−茜色− 東京の空の星は見えないと聞かされていたけど
故郷の夜は、闇だった。
空を見上げていると、だんだん闇に目が慣れてきて、見える星が増えていく。
やがて空一面に星がいっぱい広がって、夜空がまるく見えてきて、大きな天球の中心に自分がぽつんと立っているような感覚になる。
そんな夜が、ぼくはとても好きだった。
東京の夜は、薄かった。
街は光で溢れていて、空を見上げても、名もない星は全然見えない。
淡いグレーののっぺりした四角い平面があるだけ。
上京して数年、じっと星空を見上げることはなかった。
まぁ、夜に街中で立って上だけ見てたら、周りの人にギョッとされそうだしね。
でも。
東京で過ごす最後の冬の訪れは、星が教えてくれた。
11月の終わりごろ、夜にふと空を見上げたら、オリオン座が見えた。
あ、冬だな。って思った。
いつか、この薄くて四角い夜空を、懐かしいと思う日が来るのかもしれない。
【茜色】あかねいろ
アカネの根で染めた色。
「茜色の夕日」、とても好きな曲です。
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