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相続税申告:10ヶ月で乗り越える11のステップ

はじめに

 身近な方を喪った悲しみの中で、相続税申告という大きな山が待ち受けています。この記事では、相続税申告の流れを11のステップに分けて解説します。長いようで短い10ヶ月という時間制限。クリアすべき要点をお伝えします。




1.法定相続人の確定:相続手続きの出発点

 相続税申告の第一歩は、法定相続人を確定することです。被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本を取得し、誰が相続人であるかを正確に把握します。複数の相続人がいる場合、早めに連絡を取り合うことが重要です。
 相続手続きの多くは全員の同意が必要となるため、スムーズな進行のためには協力が欠かせません。

2.財産と負債の調査:全容を把握する

 次に、被相続人の財産と負債を徹底的に調査します。プラスの財産(預貯金、不動産、有価証券など)だけでなく、マイナスの財産(借金、未払金など)もリストアップします。また、死亡保険金、死亡退職金などは本来の相続財産ではありませんが、相続税法上、「みなし相続財産」として課税の対象となる場合があります。金融機関や市役所、証券会社、保険会社などに照会を行い、正確な情報を収集する必要があります。
 この段階で財産の全容を把握することが、後の手続きをスムーズに進める鍵となります。

3.相続の選択:相続するの?しないの?

 相続人には、相続開始から3ヶ月以内に相続の選択をする権利があります。選択肢は単純承認、相続放棄、限定承認の3つです。特に高額な借金がある場合は、早急にかつ慎重に検討する必要があります。
 選択によっては家庭裁判所への申述が必要となるので、期限に注意しましょう。

4.準確定申告:亡くなっても確定申告は必要!?

 被相続人が死亡した年の1月1日から死亡日までの所得について、準確定申告を行う必要があります。これは、相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に行わなければなりません。故人の最後の納税義務を果たす大切なステップです。

5.遺言書の確認:故人の意思を尊重する

 遺言書がある場合、その内容に従って財産を分配します。遺言書には絶対的な効力があります。自筆証書遺言の場合は家庭裁判所での検認手続きが必要です。勝手に開封してはいけません。公正証書遺言の場合はそのまま内容を確認できます。
 遺言書がない場合は、法定相続分に基づいて遺産分割協議を行うことになります。

6.相続財産の確定:資産の全容を明らかに

 被相続人が所有していたすべての財産をリストアップし、財産目録を作成します。現金、預貯金、不動産、有価証券など、あらゆる資産を含めます。この段階で作成する財産目録は、後の相続税計算の基礎となる非常に重要な資料です。

7.相続財産の評価:何がいくらになるのか?

 相続財産の評価は、国税庁が発表している「財産評価基本通達」に基づいて行います。土地や建物は固定資産税評価額や路線価を基に評価しますが、専門的な知識が必要なため、税理士などの専門家に依頼することをおススメします。
 また、死亡保険金や死亡退職金には「500万円×法定相続人の数」という非課税枠があるので、忘れずに適用します。

8.遺産分割協議:仲良く分け合う

 遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成します。この協議書には全員の実印と印鑑証明が必要です。合意形成が難しい場合は、調停や審判を利用することもあります。この段階で、誰がどの財産を相続するかが決まります。

9.相続税申告書の作成と提出:期限の厳守が大切

 相続税申告書を作成し、被相続人の住所地を管轄する税務署に提出します。申告期限は被相続人が亡くなった日の翌日から10ヶ月以内です。申告書には第1表から第15表まであり、該当する様式書類をすべて作成する必要があります。また、適用を受けるためには期限内申告が要件となる特例があるため、申告期限は非常に重要です。
 なお、申告期限までに遺産分割協議が成立していない場合には、法定相続分で分割されたものとして、期限内での仮申告を行う必要があります。

10.相続税の納付:納税義務者は相続人

 申告と同時に相続税も納付します。納付方法には現金納付、延納(分割払い)、物納(不動産などで納付)があります。延納や物納を希望する場合は事前に税務署に申請する必要があります。納付期限も申告期限と同じく10ヶ月以内であり、延滞すると延滞税が発生するので注意が必要です。

11.遺産の名義変更:財産の受け取り

 最後に、遺産分割協議書に基づいて不動産や預貯金などの名義変更手続きを行います。これには法務局や金融機関への届け出が必要で、戸籍謄本、印鑑証明、不動産登記簿謄本など、多くの書類が必要となります。
 この手続きをもって、相続の一連の流れが完了します。

まとめ:重要なポイント

  • 申告期限は被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内。

  • 納付も同じく10ヶ月以内。

  • 期限に遅れると、ペナルティーや特例適用外れの可能性が。

  • 未分割でも期限内申告、納付が必要。

おわりに

 相続税申告、財産の分配完了までにはたくさんのステップがあります。税理士や司法書士、行政書士、場合によっては弁護士など、専門家のサポートを受けることも検討しつつ、期限を意識しながら進めていくことが重要です。

 今回も最後までお読みいただきありがとうございました!


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