【4.4.10】CEOの引継ぎ("CEO" succession)

※ティール組織の著者Frederic Laloux によるINSIGHTS FOR THE JOURNEYの日本語訳の個人的なメモを公開しています。
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■元のURL
https://thejourney.reinventingorganizations.com/4410.html

■翻訳メモ
いくつかのCEOの交代に直面している組織と会話を持ちました。今回はセルフマネジメント組織のパラドックスの核心を突いた、とても重要なトピックを扱います。

セルフマネジメント組織では、CEOは伝統的な組織よりも重要であるようであり、同時に重要でないようにも思えます。このパラドックスを理解するには、CEOを一つの箱として話すのをやめ、詳細な役割を見ていく必要があります。私たちは他の人に対しては職務レベルにばらして話すのですから、CEOについて同じようにすればよいということです。CEOの「役割」については【1.10 Your roles in this new world】で話しました。CEOという箱に収まる役割はいくつかあります。その一つは、組織の外部と内部の「顔」となることです。しかし、今回の主旨は、それについて話そうというものではありません。CEOの交代について話すとき、本当に重要になるのは、次の二つの役割です。

その「役割」の中にある、引き継がれるべきものの1つは、「源(ソース)」です。繰り返しになりますが、この「源(ソース)」という言葉を聞いてピンとこない人は【1.10】に戻ってください。もう一つの役割は、この新しいマネジメントパラダイムのための「場を保持する」役割です。これによって、旧来の階層的で機械的なパラダイムに戻らないようにします。ですから、実際に話しているのは、これらのさまざまなCEOの役割、特に「源」と「場の保持」の二つの役割の継承についてです。

これらの役割を明確に区別して見てみることが重要です。なぜなら、これら二つの役割またはそれ以上の役割を引き継ぐのが必ずしも一人の人物である必要はないからです。これらの役割は二人以上の人物に分けて担われることも可能です。

ではもう少し具体的に見ていきましょう。次は、新しく「役割」を担う人、つまり、どうやって後継者を見つけ出すかという問題です。しかし、それは、多くの場合、ある意味、自然発生的です。セルフマネジメント組織にも、いくつかの自然発生的な階層があることはお伝えしました。ゆえに、誰が「源」を引き継ぐか、誰が「場の保持」していくかは、非常にはっきりしていることもよくあります。

今のCEOがアドバイスプロセスを使って、次のCEOを決める、とてもシンプルな方法があります。例えば、「私の後継者として、私はこの人が適任だと思います」と言い、アドバイスプロセスを通じて意見を聞くやり方です。そうでないと思う人は別の誰かを推薦することもできます。とてもシンプルな方法です。もしこれがうまく行われれば、アドバイスプロセスを使用することで、全員が自然に納得します。自然発生的な階層があり、全員がその役割に最適な人を認識しているからです。

もし、これらの重要な役割を埋めるために、よりチームプロセスを取り入れたいのであれば、ソシオクラシーの選挙プロセスを検討することをお勧めします。候補者なしの選挙プロセスであり、グーグルで検索すればその方法を見つけることができるでしょう。このプロセスは非常に美しいもので、いくつかのラウンドを経て行われます。

最初に、メンバーがその役割に対する期待やコンピテンシーについて説明します。その後、全員が心と思いで最適だと思う名前を一つ書きます。そして、それについて話し合い、一人を選びます。場合によっては、異議申し立てのラウンドも行います。

これは候補者なしの選挙であり、誰かが票を集めようとするのではありません。全員が本当にその役割に必要なものについて深く考え、誰が最適かを真剣に議論します。こうして、集合的な知性を活用して最適な人が選び出されます。

ソシオクラシーの選挙プロセスがうまく機能するためには、最も有力な候補者をできるだけ多くのメンバーが知っていることです。したがって、大きな組織の場合、最も有力な候補者を知っているのは、その組織に長くシニア・メンバーであることが多くなってきます。ただ、これは少し厄介な問題です。もう1点は、できるだけ、すべての人を巻き込みたいと思って企画している選挙ですが、他の国で働いていて、候補者と一度も会ったことがないといった場合、そこに参加できないという事態が起こります。

そういう時は現実に即して、実際にその人を知らなくても、そのポジションに適任かどうか、人の意見を聞き、その資質を確かめていく以外に方法にはないでしょう。ただし、プロセスの最初の段階で、役割に最適な人物を選ぶのではなく、どのような資質が求められているのかを議論する際には、組織のあらゆる部分から声を集めることが非常に興味深く、有益でもあります。

私が絶対にお勧めしないのは、全社投票の選挙です。過去の話ではなく、今でもこのような社内で選挙運動を行わっている組織があります。それは、当然、組織の分断を引き起こします。このように候補者が勝ち負けすると、勝った人に愛情が湧かないこともあります。これは民主主義の選挙で好ましくない点をすべて引き出してしまうのです。ですから、これは本当に避けるべきだと思います。

「源」と「場の保持」の引継ぎを行う場合、一種の公開の「儀式」を行うことがとても重要だと考えています。そして、この「源(ソース)」という言葉を最初に使ったピーター・カーニックがその考え方について次のように語っています。「今ある源(ソース)が次の経営者に受け継がれることは絶対に重要です。ですから、古い役割を果たした人物に感謝し、新しく役割を受け継ぐ人物を歓迎する公開の儀式を行うことは、本当に重要だと思います」

最後に、外部からの招へいについて、私の考えを話しておきたいと思います。一部の組織では、「特定の役割を果たせそうな人は組織にいません。だから私たちは組織を深く理解してくれて、会社を成長させてくれそうな人を外部から招へいしたいのです」と言います。

米国フロリダ州にあるサン・ハイドロリクス社に良い例があります。同社は、創設者のロバート・コスキーが存命時に、3回か4回の経営トップの交代を経験しました。そしてそれらはすべて、うまくいきました。彼らの成功ポイントとして私が重要視しているのは、彼らは最初からCEOのポジションで人を雇わなかった点です。その代わり、彼らは、いずれCEOとして、しかるべき資質を身につける可能性がある人物を雇ったのです。彼らは後継者候補を雇い入れる際、「組織に貢献できると思う、あなたが持っている価値を高めてください」とだけ言いました。そして、自然な階層の中で、彼らの働きぶりを見たメンバーからは、「私たちは彼こそがそのポジションにふさわしいと思います。彼に来てもらって本当に良かったと思います」という声が上がってきます。彼らが後継者に選ばれる自然な道筋ができてきます。CEOの引継ぎについては、以上です。

最後に、特定の役割のことについて話させてください。今回は、「この役割にふさわしい候補者を探してください」というアプローチのことをお話ししました。そして、ほとんどの場合、これは思っている以上に簡単なプロセスだと思います。なぜなら、誰もがその役割を埋めるのに最も自然で、明確になっている候補者が、一人いることに気付くからです。


■お願い
動画の最後にもあるとおり、この取り組みはすべてギフトエコノミーによって成り立っています。
この取り組みを支援されたい方は、以下のリンクからLalouxへのご支援をお願い致します。
https://thejourney.reinventingorganizations.com/in-the-gift.html

■翻訳メモの全体の目次
https://note.mu/enflow/n/n51b86f9d3e39?magazine_key=m3eeb37d63ed1

最後まで読んでいただいて、どうもありがとうございました。