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踊る大競馬戦〜第5話〜『ダークヒーロー』

『さぁこれで!全部わかっただろ!
福之助さんは俺のヒーローなんだよ!』

白髪男は福之助との
家で起こった一部始終話した‥

『俺は自分の意思でこの馬券を2000万円で
 購入したんだ!だから福之助さんの行為は
 犯罪にはならないだろ!』

「でもねぇ‥今回は事件は家の主人も
泥棒に入られた形跡があるんで
調査お願いしますって被害届も
出ちゃってるんだよね‥」

青馬が白髪男を壁に押さえつけながら言った

『おいっ!警察ども‥
 福之助さんを捕まえたら
 お前らを絶対に許さねぇからな‥』


白髪男はそう言うと肩をモゾモゾと動かした

「青馬!!そいつをすぐ離すんだ!!」

青馬は枠の声に驚き
すぐに白髪男を離したが‥

『痛っ!イテテテ!マスター!
 助けてくれ!!この警察に肩を
 押さえつけられ肩が外れた!!』

「ワクさん!この男!
本当に肩外れてます‥」

『これ以上の捜査はやめろ‥
 やめなければ俺は今から救急車を
 呼び、貴様らを傷害罪で訴える‥』

「なんて執念だ‥刑事歴50年の俺も
ここまでして、犯人をかばう
被害者なんて見たことねェ‥」

『だから被害者じゃねぇって
 言ってんだろ!』

枠はある事が気になり‥
聞いてみた‥

「ところで、お前さんよぉ
その福之助さんって奴の
馬券はなんでいつも1000円なんだ?
そんなに金もらってるなら普通は
10万円とか賭けるだろ?』

『福之助さんにとって競馬は
 ギャンブルじゃなくて趣味なんだよ!』

「ギャンブルじゃなくて趣味?
何言ってんだ、趣味が競馬なら
趣味はギャンブルだろ」

『全然ちがう!お金を増やそうと
 馬券を購入するのがギャンブル!
 映画鑑賞みたいに競馬観戦料として
 決まった金額を払って楽しむのが趣味だ』

「単なるヘリクツだろ‥」 
青馬が小さな声で言った

『全然違うわ!クソ若造が!
 マスター!救急車呼んでくれ!』

「わかった!わかった!
ワシも競馬は趣味だと思っとる側の
お前さん達と一緒の考えだ!
それにしてもよぉ、その
福之助さんっての良い奴だなぁ」

『だろっ!』

「だとしたら、残りのお金な何に
使ってるんだろうかな?」

『聞きたいか?泣けるぜ‥』
 白髪男は知っている様子だった

♪タンタン タッタラタンタン
タンタンタン タンタン♪

「枠さん!すいません!本部から電話です」

「もしもし!青馬です!
はいっ‥えっ‥はい‥
本当ですかっ‥はい‥
わかりました‥了解‥」

「青馬‥本部は何だって?」

「枠さん!捜査終了です!
本部からの命令です‥」

「なにがあった!?」

「被害者が被害届を取り下げました‥
今朝、匿名でポストに謝罪文と
クリーニング代が入ってたそうです‥」

「しかも2通も‥」

「謝罪文とクリーニング代?
 しかも2通!?」

「それどころか、家の主人は警備体制が
甘かった事に気づかさせてくれたから
泥棒にお礼言いたいくらいだって
言っているそうです‥」

「はっはっは!侵入した家で何も盗らずに
 クリーニング代を支払う世直し泥棒!
 本当に面白い事件だな!」

「おい!お前さん!もう肩入れて良いぞ!
 被害者が誰一人いなくなったから
 これ以上捜査はせんよ!」

『よしっ!本当だな!』

そういうと白髪の男は腕をユラユラ揺らし
肩を入れ、腕を大きく回した

「枠さん!もしかして‥この男
肩を自分で外したんすか!?」

「お前の同級生でもいなかったか?
 肩を外す特技のあるやつ!」

「どんな同級生っすか!
いるわけないでしょ!」

『もう!捜査なんてするん
 じゃねぇぞ警察ども!』

「フルネームわかってんだから
次、被害届がでたらすぐ
福之助の野朗を捕まえてやるからな!」

『"さん"をつけろって言ってる
 だろうが!くそ若造がー!』

殴りかかりそうな白髪男を枠が止めに入った

「はい!ストップ!わかったから!
 落ち着つけ!落ち着け!
 今回は大丈夫ですので安心してください
 捜査にご協力ありがとうございました」

枠は白髪の客を落ち着かせながら
客がもといた席へ誘導した



「枠さん!福之助の
お金の使い道は聞かなくて
よかったんですか?」

『青馬‥ルパン3世は好きか?』

「アニメのルパンっすか?
はいっ!好きですね!」

『でもルパンは一般的には盗みという
 悪い事をしてるのヒーロー‥
 まぁ言わばダークヒーローだ‥』

「ダークヒーロー?
悪い事してるけど誰かの
ためにはなってる奴ですか?」

『そうだ‥じゃあ何で奴らはいつも
 捕まらないと思う‥?』

「銭形刑事が枠さんみたく
ダメ刑事だから!」

『うるせぇ!馬!この青2歳刑事が!
オレら優秀な刑事はな
逃げられてるじゃなくて
逃してやってるんだよ!でもそれ以上に‥
ダークヒーローってのはなぁ
悪い事以上に
徳を積んでるからだよ‥』

「ははっ!てことはラッキーすか!?」

『あぁもしかしたら、
 正月あったニュースも
 ダークヒーローの仕業かもな‥』

枠は携帯のYahoo!ニュースに目をやった

元旦、匿名で送られてきたランドセル


枠はカウンター席に腰を下ろした

『よしっ!今日の仕事はコレにて終了だ!
 マスター!ところで‥その馬券の
 ハヤテノフクノスケって馬は次は
 いつ出走するですかねぇ』

「刑事さん!丁度今日の中山競馬場
メインレース《京成杯》で
出走しますよ!5枠8番
ハヤテノフクノスケ!」

『ははっ!なんて偶然だろうな‥
 よしっ!青馬!久しぶりに競馬を
 楽しんでみるか!』

「いいっすね!!
でも‥ワクさんの競馬の感は
当たらないからなぁ!」

『今回は自信あるぞ!
 なんてったって俺から
 逃げ切った野朗だからな‥』


さぁ‥今度も

逃げ切ってくれよ!


『ハヤテノフクノスケ!』

「ワクさん単勝3千円て!
さっき競馬はギャンブルじゃない
って言ってたでしょ!」

『無理のない資金ってのはな‥
 人それぞれなんだよ‥まっ
 お前の安い給料だと1000円だろうな』

「そこまで安くないっすよ!」


事件のような重苦しい雰囲気はどへやら‥

競馬は今日も‥
ベテラン刑事でもわからない‥
刑事事件にも劣らないドキドキな
物語(ドラマ)を見せてくれる‥

中山11R 〜京成杯〜
15時45分 発走

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