京浜急行はリゾート特急

 むかしの友人に10年ぶりくらいで連絡したら、「いまは葉山マリーナに居るんですよ」とのことだった。
 ランチでもしましょうと誘われていたので、天気も見て昨日・水曜日に行ってきた。
 品川から京急に乗り換えて、懐かしい赤い電車に乗り込んだ。快速特急なので小田急のロマンスカーのようだ。
 横浜を過ぎると狭い山の中を切り裂いて進む。そして上大岡でグンと視界が広がる。ここに京急が初めて作った百貨店立ち上げ要員としてイーズカも通っていた。これだけ広い平地があったので、上大岡がここまで発展したのが良く分かった。
 金沢文庫で逗子線に乗り換えて、京急逗子・葉山駅に着いた。目の前のバス停から乗ると4つ目あたりでマリーナの真ん前に着く。
 エントランスで彼が待ち受けていてくれた。彼もそれなりに運動好きなので体型がまったく変わっていなかった。
 10年ぶりなのに、互いに体型を保っている。寿司のまえにマリーナ内を案内してもらった。「イーズカさん、最高の天気の日に来ましたね」と言われた。マリーナの先端に行くと、相模湾越しに箱根も富士山もくっきり見えた。
 マリーナ内の寿司屋のネタは絶品でした。この2か月ほどの自粛期間は食材の管理が大変だったらしい。サカナは海を泳がせておけば良いが、野菜はそうは行かない。成長しすぎると2級品としても使えない。高級料亭もみんな自粛なので料理人たちは苦労していたようだ。イーズカは茶畑農家の出身なので板前さんとも話が弾んだ。
 その後、マリーナ全体が見渡せる喫茶室でエスプレッソを飲んだ。
 いろいろと雑談しながら、一緒に働いていた頃の話に及び、さらには今後の電鉄会社の在り方も語り合った。
 少子高齢化で乗客数が減るのは分かっていたが、コロナ騒動で一気に進んでしまった。リモートワークも加速するので、乗客数の減少が急激に進む。
 京急はすでに泉岳寺の本社を横浜に移している。
 どんな企業も都心の一等地に高い家賃を払って働く意味が失せた。ネット環境さえ整えておけば、地方やリゾート地の方が快適に働ける。
 イーズカも最近は一種のタレント業なので、葉山あたりに住むのも悪くない。ただ3月の春分の日の連休には、自粛にウンザリした人々が大挙して押し寄せて大渋滞になつたらしい。
 人間はセミでは無いので、地中で4年もサナギで過ごすことはできない。やはり解放感を求めて海の近くにやって来る。
 コロナ騒動は東京一極集中のアンバランスを一気に塗り替えそうである。
 彼の名刺を見たら、雇われの支配人ではなく、取締役社長であった。もう3年やっているらしい。
 「次回は中華料理をご馳走しますよ。これが美味いんですよ」と誘われたので、次はバイクで来るから、と約束して別れた。
 敷地内全面禁煙なので、隣のセブンイレブンで喫煙した。その駐車場にスポーツタイプのベンツがやってきて、褐色の肌の美女がタバコを吸いに来た。マリーナと海に映えて、映画のワンシーンのようであった。
 時代はますますオモシロクなりそうである。

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