『神様探し』〜第2話　ミカダンディー〜

神様‥

どうか‥

いるのなら

"あの日"に戻してください


私は‥

押入れのおもちゃ箱から取り出した
シルバニアファミリーの時計の針を
戻してみた‥

"あの日"は‥

私が人生で1番笑われた日‥

そして‥

私の"アダ名"が決まった日‥

キーンコーン

カーンコーン♪

『よしっ！みんな！ちゃんと今日は宿題
やってきただろうなバカヤロー！』

『やって来なかったやつは
先生の4の字固めだぞコノヤロー』

参観日という事もあり
いつもより
闘魂が注入されている藤田先生の
声が教室に響いた

「今日の宿題は"私の名前の由来"
準備がよかったら行くぞー！』

「1！2！3！」

『はぁーい！』

完璧に仕上げてきた私は

自信満々に手を挙げた

笑われる序章とは知らず‥

「私の名前の由来」3年2組

すがわら　みか

　私の名前は"美しく香る"と書いて"美香"です。
茶碗洗いをしていたお母さんに
『私の名前は何からきてるの？』と聞くと
「綺麗で美しい香りの花の様な子になってほしいから美香にしたのよ"ヒヤシンス"みたいな
良い香りで幸せにする花よ！」
と言っていました。

日曜日ケイバから帰ってきたお父さんに『美香って名前は"ヒヤシンス"みたいな美しい香りの花になってほしいから"美香"なの？』
と聞くと

『本当は違う！それはママが考えた
あと付けの理由な！
お父さんは嘘は運気が下がるから
嘘はつきたくない！
だから本当の事を言うぞ！』

『本当のみかの由来は
"ヒヤシンスステークス"に出ていた
お馬さん"ミカダンディー"からとったんだよ』
と言われました。

お父さんは"ミカ"の名前が入った
お馬さんが大好きです。

この日も"プリンセスミカ"100円
という名前の
お馬さんカードをくれました。

ミカの名前入りカードは
美香の"宝物'です！

だから私は"ミカと"言う名前が大好きです！

おわり

‥‥‥

一瞬の沈黙のあと教室は
凄まじい拍手と爆笑につつまれた

『み‥美香さんのお父さんはとっても
美香さんの事が大好きと言う事だな！』


苦笑いの藤田先生が割るように入ってきた


盛り上がった教室で私は
満面の笑顔で後ろを見た

なぜか

お母さんは真っ赤な顔で
目を隠し下を向いていた

そして気づいた‥


私のお父さんは‥

普通のお父さんではないという事を‥

次の日‥

『おはよ！ダンディー！』

親友のジュンコが後ろから私を呼んだ


そう‥

"あの日"から

私のアダ名は‥

"ダンディー"

になった‥

何周も巻戻したおもちゃの針は‥

何も変えてくれなかった‥

あだ名は
"ダンディー"
になってたけど‥

本当はそれほど嫌じゃなかった‥

お父さんが『愛してるぜぇ』


といつも"ミカ"入り馬券
くれるから



わたしはおもちゃの宝箱を開けて


たくさんの"ミカ"入り馬券を

見るのが好きだ‥

どんなに笑われたって

この"ミカ"入り馬券は

私にとっての

"宝物"

はっ！

本当に時間が戻ったら彼との
時間も無くなる事に
気づいた私は

急いでおもちゃの針を
同じ回数だけ進めた‥