy birth day dear み〜か〜
 Happy birth day to you 〜♪


ケーキの上の23本の
ロウソクの灯が消え


部屋は真っ暗になった

『お誕生日おめでとう美香』

「ありがとう!でももう私も
23だしもうパーティーはいいよ」


誕生日ケーキのロウソクを消す時


ひと吹きで全部を消しながら
願い事を願えば
願い事は叶う‥


俺もガキの頃やったな‥。


そしたらいつも俺の願っていた
ゲームソフトがそのあと出てきた


昔からケーキより
そっちの方が嬉しかったな…。


『美香何をお願いしたの?』

「教えなーい!そういえば最近
 お父さんの"愛してるぜぇ"が
 何かわかったさ!」

『何?あの気持ち悪い言い方のやつ?
あれ何かのマネしてたの!?』

「そう!あれはワンピースの
 "コラソン"ってキャラクターが
 大好きなローに言った"名言"なの!」

『へぇー!そうだったんだね!
でもあなたワンピースなんて
呼んだ事なかったじゃないの!
いきなりどうして‥?』

『さては‥女の子の趣味が変わる理由
 "第1位 彼氏の影響"!
ということは‥彼氏出来たのね!』


「大正解!彼がジャンプ大好きだから
 全巻借りて一気に読んじゃった!」

『遂に‥競馬しか趣味のなかった
 腐女子のアナタにも彼が出来たのね‥
今度お家に連れておいで!』

「お父さんがいない時ねー。」


『それで!どんな子なの?』


「んー。例えて言うなら
 お父さんみたいな人かな」

『やめときなさい!こんな人なんて絶対ダメ!毎週競馬で生活費に手をつけるわ!しまいには出産費用にも手をつける!ギャンブル中毒者!
もしかしてその彼、競馬やったり‥』

「するよ!」

「むしろ、してなかったけど私が教えた(笑)」


『はぁ‥カエルの子はカエルだし
サラブレッドの子はサラブレッドね。』

何やら
妻があきれた顔をしていたが
"神様探し"をしている俺には
内容が入ってこなかった‥

ふと‥火の消えたケーキに
目をやった‥

はっ!

(あっ!そう言う事か!ついに見つけたぞ!)


「ちょっといいか!」


俺はもう一度23本のロウソクに火を灯し
電気を消した


「ちょっとお父さんなにやってるのさ!」


あきれ顔の娘を無視し

そりゃ勝手に適当なところに
懺悔してもダメだよな

あの時も誕生日だ!

神様あんたはそこにいたんだな!


俺は思いっきり息を吸い込んだ!



ローソクの灯は
俺の願いを込めた一吹きで消え去り
部屋がまた暗くなった


(神様どうか23年前の約束を‥)

『お許しください!』


暗闇の中
俺の声だけが響いた


『うるさいっ!』

(明日は22年分の負けを取り返す‥)

「おいっ!お前っ!今!
"彼氏"って言わなかったか!」


「うるさいつ!」

こうして俺の"懺悔"は完了した

明日のヒヤシンスS

俺は神様から23年ぶり

"ご祝儀"を貰う

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