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タイムカプセル

4月の話。保育園からの相棒に会いに地元に帰った。会うのは中学の卒業式以来。今年の誕生日にその子が連絡をくれたことがきっかけだった。それから何度かやり取りして、小6の時に家の庭に埋めたタイムカプセル、開けよう!って話になって。

正直、会っていない時間が長くなればなるほど会うのが怖い。もちろん会いたい気持ちはある。でも、それ以上に自分の変化に失望されるのが怖い。容姿も中身も。相手の変化も予想できないからそれも怖い。そうやってこれまでは「今度会おう」詐欺を繰り返してきた。でも、今回は違う。勇気を出してよかったと心から思う。

久しぶりに会ったその子は、保育園の頃から変わらない無邪気でお茶目な笑顔で私を迎えてくれた。前みたいに親父ギャグ全開で私を笑わせて、でもふとした時にすっごく大人びた表情になることがある。それはこの5,6年の間にその子が出会ったたくさんの人や経験から来るものだと思う。過去に彼女が経験した悲しみを知っているけれど、私はそのあと彼女がどうしていたか全く知らない。あの時の彼女の、涙でぐちゃぐちゃになった顔と止むことない大きな泣き声がずっと頭に残っていて、どうしているかなと思いつつ、いつも臆病さが勝ってしまった。

でも、この日彼女と会って、わかった。きっと彼女は私が想像もできないくらいたくさん悩んで、苦しんだ。でも辛いことも悲しい気持ちもなかったことにしていない。忘れようとするのではなく、それを受け入れて自分の大切な一部にしているような感じ。なんだろう、ぴったりの言葉が見つからないけれど、私が思っていたより彼女はずっと強くて、大人なのだと思う。誰よりも思いやりがあって、自分の大好きな人やものを本当に大切にする。確かなことなんてない未来を知っているからこそ、誰よりも「今」を生きている。自分とちゃんと向き合っている彼女を、とてもかっこいいと感じた。

それで、結局タイムカプセルは見つからなくて次回に持ち越されてしまったのだけど、途中からそっちの方はどうでもよくなってしまった。もちろん彼女が入れた「お気に入りの上履き」が今どうなっているのかは気になるところだけれども。ラーメン食べて、バッティングセンター行って、クレープ食べて、泥団子作って、草むらで風に吹かれながらプリン食べて、ちょっとカラオケして。思い出話と近況と、これからお互いが進む道についてたくさん話した。たった6時間。素晴らしく濃い6時間。一言では表せない気持ちで胸がいっぱいになった。

ちなみに、タイトル写真で一句。
見つからぬ タイムカプセル 諦めて
夢中で磨く あの日の記憶

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