ArsTechnicaによるSlaw Device製RH Rotor ラダーペダルのレビュー(和訳)

アメリカのテック系サイト、ARS technicaに掲載された、リー・ハッチンソン氏*1(Lee Hutchinson)によるSlaw Device製ハイエンドラダーペダル・RH Viperのレビューです。
著作権の関係上、写真は転載しませんので、適宜オリジナルの記事を参照してください。

原語版: https://arstechnica.com/gaming/2022/04/slaw-device-is-back-rh-rotor-pedals-rule-the-skies-for-475/

*1)ハッチンソン氏はFolland Gnatでの飛行経験や、
TA-4、F-100のコックピット、F/A-18Fのフルフライトシミュレーターへの搭乗経験がある


Slawの帰還: RH Rotorが空を支配する

確かに高価だが、フライトシムの愛好家にとってはその価格1ペンス1ペンスが価値あるものだ。

(画像: 最新のアツい製品、RH Rotorは右側。比較として左は以前のRX Viper)



Slaw Deviceの”Slaw”こと、Wiaczeslaw Oziabloからの突然のメールにはいつもワクワクさせられる。「ヤバい」愛好家向けにハイエンドフライトコントロールぺダルを仕立てるエンジニアである彼は、コンピューター向け周辺機器というより、金属製のきらびやかな芸術品というべきデバイスを製造することで有名である。

彼からのメールに何か新しい製品について書かれていたなら、なおさらワクワクする。Oziablo曰く「長い休暇の後、RH Rotor ラダーペダルの生産準備を続け、完成させました。現時点で、写真やビデオ撮影のために使っただけのラダーペダルが数セットあります。」彼は私に、最終製品に近いプリプロダクションモデルをレビューのために送付してくれるとのことだった。

私は即座にその提案に乗り、数週間後、DHLが重い箱を玄関先に運んできてくれた。その中にはSlaw Deviceの最新作、RH Rotorペダルが入っていた。

画像1枚目:これがその箱!重い。
画像2枚目:蓋を開けるとアクセサリーキットがある。
画像3枚目:RH Roterペダルを組み立てて使用するのに必要なものがすべて入っている。
画像4枚目:アクセサリーキットを開封する。組み立てに必要なネジとボルトはラベルの付いた袋にきれいに個包装されている。いくつかの六角レンチ、10mmのレンチおよびUSBケーブルも同梱される。
画像5枚目:アクセサリーキットの下にはRH Rotorの本体が鎮座している。
画像6枚目:段ボールから取り出す。

RH Rotor

まず2つの事柄について話そう。まず1つ目に、このペダルは素晴らしいものだ。2つ目に、このペダルは475ドルする。
私が今、価格について言及したのが、多くの人々にとってこれが破格のオファーだからだ。RH RotorはThrustmaster TPR(2018年に発売され、現在は599ドル)よりも安く、この美しい手仕事よりも大量生産されたThrustmasterを選ぶのは頭がおかしいとしか思えないが、475ドルという大金を1 つの機器に払うという事実は覆せない。しかもジョイスティックではなく、航空機や宇宙船のヨーをコントロールするための3軸ペダルセットだ。

画像1枚目:組立済で飛行準備のできたRH Rotor。
画像2枚目:右側ペダル踏板のアーム。重量削減のための切り抜きがある。
画像3枚目:Slaw Deviceのロゴが堂々とペダルの前側に掲げられている。
画像4枚目:組立前のペダル本体。

このコストを受け入れることが出来るなら、おそらく10年以上は使用できる強固なデバイスを手に入れることが出来る。これまでのSlaw Device製ハードウェアと同様、RH Rotorは中央のローラーカムを中心とし、ストラットとスライドする金属板が連動したダンスで構成されており、カムは中央に明確な戻りがあるものと、そうでない滑らかな2つのプロファイルから選択できる。本体のほとんどはパウダーコーティングされたアルミニウムとスチールできており、全体で7.7kgと重量級に仕上がっている。ペダルアームとトゥブレーキストラットの取り付けなど、若干の組み立て作業が必要だが、5分もあれば終わる作業であるし、必要な工具はすべてアクセサリーキットに含まれている。

RH Rotorの幅が広く長いベース部分にはゴム製のすべり止めがついており、どんな床でも安定して使えるよう設計されている。また、取付穴も用意されているので、シムピット(または床に)取り付けることも可能だ。

画像:Oziabloは、ペダルのどの部品がアルミニウム製でどの部品がスチール製かが分かるよう、この画像を送ってくれた。

2つのペダルの物語

私にとって、Slaw Device製のハードウェアはこれが初めてではない。2015年初頭にSlaw Device製のBF-109ラダーペダルを注文し、Oziabloの作品に惚れ込むこととなった。このペダルは私のシムピットに素晴らしいアクセントを与えてくれたが、あぶみ型(訳注・ヒールインタイプ)のデザインに満足できなかったので、2016年半ばには新しいSlaw Device RX Viperラダーペダルにアップグレードした。あれから約6年、このRX Viperは完璧なインターフェースデバイスとして、購入時と変わらない精度を今も保っているし、メインのテンションスプリングを交換し、たまに数本のネジを増し締めさせたほかは、メンテナンスフリーなラダーペダルであった。

よって、RX Viperに完全に満足している私は、今回レビューしているRH Rotorをまだ購入していない。しかし、RX Viperは固定翼機(または宇宙船。RX Viperは宇宙船の操縦でも本当に良い!)のシミュレーション用に設計されたものである。

本物のパイロットならだれでもわかることだが(私は本物のパイロットには程遠いのだが、F/A-18での飛行もログブックに少しだけ記録されている)、ヘリコプターは固定翼機とは異なる操作系を持つ。操縦桿とスロットルの代わりに、コレクティブとサイクリック(スロットルも付属する)を用いる。また、ラダーを操作するためのラダーペダルの代わりに、テールローターのブレードピッチを変化させるアンチトルクべダルがある。ペダルでヨーを制御するという、機体への働きはほぼ同じだが、操作の仕組みや感触は大きく異なるのだ。

画像:机に鎮座するRH Rotor。ペダルアームのかっこいい切り抜きについてもう一度言及しておく。


RH Rotorは、なぜそうできているのか

固定翼機とヘリコプターのペダルの感触自体にも、いくつか違いがある。ヘリコプターのペダルは、通常、片側に力を加えるのをやめても、中央に戻るような反力がない。また、センターにディテント(ペダルが中立位置を通過するときに感じる段差のようなもの)もない。これはヘリコプターの飛行においては、ヨーを含むすべての回転軸を常に微調整する必要があり、思い通りの飛行をするためには操作系統を中心ではない位置で保持する必要があるからだ。
もう一つ大きな違いと感じられる点がある。固定翼機のペダルは、一般的に平面で、上下に動かず前後にスライドする動作をする(Z軸を中心に回転し、+X/-Xに沿った水平面上を前後に動く)。一方、ヘリコプターのペダルは、下部はヒンジになっており、前後に回転しながら動作するタイプが多い(Y軸を中心に回転し、+X/-Xと+Z/-Zの両方に弧を描くように動作する)。これがRX ViperなどのこれまでのSlaw DeviceのペダルとRH Rotorが大きく異なる点である。

画像:RH Rotorと以前のRX Viperの比較。Rotorの幅はViperに比べてかなり狭い。高さはペダルサポートアームの取付によってはViperより高くなる可能性がある。

もしあなたが完全なヘリコプターシムプレイヤーであり、RH Rotorを実機と鏡写しのヘリコプタースタイルの操縦系統としたい場合、もちろん完璧に対応可能だ。ダストカバーを外し、センタリングスプリングを取り除き、油圧ダンパー(別売)を調整して、実際の左右のペダルの重量と適切にバランスするようにすれば、つま先に軽く力を入れるだけでどの位置でも適切にコントロールでき、その位置で正確にピタッととまるペダルが完成する。

画像:RH Rotorには、小型の油圧ダンパーを取り付けることが出来る。RHの銘版の下側が片方の取付位置だ。

しかしながら、設計者のOziabloは、RH Rotorはヘリコプターのペダルのような感触と操縦性を実現できるものの、ヘリコプターからジェット機、宇宙船まで、あらゆる場面で快適に動作するよう設計されていると説明している。Oziabloは、「本物のペダルをコピーするようなものを製作することはしませんでした。よってRH Rotorを本物のペダルを比較することは意味がありません。」と言及している。

RH Rotorのデザインプロセスについて、Oziabloは以下のように言及している。「一番最初は、マクダネル・ダグラスのAH-64アパッチのラダーペダルのようなヘリコプター用ラダーペダルを製作したかったので、RH、すなわちRudder Helicoptorの2文字を名付けたのですが、実際のところその名前しか残りませんでした。最終的にそのような制約を放棄し、より普遍的で便利な装置としてこのペダルが誕生したのです。」

画像:油圧ダンパーを取り付けたRH Rotor。メインスプリングを外して「本物」のヘリコプターペダルにチャレンジするなら、ダンパーは必須のアイテム。

さらに深くへ

先述した通り、このペダルは2つのプロファイルから選択できるセンターカムを中心に構成されており、工場出荷状態(工場とは言ったものの、実際はOziablo家内の加工場であり、彼と彼の家族の手伝いによってペダルが組み立てられている)では、カムはハードディテント側でセットされている。ソフトディテント側に切り替えるには、少々分解が必要になる。

画像1枚目:ダストカバーを取り外すと、RH Rotorの内部を確認でき、スプリングテンションとカムを調整することが出来る。写真では、カムはハードディテントに設定されている(カム中央の涙型に注目。尖った端部がハードディテント側であることを示している。)
画像2枚目:カムとローラーベアリングアセンブリ。背の高い2つの締結ナットは、ペダルの動きをカムプレートに伝達するためのペダルストラットを取り付ける部分。
画像3枚目:カムを取り外したカムプレート。
画像4枚目:スムースにプロファイルにカムを反転させた。上部のテンションスプリングとローラーベアリングアームに注目。

これまでの多くのOziabloによる設計と同様、カムは、アームと接続しているローラーベアリングとスプリングテンションにより接触している。べダルを前後に動かすとカムプレートが回転し、カムがローラーのスプリング張力に抗って動く。アームには2つのスプリング取り付け位置があり、ペダルの抵抗値をより重くすることが出来る。また、自分でスプリングを調達すれば、好みのテンションに調整することも可能だ。

さらに、ペダルはそれぞれ前方に回転するトゥブレーキ軸を独立して備えている。トゥブレーキ機構は、メインペダルサポートアームと平行に設置された2本のストラットによって作動する。ストラットは2組目のスプリング(これもトゥブレーキの作動に必要な力を調整したい場合、ユーザーによって交換可能だ)に接続され、メイン軸とは独立して作動させることが可能だ。

ペダルのサポートアームには、軽量化のためヘリコプターカットが施されており、着座位置や快適性に応じて3つの位置で取り付けることが出来る。今回は真ん中の位置で試してみたが、使い続けるなら一番高い位置で使用したいと思う。座面をリクライニングすればするほど、ペダルの位置は高くする必要がある。

画像1枚目:ペダルを側面から見る。トゥブレーキ機構は、メインサポートアームと平行に配置された2つ目の小さなアームを介して、下部のスプリング機構に伝達される。(ペダル全体での動作では、下部のカムプレートに直接ねじ込まれた銀色のストラットが動きを伝達する)
画像2枚目:トゥブレーキスプリング。
画像3枚目:ペダル取り付け位置。ペダルアームの切り抜きに注目。

ジッターを永久追放

Slaw Deviceの特徴は、比類のない工業デザインだけではなく、その動作と機構の滑らかさである。これまでのSlaw Deviceのペダルと同様、足を前後に動かすと、まるで凍った氷の上をアイススケートで滑っているような感覚で、終端のバンプストッパーには足先で心地よく感じることができるしっかりとしつつも柔らかい衝撃感がある。全体の印象として、重量感のあるソリッド感と、摩擦のないスムーズな動きが同居していると感じる。ホコリや砂塵が嚙みこんでいるような感覚とは無縁だ。

画像:RH Rotor内部に2つあるセンサーアッセンブリーのうちの1つ。このセンサーは、左ペダルの位置とトゥブレーキの回転を検知する。Infineon製TLE5012Bである。

機械的な完成度を電子的な面ともマッチさせ、デバイスからのデジタル信号が物理的メカニズムと同様に正確であることを確実にするために多くの注意が払われている。Oziabloはこのカスタムメイドの軸センサーについて、以前の製品で使用されているセンサーも依然として優れたものであるものの、さらに改良されたものを使用していると述べている。

「エレクトロニクスの部分は、これまで通りデジタルで非接触式です。しかし、我々の以前のペダルとは大きな違いが1つあります。それはつまり、電源を入れるたびにセンサーがセンターに再調整されるのではなく、元のセンター位置を記録しているという点です。これはばねが緩んだり、ダンパ―がついたりするペダルの使用を想定しています。この場合ペダルが勝手に元の位置に戻ることはありません。(ヘリコプターのパイロット達にとって便利です。)」

この変更に対応するため、RH Rotorにはユーザーが手動で中心点を設定するために実行できるキャリブレーション用アプリケーションが同梱される予定だ。このアプリケーションでは、軸のカーブ制御や、将来的なファームウェアアップデートも可能とする予定となっている。

画像:工業デザインの好事例。機能的で美しい。

数時間のフライトテストでは、デッドゾーンを設定しなくとも、全くと言っていいほどジッターを感じることはなかった。RH Rotorはミリメートル以下の動きも正確に捉え、DCS:WorldでAH-64アパッチのコース維持の方法を理解する際には大きな違いを感じました。(ネタバレ:ヘリコプターの操縦は難しく、何度も墜落しましたが、その際もジッターフリーで墜落できました!)


宇宙船や飛行機での飛行

数時間にわたる飛行テストについて、私がどのようにペダルをセットアップし、どのように機能させたのか、またあなたがペダルを使って何か違うことをする場合にどのようなセットアップをする必要があるかについて話そう。

私は、RH RotorをObutto R3volutionシムピットで使用しているが、このコックピットは頑丈で使いやすい上、バカ高いものではない(ただし、このコックピットは付属品を含めて約1000ドルするので、「バカ高い」というのは見る人の目の財布によります)。R3vには、あらゆるドライビング・フライトシム用アクセサリーのためのペダル取り付け用プレートがあり、様々な取付穴があるので、どんな製品も取り付けることが出来る。RH Rotorは、超ワイドなRX Viperで私が陥った取付に関する問題(訳注・RX Viperの幅が広すぎてフレームの一部をカットする必要があった)はなく、マウントプレートのどこにでもフィットする幅になっている。しかし、私にレビューのために送られたプリプロダクションモデルのRH Rotorは、R3vにあらかじめ開けられた取付用の穴のどれにも一致しなかった。Oziabloによると、製品版では少なくとも1組の180mmピッチの取付穴があり、R3vのペダルプレートとうまくマッチングするとのことだった。(私は結局、Rotor底面のゴム製すべり止めパッドと、その重量のおかげで、ジップタイだけでプレートに固定することが出来た。)

画像: RH Rotorの底面にはペダルが滑らないようにするためのゴムパッドがいくつも張られており、それらは上手く機能する。

RH RotorをElite: DangerousとDCS: Worldで、いくつかの異なる航空機にてテストした。私は最近Elite: Dangerousでのフライドが大半だが、RH Rotorは数時間のスペーストラッキングに最適だった。

私にとって、究極の周辺機器とは、使っているうちにその存在が消えてなくなるもの、すなわち、使っていることを忘れてしまうほどうまく機能するものだと考えているが、RH Rotorはまさにそのような機器である。(いつも使っているRX Viperはスプリングテンションをかなり上げているので)最初は常に過剰に踏むことを補正していたが、数分の後、次第に新しいペダルを使っていることを完全に忘れてしまった。ドッグファイト中の左右終端までのハードな踏み返しや、ドッキング中のほんのわずかなつま先における調整まで、あらゆる状況においてただただ機能する。

画像1枚目:右足ペダルとトゥブレーキアセンブリの前面。踏み込むと踏面全体が前方に回転する。
画像2枚目:踏面アッセンブリーの背面。アルミのパーツに"ROTOR"の文字が刻まれている。
画像3枚目:ローレット加工されたフットレストバー。RX Viperとほぼ同じで、素足で数時間飛行していると若干不快に感じることがあるため、靴下をはくことをお勧めする。

DCSで愛機のF-14Bを飛ばしたときも、話は似たようなものだ。フライ・バイ・ワイヤで旋回する最近の戦闘機とは違い、F-14ではバンク時に逆ヨーの影響を避けるため、かなりの量のラダー操作が必要になることが多い。そのため、F-14はラダーペダルのテストに最適な機体である。

小さな補正がターン時に大きなヨー効果を生むので、実は柔らかいRH Rotorのほうが適しているかもしれない。Elite: Dangerousのように、ACM中にペダルを前後させるのも簡単である。(トムキャットでは避けて通れないフラットスピンからの復帰はかなり難しいが、それはコントロールデバイスのせいではなくグラマンのせいである。)

画像:ペダルアームの取付位置。セットアップは、かなり前方から直立した状態まで3通りから選べる。座席をリクライニングさせればさせるほど、ペダルの取付位置は直立に近づく。


カムの交換

ヘリコプターの飛行に際しては、完全な回転翼機向けの状態でペダルを試したかったので、少々のセットアップが必要になった。まずはRH Rotorのカムプロファイルを、センター感の強いものから、弱いものへ変更する。これはペダルのダストカバーを外し、カムをマウントプレートに固定している2本のネジを外して、カムを180°反転させて取り付ければよい。あとはねじをすべて戻して完了だ。

また、私がしたように、ペダルのスプリングを完全に外して、ヘリコプターのペダルと同じような感覚でセンタリング力を全く残さないという手法もある。この場合、ペダルに油圧ダンパーを取り付ける必要がある。ペダルアームやフットレスト自体が非常に重く、カウンターウェイトがないため前にも後ろにもバタバタする傾向があるためだ。

画像:カムとローラーベアリング。涙型の尖った部分がハードディテントを示しており、現在使用しているプロファイルがわかるようになっている。

スプリングを外してしまえば、カムプロファイルを気にする必要はない。スプリングがなければローラーベアリングはカムに引っ張られることがないので、センター感はゼロになる。(ただし、先述のとおりスプリングがないとペダルがバタバタしてしまうため、油圧ダンパーは必ず用意すること)


ヘリコプターでの飛行

私はそれなりに有能なアマチュア・デジタル航空機パイロットである。DCSの固定翼機のほとんどに乗り込み、武装させ、滑走路や空母から飛び立たせることもできる。航法についても知っているし、TACANも使える。ウェイポイントもたどれるし、武装も(時には正確に)使用できるし、(たいてい)着陸もできる。

ヘリコプターではそのようなことが一切できない。ヘリコプターは、全く別の種類の航空機なのだ。コレクティブとサイクリックがスティックやスロットルと同じように機能するわけではないことを理解するのは簡単なことで、YouTubeでビデオを見るとよい。コレクティブを緩めると、地面効果でヘリがスムーズに上昇していく一方、尾翼が激しく揺れ、隣のビルに横から突っ込んでしまう。

画像:スプリングの張力によってローラーベアリングがカムに押し付けられる。スプリングをひっかける箇所は2か所あり、より強い張力か弱い張力かを選択できる。ヘリコプターの飛行に際してリアリズムを求めるなら、スプリングを取り外すことも出来る。

何回か(認めよう、何回ではなく何度もだ)の失敗のあと、私はDCSのAH-64アパッチを地面効果内で安定してホバリングさせることが出来るようになった。そしてこれが私にとっての、センターディテントがないペダルの有用さに気づいた瞬間でもある。尾部が自分の後ろからどこかにスイングしていってしまわないよう、ほんの少しの入力を脚で与えてやり続けなければならない。もちろん少しの入力とは、量と方向の2つそれぞれについてである。それをほかの入力をしている間も続けなければならない。小さな調整を軽い力で行うことができ、自分がいる位置に機体を維持することを可能にするペダルが必要不可欠だ。

しかし、私は滑走路に降りることは一度も成功しなかった。地面効果状態からの移行は一連の見事な衝突を引き起こした。結局のところ、私は最高のパイロットではないのかもしれない。

設計・需要・製造についてSlawと話す

Oziabloは我々に、RH Rotorにおけるデザインの過程は、以前のペダルで行ったプロセスと似ていると語った。つまり、最初に興味深い構造を想像し、次にKompas-3Dを使用してそのメカニズム周りのデザインを形にするという具合だ。「私はすべてを頭の中で設計していると思います。よくアイディアを忘れないように紙に絵を描きます。特にコンピューターが使用できないときです。CADプログラムは組立を行い、矛盾を特定するのに役立ちます。そのような矛盾があった場合は頭の中で再度設計するのです。」

画像: RH Rotorの寸法

「私はよくそれをクロスワードパズルを解くことと比較します。興味深い問題があり、それを解決するのです。しかし、私にとって全く興味がない問題もあります。よって、私のデバイスはそれぞれに何か新しいモノがあります。例えば、ある種の機構のアクションと比較して、ほかのメーカーの製品や既存のデバイスのコピーを作成することには興味がありません。しかし、すべてのエンジニアがそうするべきですが、車輪を最発明する必要がないのと同じように、入手可能なすべての情報について調査します。」

Slaw Deviceも多かれ少なかれワンマンショーであり、Oziabloは彼の家ですべての製造を行っている。「自分で製品を設計している」との彼に、設計補助を含め自分の事業を拡大することについて考えてはいないか尋ねたところ、Oziabloは「デバイス設計のスキルとロジックをほかの人に教える方法がわかりません。それは手書き文字のようなもので、各人がそれぞれ独自の手癖を持っています。私の製品は私の手書き文字のようなものなのです。」と答えた。

画像:Oziabloにとって、Slaw Deviceは家族事業であり続ける。

「手作業による仕上げと組立が私の家族の仕事です。」と彼は言った。

パンデミックの前後でOziabloに一貫していることは、彼の作業量である。
「残念ながら、まだ生産量は少なく、需要は供給を上回っています」
と彼は述べた。
パンデミックが彼の製品の需要を増加させていたとしても、彼にできることはない。

一方、彼のサプライチェーンは、他のすべてと同じように影響を受けている。
「いくつかの会社の部品を使用していますが、過去一年間で金属部品の生産価格は少なくとも25%~35%上昇しました。また過去2カ月での価格の上昇が激しく、残念ながら、これはペダルの価格に影響を及ぼします。値下げが止まらなければ、おそらく次のバッチから値上げせざるを得ないでしょう。」

画像:テストのために送付されたRH Rotorのプリプロダクションモデルは番号0002番で、これは私のRX Viperと同じシリアルだった。

それだけの価値があるのか?

過去に私が行った最高級レベルのラダーペダルに関するレビューと同様に、これらペダルの価値は「見ればわかる」というようなものである。ツイスト軸のある派手なLogitech Extreme3D Proジョイスティックをお使いで、「ヨーを?足で?そんな無骨な」と思う場合、これはあなたにとっての周辺機器ではないかもしれない。

また、PS5の希望小売価格に相当するものを1つしか機能ないのフライトシム用制御機器に費やすのは非常に難しい判断だ。その投資が理にかなったものになるためには、RH Rotor(またはその競合)でのシミュレーション体験に夢中である必要がある。これらのデバイスは、あらゆる種類のフライトシムや宇宙戦闘シムに必須ではない。実際、セットアップが非常に複雑になる可能性もある。(なぜ私が、Star Wars: Squadronで自分の望む軸の設定をしようと20分間の試行の後にあきらめたか、気になる方は訪ねてください)

画像:んんん~...何て煌びやかなペダル!

しかし、芸術は正当化を必要とせず、楽しささえ必要としません。これらのペダルは美しく機能的であり、しかも最高に楽しいのです。もしあなたが、不快さを外装で覆ったSaitekのプラスチック製のおもちゃから、最高に設計された氷のようになめらかなで完璧なペダルへアップグレードすることを検討している場合、財布を破壊してください。購入するのは一時の痛みですが、飛行体験は永遠です。

良い点:
・美しい、芸術作品レベルの造り
・耐久性、10年またはそれ以上は持つ
・地獄のように重く、すべり止めゴムがついている
・完全に滑らかに動作し、引っ掛かりがない動きが一生続く
・デッドゾーンを設定しなくてもジッターの発生はゼロ
・ヘリコプターまたは通常の固定翼機向けにカスタム可能

悪い点:
・カムとスプリングの切り替えにはある程度の分解が必要
・軸のカーブを設定するためにはソフトウェアが必要
・油圧ダンパーとの併用が最高だが、ダンパーは別売り
・あまりにも重いため、配置変更が苦痛
・小規模の製造なので、購入までの待機列は数カ月になることもある

欠点:
価格を回避する術はない。価格は常に高価です。

結論:
もしあなたがレビュー全体を読んで、「本当によいペダルなら、出荷前に支払う500ドルは私の計画においてはそれほど高すぎることはない」と考えてしまったなら、レビューはこれで締めくくれます:
宇宙船、飛行機、ヘリコプターで機能するオールラウンドなペダルをお探しの場合、もう探す必要はない。買って。



Wiaczeslawから午前中に記事の内容について簡単なアップデートが来たのでコメントにて投稿します。

1) カムを交換した後はペダルをキャリブレーションする必要があります。彼によると「これはカム穴とカムネジの間にギャップがあるためです。カムは数百分の一ミリ単位ですが取り付け位置にばらつきが出ます。キャリブレーションの値の差は大きくありませんが、ラダー軸のキャリブレーションをやり直すほうが良いでしょう。」これはキャリブレーションアプリで実行できます。

2) カムを交換するためにメインスプリングを取り外す必要はありません。スプリングアームには便利なサイズの穴があり、ドライバーまたは六角レンチを差し込んで、アームをカムから離した状態で保持することが出来ます。

Slaw DeviceのYouTubeチャンネルで手順を示すビデオを公開する予定だが、ペダル自体がまだリリース前であるため、カムの交換に関するビデオはまだ閲覧できません。

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