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出版オーディションの緊張感ってすごい

出版オーディションというものがあります。

ビルのワンフロアを貸し切って、本を出したい方と編集者が集まる。

本を出したい方があらかじめ企画書を作成して、限られた持ち時間でその企画をプレゼンする。
編集者はそのプレゼンを聞いて、一度話がしてみたいと思ったら、自分の会社名が書かれた札を上げる。

ざっくり言うと、そのようなシステムです。

ご縁があり、編集者の一人としてこれまで3回ほど出版オーディションに参加させていただきました。

参加するたびに思うのは、出版オーディションの緊張感ってすごいな、ということ。

イメージとしては教室。
本を出したい人が教壇に立ち、編集者は机に座りながらその人のプレゼンを聞く。
そのほかの参加者は、編集者のさらに後ろの席で待機している。
人数はさまざまですが、総勢150名近くいるときもあります。

そして、その場にいる全員の視線がプレゼンをする一人の参加者に集められるわけです。
その中で、90秒などの決められた時間で企画をプレゼンする。

怖いな、と思います。

きっと、企画を作り、当日この場に立つまで、数ヵ月〜半年くらいの間さまざまな努力をしてきたはずです。

編集者は、それを90秒という限られた時間でジャッジする。
正直、重圧を感じないといえば嘘になります

本を出すって、人生を大きく左右する営みです。

その人生の節目ともいえる瞬間に立ち合い、自分の判断1つでその人の今後が大きく変わることになるかもしれないと思うと、当然こちらも真剣に話を聞きます。

この本を出したら書店でどこの棚に置かれるか。すでに似たような本が出ていないか。今このテーマの本を出す意味はどこにあるか。この人の強みは何か。どれくらいの部数が刷れそうか。
いろいろ考えます。

考えた上で、札を上げる、上げないの判断をするわけですが、本当にこれでよかったのかなという不安は常につきまといます

もし札を上げたのが僕じゃなくてほかの編集者だったら、もっといい本になったかもしれない。そしたら、その人はこれから先ますます出版業界を盛り上げる有名作家になるかもしれない。

もしかしたら、僕の判断一つで目の前にいる人の可能性を奪ってしまうのではないか。

出版オーディションというのはある種熱狂的な空間ではありますが、それに浮かれず、自分の発言や判断には大いなる責任が伴うことを忘れてはいけないなと思う次第です。

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