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「産学官連携」の行方―大学発ベンチャー・キャピタルの今後

近年「産」「学」「官」を取り巻く研究開発のあり方に大きな変化が見られる。産業分野(関連企業)においては開発を重視する研究開発戦略への転換が見られる一方で、学問分野(大学など)においては独創性と実践性を兼ね備える産業界にニーズのある人材の輩出が認められている。また国際競争力の確保という観点からは大学における研究成果を産業に生かすという産学連携への国家的な期待の高まりも見られる。こうした中で我が国においては「産学官連携」を目指す取り組みが行われてきた(参考:経済産業省)。

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図表:経済産業省(出典:Wikipedia)

しかしこの「産学官」連携では青色LED技術を共同開発した豊田合成と名古屋大学、一刈触媒技術を共同開発したTOTO/パナソニックと東京大学など限られた事例を除き、一般に知られるほどの成功を収めた事例は少ない。こうした産学官連携の失敗要因に共通するのが実際に開発に携わる「産」と「学」の間の認識の齟齬である(参考資料)。

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図表:青色発光ダイオード(出典:Wikipedia)

こうした流れの中で打ち出されてきたのが「大学発ベンチャー」の取り組みであった。

2001年には経済産業省により「大学発ベンチャー1000社計画」が策定され、大学発ベンチャー企業を3年間で1000社とすることが目標とされた。2004年度に目標の1000社を達成した後も大学発ベンチャーの数は増加を続け、2019年度には過去最高の2566社となっている(参考資料:経済産業省「令和元年度産業技術調査(大学ベンチャー実施等調査)報告書)。

ここで注目したいのがこうした大学発ベンチャーのIPO数である。2018年度までのIPO企業数は64社であり、2019年にはツクルバ(TYO: 2978)、ステムリム(TYO: 4599)、ハウテレビジョン(TYO: 7064)の3社のみが新たに上場し、計65社となった(2社上場停止)(参考:経済産業省、同上)。しかしIPOに成功しても赤字のケースも多く、IPO後の成長戦略の策定に苦心する大学発ベンチャーも多い(参考資料)。経済産業省は大学発ベンチャーの成長要因としてステージ後期においては経営経験のある人材確保を挙げている(参考資料)。

昨年度新規に上場したツクルバ、ステムリム、ハウテレビジョンの3社のCEOは共に経営学部出身もしくは経営経験者である。その意味では上場で終わらない成長が期待できるかもしれない。

他方で大学発ベンチャーは企業数、またIPO数でも増加が頭打ちになっている。新たな技術を実用化するために「産学官」の連携、また大学発ベンチャーを活用するには「研究」だけではない知識や経験が当然に必要となろう。他方で大学においては少子化により今後ますます研究資金難が予想される。しかし目先の利益に捕らわれないからこそなされ得る研究もある。こうした研究における大学の意義をどのようにして産業と連携させるのか。またそもそも本当にさせるべきなのか。今改めて考える必要がある。

グローバル・インテリジェンス・ユニット リサーチャー 佐藤 記す