デンツーに対する思い

 昨今の状況を見ていると、「デンツーも、こんな会社に落ちぶれたか?」との思いしかしない。
 イーズカなどしょせん部外者に過ぎないし、在籍中も契約社員であった。ただ、その時も「マスコミがエラそうなことを言っても、食わせてやっているのはオレ達だ」という自負心が強烈にあり、媒体社に対して優越感こそあれ、卑屈な姿勢など皆無だった。
 実際にみんなよく働いていたし、優秀な人材も溢れていた。「カネになることなら何でもやる」という姿勢にも、「それは素晴らしい」と納得していた。
 実際、「あくどい」ことも相当にやっていた。クライアントに説教することも平気であった。
 イーズカが駅ビルを担当した時も、デザイン案を先輩の営業に見せた時、「こんなモノを提案したのか?」と訊かれ、「クライアントもOKしましたから」と答えると、「バカヤロー、クライアントが許してもデンツーが許さない。こんなモノをデンツー提案で出せるか。すぐにゼロからやり直せ。」と怒鳴り飛ばされた。
 そんなことが日常茶飯事だった。
 逆にそんなデンツーなので、クライアント側にも「デンツーというだけで、ダメだ」という人間もいた。それで延々とネチネチとイジメられたこともある。
 その代わり、「セコイ」ことはしなかった。社員が6000人もいる会社だったから末端までは知らないが、社の姿勢として「セコイ」ことは嫌いだった。する必要も無かった。
 2001年ころ、汐留の新本社竣工のあとに株式上場した。それまであまりに現場トラブルが多いので、「こんなこと、やってはいけないマニュアル」を策定した。セールスプロモーション分野に限ったモノだったので、イーズカが書いた。
 それが遠因となって、現在の「危機管理の専門家」の姿がある。
 いまやIT企業が広告会社を買収しているが、もっとも欲しいのは、「現場でのトラブル事例と、その対処法」である。
 これは最も多くの仕事をこなして、トラブル経験豊かなデンツーにしかない。イーズカはその生データに接しているから強いのだ。
 株式上場した以上、従来の違法スレスレの手法は使えない。それまでのエース級の人材が座敷牢に入れられた。「仕事など、一切するな」と言われていた。
 会社全体が「やる気」を失っていった。圧倒的なパワーを持ちながら、自らを縛っていく。マーケにいた後輩が「ゾウの墓場ですよ」と言っていた。
 そして今回の幽霊会社を前面に立てた、丸投げ再受託など目も当てられない。ブザマである。
 間違いなく体制側に位置する会社であったが、権力者と適度な距離は保っていたのが、いまや竹中平蔵あたりと同列にある。「恥知らず」の系譜に連なっている。
 株式上場で得たカネなど何に使ったのか分からない。海外戦略など延々と失敗が続いている。「あのカネは、退職者への年金に使われているのではないか」とまで揶揄されている。
 オリンピックの迷走を見ても、むかしのデンツーだったら、JOCにあそこまでの醜態を晒させることは無かったと思う。もはや「仕切る」チカラなど無い。
 首相が変わろうが、都知事が変わろうが、仕切るのはオレ達だという圧倒的なパワーと自負心が無い。
 安倍晋三はすでに、現職のまま逮捕される危険性がある。しでかした犯罪を見れば当然の帰結である。そうなれば、デンツーも唾を吐き付けられて退場することになる。
 税金による国策遂行で私腹を肥やしたのだから、共犯者である。
 法律の規定からすれば、すべての公共事業への受注資格を失ってしまう。過労死事件でパージされたのとはレベルが違う。
 現在のデンツーの経営陣にビジョンがあるとは思えない。無為無策で醜態を晒している。
 イーズカは吉田秀雄の「電通・鬼十則」を評価していた。ブラック企業の代名詞とも言われているが、あれくらいの熱意と迫力が無かったら、あんな商売は続けられない。
 マーケの先輩に汐留で昼飯をご馳走になった時、彼が新本社ビルを見上げて「ウチは、こんなビルを建てるような会社では無かったのだ」と吐き捨てた言葉が忘れられない。


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