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−縁色− ぼくは道案内屋さん

「〇〇病院ってどうやって行くか知ってる?」
「タクシー乗り場ってどこですか?」
「あそこのショッピングセンターって、イトーヨーカドー入ってましたっけ?」

ぼくは、町中で見知らぬ人に、道やイトーヨーカドーの有無を尋ねられることが多い気がする。
(嘘です。ヨーカドーの有無は一度だけ。笑)

道を知ってそうな顔でもしてるだろうか?
もしそうなら、褒め言葉として受け取っておきます。


印象に残っている道案内その1。

ぼくの通っていた高校の近くには観光地がある。
高1のある夏の日、登校中に、観光客風のおばさん2人に声をかけられた。
「すいません、〇〇ってどうやって行けばいいんですかね?」

あの角を右で次の次の角をまた右で、しばらく行って左手にあるトンネルをくぐって、、、
と口で説明するのは難しかったから、
「トンネルまで一緒に行きましょうか?」
と途中までご一緒することにした。

「あなた親切ねぇ、この近くに住んでるの?」
「いえ、電車で30分くらいですかねぇ。お母さんたちはどこからいらしたんですか?」
「私たち東京から来たの」

知らない人とたわいない会話をするのが、ちょっぴり大人になったみたいで嬉しかった。

トンネルの前で別れ際、
「お礼してあげたいけど、何にも持ってないから……これでよかったら」
と言って、おばさんが持っていたウエットティッシュを一袋くれた。

おばさん、ウエットティッシュありがとう。
なんだかもったいないから、まだ使えてません。
(もうドライティッシュになっちゃったかな?)


印象に残っている道案内その2。

疫病がまだ蔓延していなかった頃。東大のキャンパスには、観光客がよく訪れていた。
キャンパスを歩いていると、外国人の方に声をかけられた。
"Where is the main gate?" (正門はどこですか?)

はじめての、英語で道案内である。
ド〜レミ〜ファ〜ソ〜ラシ〜ド〜だ。

"Turn left at that corner. Then you will see it on your right."
(あそこの角で左に曲がって。そしたら右手に見えます。)

完璧だった。
中学校の英語で習ったやつ。

"Oh, I see. Thank you!" (おーなるほど、ありがとう!)

伝わった。嬉しかった。


これからも、道知ってそうな顔で街を歩きます。



【縁色】ゆかりのいろ
紫色。由来は古今和歌集の「紫のひともとゆゑにむさし野の草はみながらあはれとぞみる」
道案内もきっと、なにかのご縁。大切にご案内します。



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