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痛みのパラドックス

ある痛みは別な痛みを消す一方で、眠っていた痛みを呼び起こすことがある。

痛みにはソレに救われ、別な痛みに苦悩するという、自己治療的対処行動が自らを傷めていくというパラドックスがあります。

また、痛みをわざわざ確認しようとする痛み探索行動が見られ、疼痛性の酔いをもたらし、痛みにとらわれ痛みを手放せなくなってしまいがちです。

これは、様々な嗜癖行動の特徴としてよく見られることでもあります。

そこそこ長いこと疼痛治療にもたずさわってきていますが、表出している身体的疼痛と心理的疼痛は卵と鶏のような関係にあることがわかります。

実は安易に急いで強引に痛みを取り除くと、疼痛によって隠されていた苦悩(心理的苦痛)が表出され、時に自殺企図を誘発してしまうことがあります。

身体的疼痛が緩和されていくことと心理的疼痛が緩和されていくプロセスは並行しておこるものと、反比例してしまうものがあり、なかなか複雑です。

疼痛治療にはハームリダクション的な考えにもとづく治療関係の継続が重要なポイントとなってきます。

私たちはついうっかり治す……ということにとらわれてしまい、なかなか治らないことに疲弊消耗し悲観してしまいますが、カレー沢薫氏の著書「なおりはしないが、ましになる」を目指していくことが現実的なんだと思うのです。

かく言うイカレポンコツの私も、治らない病気をいくつも抱え、いつ爆発するかわからない恐怖や、病気がさらに増えていくことへの不安を抱えながら生きのびていくには、やはりちょっとでも苦痛の少ないましな状態を維持していくことになり、そのために治療を継続しているわけです(^_^;)

 

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