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知るほどに恐怖する認定賞与のリスクとダメージ

はじめに

 (あの領収書、経費計上しちゃおうかな・・)といった誘惑に駆られた経験のある方は多いのではないでしょうか?
 この記事ではいわゆる「否認」(損金計上が認められないこと)されるケースにはどんなものがあるのか、また実際に否認された場合にはどんなペナルティが課されるのかについて確認しましょう。

「これって大丈夫?」役員賞与として認定されやすい経費

 税務調査で役員賞与として認定されやすい経費には以下のようなものがあります。心当たりはありませんか?

  1. プライベートっぽい支出

    • 役員個人の会食や旅行の費用

    • 役員の家族旅行の費用

    • 役員の趣味に関する支出

  2. 定期同額給与から外れてしまった報酬

    • 毎月の役員報酬を期中で増額した場合

    • 賞与として支給したが実質的に毎月の報酬の後払いと判断される場合

    • 業績連動給与の要件を満たさない変動報酬

  3. 事業とあまり関係ない支出

    • 取引先と関係のない人との飲食費

    • 業務上必要性が低いゴルフのプレー代

    • 役員の自宅に置かれたテレビやパソコンなどの購入費

  4. 売上の計上漏れから生じる役員への利益移転

    • 現金売上を計上せず、その資金が役員個人の懐に入っているケース

 これらの経費や報酬は、税務署の目から見ると「会社のお金を役員個人が不適切に使っている」と判断されやすいのです。特に、定期同額給与の規定から外れた報酬は、容易に役員賞与と認定されてしまう可能性が高いので注意が必要です。

 なお、2.の定期同額給与で触れた「賞与として支給したが、実質的に毎月の報酬の後払いと判断される場合」ですが、定期的に「賞与」を支給しているが、その金額が固定的で業績に関わらずほぼ同額の場合を指します。
 これは、実質的に毎月の給与の一部を後払いしているように見え、会社の業績に関わらず確実に支給される場合、税務当局は「定期同額給与の一部」とみなすことになります。そのため、毎月定額の部分を超える金額について役員賞与として認定されるリスクが高まります。

「似て非なるもの」役員報酬と役員賞与の違い

 次に、よく混同される「役員報酬」と「役員賞与」の違いについて説明します。一見似ているように見えますが、実は大きなな違いがあります。

役員報酬

  • 定義:企業の役員に定期的に支払われる給与のこと

  • 支払い条件:通常、毎月同じ金額で支給。事業年度開始から3ヶ月以内に金額を決める必要があります

  • 税務上の扱い:原則として経費(損金)として認められます。ただし、過度に高額な場合は認められないこともあります

役員賞与

  • 定義:企業の業績や役員の頑張りに応じて支払う追加の報酬

  • 支払い条件:事前確定届出給与として税務署に届け出る必要があります

  • 税務上の扱い:原則として経費(損金)として認められません。ただし、適切な手続きを踏めば認められることも

 つまり、役員報酬は「定期的にもらえるお給料」、役員賞与は「臨時的にもらえるボーナス」というイメージで、どちらも受け取る側にとっては給与所得ではありますが、会社側の法人税上の扱いが大きく違いますので注意が必要です。

「賞与認定されたら…」発生する税金あれこれ

 さて、ここからが本題です。仮に経費が否認され役員賞与として認定されてしまったら、どんな税金が発生するのでしょうか?
 例えば、飲食費が会社の事業に必要な経費として認められず、社長の個人的な経費として賞与認定されてしまった場合を考えてみましょう。

  1. 法人税等の追加納付

    • 経費として計上していたものが認められず、その分利益が増えることになりますので、相当する金額の法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税などを追加で納付することになります。

    • また、過少申告加算税、延滞税についてもそれぞれの税目に付随して発生します。

  2. 源泉所得税の追加納付

    • 支出があったタイミングで役員に支払った報酬として扱われることになります。当然所得税の源泉徴収はしていないはずですので、相応の源泉所得税を納付する必要が出てきます。同時に不納付加算税、延滞税も付随して発生します。

  3. 重加算税のリスク

    • 意図的で悪質な家事費の混入とみなされると、納める税金の35%もの重加算税が課される可能性があります。税務調査のサイクルも早まると言われています。

  4. 個人住民税の追加納付

    • 社長個人の収入が増えたことになりますので、住民税の追加納付も必要となります。不納付加算金、延滞金も発生するかもしれません。

  5. 消費税の負担増

    • 給与扱いとなるということは同時に仕入税額控除も認められなくなりますので、その分の消費税の納付が必要となります。同時に過少申告加算税、延滞税も付随して発生します。


 「えっ、こんなにたくさんの税金が…?」と驚いた方も多いのではないでしょうか。実は、一つの経費が役員賞与として認定されるとこのように複数の税金が絡んできます。指摘が領収書1枚2枚済めばいいですが、(ほかにもあるのでは?)とより一層追及の手が厳しくなるのは間違いありません。総額で数百万円の経費が否認された・・というゾッとする話もよく耳にします。その後の事業展開に多大な影響を及ぼすことは言うまでもありません。

 また、よく勘違いされるのですが、「とりあえず経費で載せておいて、ダメだったら計上を取り下げればいい」といった理屈は通りません。計上した仕訳を「なかったことにする」ことはできませんし、「ダメ元で載せる」こと自体が悪質と見なされます。

 後ろ暗い領収書は経費に載せるべきではありませんが、逆に自信を持って経費だと思うのであれば、準備万端で徹底的に主張を貫き通せばよいと思います。

まとめ

・プライベートな支出や事業と関係ない支出は、役員賞与として認定されるリスクがあります。
・定期同額給与の規定から外れた報酬も、役員賞与と認定されるリスクが高いです。
・役員報酬と役員賞与は似て非なるもの。特に税務上の扱いが大きく異なります。
・役員賞与として認定されると、複合的に各種の納税が発生し想像以上の負担になる可能性があります。

おわりに

 いかがでしたでしょうか。「みんなやってる」が本当であれば、「みんなやられる」もまた事実ではないかと思います。堅実なお金の使い方こそ会社を守る最強の盾となります。「税金を払って利益を残す」以外に会社が大きくなることはないことを肝に銘じましょう。

 今回も最後までお読みいただきありがとうございました!

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