伊達政宗の周到 日本ただ一つの作例兜から—
(一)
戦国武将中、第一の文藻家は伊達政宗だと私は思っている。直江兼続も当代有数の文人であるが、政宗は尚その兼続を凌いで高い。「文」に於ける俊秀ではその筋目を計る作歌のみならず、通常の文章表現でも斬新であって、かつ気配りに満ちている。自筆書状の残存数は戦国武将中、第一ではなかろうか。
文書の一字一句、一条はまことに重要である。戦国の世界をみごとに渡りきった政宗にとって根本のところ、祐筆は信用していなかった。丁寧な自筆が第一である。大坂冬陣に際して、徳川方に属した政宗は大津