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どこまで落とせる?交際費のアリorナシ

はじめに

 交際費は税理士と社長さんの間で認識が大きく分かれる論点の一つです。「みんな経費で落としてるよ!」という、小学生のような言い訳が出てくるのもこの交際費だったりします。
 この記事では、何が交際費なのか?除かれるものはどんなものか?交際費課税の計算方法、書類の保存方法、税務調査でよくある指摘事項などについてお伝えします。

1.どんなものが交際費になるのか?

 交際費等とは、法人税法では
 「法人がその得意先、仕入先その他事業に関係のある者に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出する費用」
と定義されています。具体的には以下のような費用が含まれます。

  • 取引先との会食費用(接待費)

  • お中元・お歳暮などの贈答品

  • 取引先を招待した旅行やイベントの費用(慰安費)

 例えば、重要顧客との会食で使用した飲食代、取引先への高級ワインセット、ビジネスパートナーを招いてのゴルフコンペ費用なども、全て交際費に該当します。

2.交際費から除外される費用

 一方、交際費に含まれない費用はどんなものでしょうか?

  • 従業員の慰安のための社員旅行や社内運動会等の費用

  • 1人当たり10,000円以下の飲食費(2024年3月31日以前は5,000円以下)

  • カレンダーや手帳などの広告宣伝的な贈答品

  • 会議で提供されるお茶菓子や弁当代

  • 通常の社内飲食費

 特に注目すべきは、1人10,000円以下の飲食費です。例えば、取引先3名と4,000円のランチミーティングを行った場合、1人当たりの金額が10,000円以下であるため、交際費ではなく「会議費」として処理(交際費からは除外)できます。この点は、経費管理において重要なポイントとなります。

3.社内飲食費の取り扱い

社内飲食費については、以下の点に注意が必要です。

 a) 原則
 社内飲食費(社内の役員・従業員のみで行う飲食費)は、原則として交際費等には該当しません。福利厚生費として取り扱います。

 b) 例外
 ただし、以下のような場合は交際費等に該当する可能性があります。

  • 役員や特定の従業員のみを対象とした高額な飲食(給与課税となる場合も・・)

  • 頻繁に行われる社内飲食で、福利厚生費として社会通念上妥当と認められる範囲を超えるもの

 c) 交際費等に該当しない社内飲食費の例

  • 業務遂行上必要な会議費等

  • 通常の会議に伴うお茶菓子代やお弁当代

  • 社内の慶弔費用

  • 社員の慰安のための社内行事における飲食費

 d) 記録の重要性
 社内飲食費を適切に処理するためには、以下の記録を保存することが重要です。

  • 会議や行事の開催日時

  • 参加者の氏名

  • 会議や行事の内容

  • 飲食費の金額と内訳

4.交際費の計算方法 - 中小企業と大企業の違い

 交際費の計算方法は、企業規模によって異なります。

【中小企業(資本金1億円以下)の場合】
中小企業には、次の2つの方法のうち有利な方を選択できる特例があります。

  1. 年間800万円まで損金算入可能

  2. 接待飲食費の50%まで損金算入可能

 例えば、年間の交際費が1,000万円で、そのうち900万円が接待飲食費だった場合:

  • 方法1:800万円まで損金算入可能

  • 方法2:接待飲食費の50%、つまり450万円まで損金算入可能

この場合、方法1を選択するのが有利となります。

【大企業(資本金1億円超)の場合】
 大企業の場合、接待飲食費の50%を超える部分が損金不算入となります。ただし、資本金100億円超の企業については全額損金不算入となるため、注意が必要です。

【計算の際の注意点】
 交際費等の金額を計算する際、交際費等に該当する社内飲食費(例外的なケース)も含めて計算する必要があります。ただし、通常の社内飲食費は除外されます。また、申告書を作成する際に交際費について上記の計算を行いますので、飲食費については細かく分けて集計しておく必要もあります。
 なお、所得税法においては法人税のような必要経費算入についての限度額計算の規定はありません。個人事業主にとっては会社のような申告調整は不要ですが、かと言って交際費の定義が緩いということはありませんのでご注意ください。

5.書類の保存方法

 交際費として認められるためには、適切な記録を保存することが重要です。以下の項目を記載した書類を保存しましょう。

  • 飲食等の年月日

  • 参加した取引先の名称と関係

  • 参加者数

  • 費用の金額

  • 飲食店等の名称と所在地

 業務日報のようなものでも構いません。業務の一環であったことがすぐに提示できる記録を残しましょう、ということです。
 また、領収書の保管はもちろんですが、商談内容、接待した社員、相手先の名前、人数などは余白に赤ペンで記載しておくと、経理処理がスムーズに進みますし、税務調査への対応が容易になります。

6.税制改正による注意点

 先に記載しましたとおり、令和6年(2024年)4月1日以降の支払いにおいて、交際費等から除外される一人当たりの飲食費の上限が5,000円以下から10,000円以下に引き上げられました。
 この変更により、3月決算法人以外の会社さんでは同一事業年度内で「5,000円基準」と「10,000円基準」の両方を適用する必要が生じます。
 年度が跨るタイミングでは混ざらないよう注意が必要です。

7.交際費処理でよくあるやらかし事例

 これまで見てきたとおり交際費は非常に線引きが難しいと言えますが、税理士から、あるいは税務調査で指摘される事例はだいたい似ています。どんなパターンがあるでしょうか?

 a) 誤った勘定科目で計上
 接待交際費と、会議費や福利厚生費を混同しないように注意が必要です。例えば、取引先との打ち合わせ目的で行った飲食代は会議費として計上できますが、接待目的の場合は接待交際費となります。

 b) 領収書や記録の不備
 領収書や参加者リストなど必要な書類を適切に保存していない場合、税務調査で問題になる可能性があります。特に、参加者やその関係性を明確に記載しておくことが重要です。そのキャバクラ、本当に経費ですか?

 c) 消費税処理の誤り
 商品券やギフト券など非課税となるものと課税仕入れとなる贈答品を区別して処理する必要があります。また、インボイス制度導入後は適格請求書かどうかによっても処理が異なります。期末の未使用分についても棚卸処理が必要ですね。

 d) 過度な利用による税務調査リスク
 業界水準や利益の水準と比べて交際費が過剰に計上されていると、税務調査の対象となる可能性があります。事業に関係ない支出は決して計上しないよう注意しましょう。アレもコレも計上していませんか?

8.交際費として認められない場合の影響

 もしも交際費が経費として認められない場合には何がどうなるのか、非常に気になるところですね。別記事にて詳しく解説いたしますので、そちらでご確認ください。

まとめ

  • 交際費は、事業関係者へのおもてなしや贈答のための費用

  • 2024年4月1日以降、1人10,000円以下の飲食費は交際費から除外可能

  • 中小企業は年間800万円または接待飲食費の50%まで損金算入可能

  • 書類の保存は詳細かつ正確に行うことが重要

  • 社内飲食費は原則として交際費等に該当しないが、例外的なケースがある

  • 誤った勘定科目での計上や記録の不備など、よくある落とし穴に注意

おわりに

 『衣食住は個人の可処分所得で賄うべし』というのが法人税、所得税での基本的な考え方です。ですので、飲食費について経費計上できるというのは、実は特殊なケースなのです。また『公私の混同が起きやすいのが衣食住』とも言えます。
 結果的に経費となったとしても、「取引先や社員との飲食だから経費にできる」といった考え方は非常に危険で、税務調査で足元を掬われ痛い目を見ます。
 「この支出をどうすれば経費にできるのか?」といった狭い考え方からは早く抜け出し、正々堂々と「事業に必要なものだから支払ったのだ」と言えるお金の使い方を目指しましょう。

 今回も最後までお読みいただきありがとうございました!


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