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時が経つほど魅了される美しい金工の姿。空間に溶け込む、組地翔太の暮らしの道具

ー作り手

今回ご紹介するのは金工作家の組地翔太さん。金属を主な素材とし、洗練されたデザインのカトラリーやお皿、時計など暮らしにまつわる道具を制作しています。

永く使ってもらえるよう「本来の姿」をコンセプトに、経年変化の美しさを引き出すものづくりにこだわりを持つ組地さん。素材の力を信じ、空間に調和する自然体のものづくりを目指して日々制作に励んでいます。

手にした時が美しさのピークではなく、時間を経てより一層魅力が高まっていくモノを作っています。

多くの工程が手作業のため非常に労力と手間がかかりますが、手作業ならではの歪みや不均一な部分がモノの魅力を高め、機械による量産品には出せない奥行きや優しさを表現できると思っています。

組地さんは金槌や木槌で金属を叩いて成形していく「鍛金」と呼ばれる手法を用いています。ギリギリまで要素を削り落とし、真鍮の板と針のみで構成されたミニマルな壁掛け時計。文字盤の表面にあえてランダムに傷をつけることで、光の反射をやさしく抑え、空間に溶け込む表情が生み出されるのだとか。冷たい印象の金属が、あたたかく時を刻む時計へと生まれ変わる秘密がここに隠されています。

金属の魅力を最大限に引き出すために、必要なものだけを残し普遍的なデザインを生み出す組地翔太さん。ありのままの美を追求するものづくりへのこだわりについてお話を伺いました。

ーものがたり

組地さんはこれまで建築金物の業界にて、歴史的建造物の復元や金属雑貨制作など鋳造、鍛造、鍛金に触れる仕事をしてきました。建築から工業、工芸の分野まで幅広くものづくりの現場に携わる過程で、分野の違いによってモノに対する考え方が大きく異なることに気がついたのです。

工業製品の世界では、モノ固有の美しさを追求しているような印象を受けました。一方でこれまで出会った建築家が手掛けた家具や雑貨などは、ある空間にモノを配置した際にモノの魅力が最も際立つようデザインされており、その両者にとても影響されました。

まず建築があり、次に空間があり、そしてモノが配置されるという構造を次第に意識し始めた組地さん。「モノ単体」、「空間におけるモノ」、両方に視点を置いた暮らしの道具を作っていきたいと考え、本格的な制作活動が始まりました。

ー想い

昔は室内の壁や床、台所道具など、全てが本物の素材で作られていました。近年見られる〇〇風や〇〇調といった表面的な高級感だけを安価な素材で演出するという方法ではなく、地の素材を活かした深みのある魅せ方こそ、製品そのものの寿命を伸ばしてくれると信じています。

生まれた瞬間の美しさだけではなく、時間の流れの中で変化していく深い味わい、表情の美しさにこそ使い心地の良さが生まれるという組地さん。そこには流行で終わるのではなく、モノを大切に使い続けてほしいという強い想いが込められています。

使い手の暮らしに寄り添えるよう、永く使ってもらえるよう奇をてらわず、簡素で、普遍的で、でもあたたかみのあるモノを作っていきます。

使い続けることで私たちの暮らしの中に溶け込んでいき、永く愛されていくであろう組地翔太さんの作品。時間と共に刻んでいく表情の美しさを感じてみませんか。

ー作り手情報

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