一瞬が永遠になるとき。



一瞬が永遠になる。そう感じることはないだろうか。

今日私にそれが訪れた。
ある陶芸家の展覧が、京都であった。
水指、花入、皿、香合、茶碗。
ひとつの茶碗の前で足が止まって、その場で時も止まってしまった。
その刹那、その茶碗を旅したと言ってもいいかもしれない。
茶碗の胴の釉景に、山を見、時雨降る音を聞き、一瞬の晴れ間の澄んだ空気を味わい、空からの梯子に触れた。

その茶碗は黄瀬戸だったが、胆礬が、還元して辰砂になっていながらも、緑が残るという不思議な現象を胴にとどめていた。
緑の山景色に薄い辰砂の雨が降り、霞たつような。

私は茶碗に没入し、その茶碗の中を旅し、外を遊山し、その茶碗で茶を飲み、湯を飲んだ。

おそらく相対的な時間は5分から10分だろう。

しかしその茶碗と私は永遠に対話したのである。

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