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虹のおすそわけ

 今日は1日中雨。大事な用事があったのに、湿気のせいで髪はうねりもはや落武者。気落ちして家に帰ってくると、保育園からの友達より、一件のLINEが。それがこの写真でした。一枚の虹の写真。メッセージはなく画像だけ。それがまた、何ともその子らしくて。
 地元の虹を見られて嬉しい。でも、彼女がこれを送ってくれたことがもっともっと嬉しかった。写真を見てふと思い出したんです。小学校か中学校か忘れちゃったけど、いつかの教科書に虹の詩があったなぁって。当時は義務的に勉強しただけだったけれど、今日初めてこの素敵な詩を「味わう」ことができました。

大好きな友達が分けてくれた虹を、今度は私がお裾分けする番かな。

虹の足

吉野 弘

雨があがって
雲間から
乾麺みたいに真直な
陽射しがたくさん地上に刺さり
行手に榛名山が見えたころ
山路を登るバスの中で見たのだ、虹の足を。
眼下にひろがる田圃の上に
虹がそっと足を下ろしたのを!
野面にすらりと足を置いて
虹のアーチが軽やかに
すっくと空に立ったのを!
その虹の足の底に
小さな村といくつかの家が
すっぽり抱かれて染められていたのだ。
それなのに
家から飛び出して虹の足にさわろうとする人影は見えない。
―――おーい、君の家が虹の中にあるぞオ
乗客たちは頬を火照らせ
野面に立った虹の足に見とれた。
多分、あれはバスの中の僕らには見えて
村の人々には見えないのだ。
そんなこともあるのだろう
他人には見えて
自分には見えない幸福の中で
格別驚きもせず
幸福に生きていることが――。

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