月次支援金の不備について整理

 月次支援金について、申請要件を満たす月があった場合、申請者はこれまで給付を申請しており、受理され給付をされてきた。しかしながら今回申請月の申請について、不備が解消しないと事務局から指摘があり、給付に至っていない。この件について整理する。

概要
1.申請者は2021年1月1日付で母より事業承継し開業した被承継者である。
2.被承継者は開業届を税務署に提出し受領押印された控えがある。
3.承継者は被承継者の母親であり、2020年12月31日付で廃業しており、廃業届を税務署に受領押印された控えがある。

 この3点をふまえ、今回申請者が提出した書類を月次支援金申請要領54ページに基づき整理する。

■事業を行っていた者の名義による証拠書類について提出した書類
①母親は2019年分及び2020年分の確定申告書控え及び所得税青色申告決算書を提出している。

■事業の承継を受けた者の名義に係る証拠書類について提出した書類
②対象月の売上台帳
③通帳の写し
④本人確認書類
⑤宣誓・同意書
⑥右記いずれかの書類について(開廃業届又はその他公的機関書類)
1.個人事業の開業・廃業届出書について
(1)届け出の区分欄において開業が選択されている
→申請に使用した開業届には届け出の区分欄がなく、区分に応じて該当する「開業・休業・廃業」欄に○をする様式であり、開業欄に○がされている。
(2)2020年分の確定申告書に記載の住所氏名からの事業の引継ぎが行われている事が明記されていること
→提出した様式には事業承継を記載する欄がなく、明記されていない。
(3)開業届・廃業届欄において開業日が2021年1月1日から同4月1日までの間とされていること
→2021年1月1日付で開業している事が記載されている。
(4)収受日が2021年5月1日以前であること
→2021年3月19日付で受領されている。
(5)収受日付印押印されていること
 →押印されている。

整理
 この通り、上記(1)及び(2)が不備の要因となっていると考えられるが、申請者が提出した開業届の様式は県が現在も提供している様式である。(1)については開業欄に○をした事で、開業届であることは明白であり、税務署に受理され収受印が押印されている事からも明らかである。(2)については、提出し受理された開業届・廃業届の様式には事業承継を記載する欄がないため、明記する理由がない。本様式での申請に問題がない事は税務署に受理され収受印が押印されている事からも明らかである。

 事業承継が行われたことを説明するため、申請者は次のような対応を行った。提出した書類と効果について記載する。
①承継者の廃業届の提出
 廃業届には、住所及び事業所所在地が明記されており、被承継者の住所及び事業所所在地記載内容と同一であり、事業承継を行った事は明らかである。

②所得税の青色申告取りやめ届出書の提出
 承継者が2020年3月19日に税務署に提出し受領された控えのある所得税の青色申告取りやめ届出書を提出しており、本届出書には、取りやめをする理由欄に『娘に事業譲渡する為』と明記されている。この事も、事業承継が行われた証拠の一部となり得る。なお、本申告書の納税地以外の住所他事業所欄に記載がないが、事業所は届け出を行った税務署管轄の納税地にあり、納税地以外に住所他・事業所等がある場合に記載する本欄に記載する必要はないため空欄となっている。

③源泉所得税の納期の特例に関する承認申請書の提出
 被承継者が2021年3月1日付で税務署に提出し2021年3月19日付で受理された源泉所得税の納期の特例に関する承認申請書には給与支払事務所等の所在地として店舗住所が記載されており、承継者が提出した廃業届の事業所住所と同一である事からも、事業承継された事は明白である。

 上記一連の書類は全て税務署に正しく受理され収受印が押印されており、事業者に課せられた税務申告上の義務は全て果たしている。なお、申請者は青色申告承認申請書を税務署に提出していないが、本申請書は任意であり提出義務はない事を付記する。

④事業承継証明書の提出
 承継者が加入し被承継者も引き続いて加入している商工会の発行する事業承継証明書には事業の全部の承継がされたことが記載されている。

以上をふまえて
 今回申請者が税務署に提出した開業届の様式は県が現在も提供している様式である。本様式が使われたことが問題であるなら、国は本様式を提供している県を、或いは受領した税務署ひいては国税庁を責めるべきであり、国及び県の問題である。この問題においては、申請者は善意の第三者である。そのため提出者に帰責事由はなく、本様式を使用した事によって提出者が不利益を被る事に正当性はない。今回の月次支援金スキームで事業実態の把握に税務申告書類を流用しているが、税務申告上に問題が一切ない以上、不備とする事に正当性はない。では課題がどこにあるのか。

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