ビタミンCの定量実験(高校化学基礎)
はじめに
CCレモンなどの清涼飲料水には,ビタミンCが含まれています。またサプリメントなどにも含まれていて,「酸化防止作用(抗酸化作用)」がうたわれています。
ビタミンCはアスコルビン酸ともよばれ,還元剤としてはたらきます。ペットボトルのお茶などにも「酸化防止剤(VC)」という名称で含まれていますが,これはお茶の中のカテキンが空気中の酸素で酸化されるのを防ぐために加えられており,カテキンの代わりにアスコルビン酸が酸化されるようになっています。
アスコルビン酸(還元剤)はヨウ素(酸化剤)により酸化されるため,この原理を用いて各種清涼飲料水中に含まれるビタミンCの濃度を測定しました。調べた清涼飲料水は以下の6種類で,実験班に1つの被測定試料を渡して定量実験をしました。( )内の数字は,食品栄養表示にあるビタミンCの質量(100mL中)を表しています。時間の都合上,下準備①〜③は教員側で行いましたが,時間に余裕があるなら生徒でも取り組める内容です。
CCレモン(160 mg)
ダブルレモン(200〜395 mg)→濃すぎるかも知れないので,事前に10倍希釈
キレートレモン(894 mg)→濃すぎるので,事前に10倍希釈
C1000ビタミン(714 mg)→濃すぎるので,事前に10倍希釈
アクエリアスマルチビタミン(200 mg)
オロナミンC(183 mg)
下準備① ヨウ素ーヨウ化カリウム水溶液の調製
ヨウ素1.27 gとヨウ化カリウム2.00 gをはかりとり,純水を少量加えて溶解する。メスフラスコに移し,全量を500 mLとする。
下準備② チオ硫酸ナトリウム標準液の調製
チオ硫酸ナトリウム0.124 gをはかりとり,純水を少量加えて溶解する。メスフラスコに移し,全量を100 mLとする。
下準備③ ヨウ素—ヨウ化カリウム水溶液の定量
②のチオ硫酸ナトリウム水溶液10 mLをホールピペットではかりとり,コニカルビーカーに移す。指示薬として1%デンプン水溶液5 mLを加える。ビュレットに入れた①のヨウ素—ヨウ化カリウム水溶液を滴下し,ヨウ素—ヨウ化カリウム水溶液の濃度を決定する。
生徒実験
ちょうど実験班が6班できる人数だったので,1班に1つの被測定試料を渡して実験を行いました。
被測定試料10 mLをホールピペットではかりとり,コニカルビーカーに移す。指示薬としてデンプン水溶液5mLを加える。ビュレットに入れたヨウ素—ヨウ化カリウム水溶液を滴下する。同じ操作を3回繰り返して,ビタミンCのモル濃度を決定する。その後,100 mL中の質量に換算する。
実験結果
生徒の定量結果および教員の予備実験結果は以下のとおりでした。値の見方は,(生徒測定値/教員測定値/栄養表示の値)となっています。傾向としては,栄養表示の値の順と生徒・教員の測定値の順は一致しました。
CCレモン(237mg/232mg/160 mg)
ダブルレモン(391mg/434mg/200〜395 mg)
キレートレモン(2543mg/1524mg/894 mg)
C1000ビタミン(926mg/964mg/714 mg)
アクエリアスマルチビタミン(320mg/301mg/200 mg)
オロナミンC(255mg/未測定/183 mg)
まとめ
生徒測定値,教員測定値ともに栄養表示の値よりも大きい値となりました。これはつぎの2つが可能性として考えられます。
①ビタミンC以外に還元剤となる物質が含まれている。
②そもそもメーカーが栄養表示の値よりも多くビタミンCを入れている。
キレートレモンについては,栄養表示の値の2倍(生徒の測定値は3倍)の測定値が出ており,これについては①の可能性の方が高いのではないかと推測しています。
感想
身近な清涼飲料水を使った定量実験であり,ラベルに書いてあるものと近い値が出ると,当たり前とは言えうれしいものです。それから,ホールピペットで炭酸飲料を吸い上げるのは意外と大変でした。事前に炭酸を抜いておくか,アクエリアスマルチビタミンのような炭酸が入っていない清涼飲料水を使うことをお薦めします。
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