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−竜胆色− 本州の最果て 龍飛

まだ小学生になるかならないかくらいの頃、家の近くの小さな道をひとりで歩いていた時、
「この道をずーっとたどっていけば、青森まで行けるんだろうな」
とふと考えたことを、今でもなぜか鮮明に覚えている。


その、ずーっと続く道をたどっていった、本州の最果て。津軽半島の最北端、龍飛に行ったことがある。

津軽半島の真ん中あたりにある金木町で生まれた太宰治は、小説『津軽』の中でこう書いている。

ここは、本州の極地である。この部落を過ぎて路は無い。あとは海にころげ落ちるばかりだ。路が全く絶えてゐるのである。ここは、本州の袋小路だ。読者も銘肌せよ。諸君が北に向つて歩いてゐる時、その路をどこまでも、さかのぼり、さかのぼり行けば、必ずこの外ヶ浜街道に到り、路がいよいよ狭くなり、さらにさかのぼれば、すぽりとこの鶏小舎に似た不思議な世界に落ち込み、そこに於いて諸君の路は全く尽きるのである。

龍飛にある、太宰の文学碑。『津軽』の一節が刻まれている。

本当に恐れ多いが、太宰は、ぼくが思っていることを逐一的確な言葉で表現してくれる。
(cf. 「神に問う。無抵抗は罪なりや?」

幼き日のぼくと同じように、太宰もまた、道をずっとずっと辿っていった先のことを考えたことがあるんだなぁ、と、ぼくは本州の袋小路で感慨に浸っていた。


思えばぼくのnoteには、「道」にまつわる話が何度か出てくる。
かつて道だったところ
国号6号線
ぼくは道案内屋さん

自分が住む街と、知らない街とを繋いでくれる、
ずっと続いているようで、でもどこかに終わりがある、
そんな「道」が、ぼくは知らず知らずのうちに好きだったのかもしれない。



【竜胆色】りんどういろ
竜胆の花のような薄い青紫。
"龍(竜)"飛なので。



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