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「MOSFETは電圧駆動」という説明はある意味間違っています

世の中に流布されている知識の中には、間違ってないが実用に耐えない知識というものがあります。「MOSFETは電圧駆動」「バイポーラトランジスタは電流駆動」というのもその一つだと思います。 その理由について書きます。 
今回はMOSFETに焦点を当てて説明します。

「MOSFETは電圧駆動」この言葉は非常に説明不足です。何も知らない人に使う説明としては相応しくありません。それを仕事で使う事はなく、知識として知っておきたいだけなら別にそれでも構いませんが。

電圧駆動と言うと、電圧さえ印加すれば駆動できると思ってしまう人がいます。
その時、電流は必要ないでしょうか?。もし電圧だけで駆動できるとしたら、エネルギー0で駆動できる事になってしまいます。しかし、エネルギー0で動かせる夢の様な装置はありません。

では、電圧で何ができるかというと、それはON(OFF)の状態を維持する事です。状態維持だけなら電圧だけ(エネルギー0)でできるのです。

つまり駆動には電圧だけでなく電流も必要。状態維持なら電圧だけで可能と言う事になります。

それに対してバイポーラトランジスタは、駆動も状態維持もどちらも電流を必要とします。


でも、現実にMOSFETを使用していて、電流など意識しなくても問題になった経験などない、と言う人もいるかもしれません。

その人は、照明スイッチのようなON/OFF動作でしか使用していないからかもしれません。 単発のON/OFFだけならば、電流が足りなくてもスイッチング時間が多少遅延(長く)なるレベルで問題にならないわけです。

しかし、電源回路(インバーター)や高速IC内部のスイッチング等は、非常に高い周波数でON/OFFされます。つまり状態維持時間が殆どなく、常にON/OFFをしているわけですから、電流が連続して流れている状態になります。 こうなると然るべき電流を確保しなければ、その機器は動作しないのです。

電圧駆動のMOSFETを使っているのに、むしろ電流について考えなければならないのです。

確かに、MOSFETのゲートはキャパシタと等価なのでハイインピーダンスであるため、パラメータは電圧である。と言いたい気持ちは分かりますが、キャパシタも高周波信号の下ではローインピーダンスになるわけですから、電圧駆動と言ってしまうのは少し浅はかな気がします。

「電圧」「電流」を対比させた物は、必ずこの落とし穴が待っています。
電圧源、電流源もそうです。
初心者向けに明快で言葉足らずの説明がされる事により、実用に耐えない知識レベルの概念を植え付けてしまうのです。

そもそも、電圧と電流の関係は対等ではありません。
両者は主従関係です。 電圧をかけた結果、電流が流れる。
電圧が「主」、電流が「従」。電流は結果でしかありません。

ですので、電流だけが発生する事はありません。
バイポーラTrは電流駆動と言っても本当は電圧で駆動している訳です。
しかし、制御を考えた場合、電流をパラメータにしないと設計できないので、電流駆動と言っているわけです。

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