「GreaterFool.NFT」の、価格釣り上げ疑惑と懸念について。
CryptoNinjaのイケハヤです。
先日、Skeb代表のなるがみ氏による「GreaterFool.NFT」に対して、批判記事を書きました。
少し経って、「GreaterFool.NFT」に非常に嫌な動きが見えてきたので、あらためて批判的な記事を執筆いたします。
「価格釣り上げ」が行われている可能性が高い。
11月3日9時時点のスクショです。
当該作品の入札価格は70.143ETHとなっており、日本円で3500万円程度の価値が付いています。
3500万円!すごい!大成功じゃないか!
……と思うかもですが、残念ながら、これは恣意的な価格釣り上げの結果だと思われます。
以下、入札履歴を転載します。
詳しい人が見れば、かなり不自然であることがわかると思います。
「57B227」と「194E88」の2つの匿名ウォレットが、0.5ETHから先を競い合っているかたちになります。
しかしその動きは非常に不自然です。入札のログをたどると、入札は以下のような動きになっています。
0.5ETHで入札(57B227)
→ 0.6ETHで入札(194E88)
→ 1.25ETHで入札(57B227)
→ 3ETHで入札(194E88)
→ 8.88ETHで入札(57B227)
→ 15ETHで入札(194E88)
→ 29.7ETHで入札(57B227)
→ 49.8ETHで入札(194E88)
→ 70.143ETHで入札(57B227)
不自然なポイントがわかるでしょうか。
ぼくはこれ、入札の価格乖離がありすぎると感じます。
特に15ETH以降の動きは、通常のオークションでは考えにくい動きです。
15ETH→29.7ETHだけでも怪しいのに、そっから49.8ETH、さらに70ETH超えですから……。
一般的なオークションなら、15ETHの次は、せいぜい18ETH、その次が20ETH、次が22ETH……くらいなものです。
一足飛びに70ETH超えというのは、不自然と言わざるをえません。
細かいことをいうと、現時点で「194E88」は60.9ETHしか持っていません。
このウォレットと競うのなら「57B227」は61ETH出せば十分なのですが、大きく超えて70ETH以上出してる点も不自然です(オークション相手の入札予算を見るのは基本です)。
というわけで、10,000ETHくらい持っている大富豪が競り合っているか、あるいは2つのウォレットが自作自演で釣り上げていると考えているのが自然です。
なお、ウォレットは完全に匿名化されています。ともに2〜3日前に作られ、2つともBinanceからの入金で始まっています。
どちらのウォレットにもNFTは入っておらず、現状、このオークションに参加するためだけに作られたウォレットとなっています。
「NFTアートの問題を提起する」?
ぼくが懸念したいのは、こうした実例をもってして
「NFTは自作自演で価格釣り上げができる!だから危険だ!」
という言説が広がってしまうことです。
詳しい人が見れば、このオークションには疑義があり、少なくともまともな神経を持っているなら「この入札競争には参加すべきではない」ことは明らかです(実際にこの2つのウォレット以外は参加してません)。
しかし、NFTやOpenSea、ETH価格についての知識がない人には、この不自然さが伝わりません。
このまま70ETH(あるいはそれ以上で)落札されてしまったら、何が起こるでしょう。
「明らかに怪しい価格釣り上げが行われてるのに、落札が通ってしまうことがある。匿名入札ができるから、マネロンにも使われる可能性がある!NFTは危険だ!」
という主張につながりうる、「既成事実」が作られてしまいます……。
それによって、「NFTアートが抱える問題を提起する」という、なるがみ氏の意図はたしかに達成されるのでしょう。
しかしながら、こんなやり方で盛り上がりつつある市場に冷水を浴びせるような行為は「非常に残念」だと感じます。
ほんとうに、今がんばってるクリエイターたちに失礼だと思います……。
もろもろ含めて「GreaterFool(大馬鹿者)」ということなんでしょうかね……。
また、そもそもの話でいうと、OpenSeaにおいて、価格操作は規約違反となっています。
ただ、ウォレットが完全に匿名化されている以上、自作自演や価格操作であることは、残念ながら断定できません。規約違反が適用される可能性は低そうです。
このお金はどうなるんだろう?
気になるのは、このどうみても怪しいお金は、果たしてどうなるのか……という点です。
上述のとおり、ウォレットの資金は完全に匿名化されています。
取引自体に疑義があるのはもちろん、これでは、いわゆるマネロンの疑いも否定できません。
さすがに、なるがみ氏がこの入札を受け入れることはなさそうだ、と思います。
実際、ぼくが出品者なら、さすがにこれは入札として受け入れません。
万が一、なるがみ氏がこの入札を受け入れるのなら、一定の説明責任は生じると、ぼくは思います。
穏当に想像すれば、オークション終了直前に2つのウォレットが入札をキャンセルし、一気に価格が落ちて安値で落札される……という落とし所でしょうかね。
あるいは、この状況を受けて、なるがみ氏が出品を取りやめることも考えられます(個人的にはそのほうがいいと思います)。
あとあるのは……これは完全に邪推で、最悪のケースなので、話半分で……。
なるがみ氏がこの入札を受け入れて、その資金で「Skebの手数料を還元します!」みたいなキャンペーンとかしてきたら、NFTがんばってる側としてはほんとうに嫌な気分になるなぁ……とか思ったりもしますが、さすがにそれはないと思いたいです……いやほんとうに。
まとめ。
最後にまとめます。
・「GreaterFool.NFT」の入札状況を見るに、価格釣り上げが行われている可能性が高い
・しかし、ETH価格やNFT、OpenSeaの知識がない人には、この「怪しさ」が伝わらない可能性が高い
・こうした露悪的・作為的な事例をもって「NFTは価格釣り上げができる!匿名でも入札できる!だから危険だ!」と語られてしまうとしたら、それは非常に残念なことである
・この「怪しい入札」を、なるがみ氏がどう扱うのかは、別の問題として注目していきたい(おそらく受け取りはしないはず……)
なんというか、ほんとうに「百害あって一利なし」な企画であり、残念としか評価ができません……。
どうか、こんな事例をもってして「NFTは危険だ!」論が盛り上がらないことを祈ります……。
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