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変なところ

酒に酔ってシャワーを浴びると、自分の中に秘めているある奇癖が発動する

どんな奇癖かと言うと
酔いどれ気分で脳天に心地よい刺激が加えられると「何かで成功した人物」に早変わりし、雑誌やラジオでインタビューを受けている自分を妄想する。そして一人でベラベラと成功談や下積み時代の苦悩を語る。
そんな奇癖だ。

少し前まではデザイナーをしていたからその時期には酔ってシャワーを浴びると「新進気鋭の若手デザイナー」早変わりしていた。

ー成功の秘訣はなんですか?
「そうですね、やっぱりずっとデザインが好きで、その好きって気持ちだけで無心で朝も晩もデザインの事かんがえていたからですかねぇ」

ーなるほどです。でもやっぱり下積み時代というものがあったんですか?
「やっぱりそうですね、ありました。下積みはすごく長くて苦しみました。
でもその時の経験が今の自分を支えてくれてるっていうか、その時が無かったら今の自分はきっとなかったんじゃないかなって、うん。
思いますね。」

そんな具合にシャワーを浴びながら誰にも聞かれることのないインタビューを長々と繰り広げていた。

今は目標が脚本家に変わったので、もちろん成功した脚本家になりきって特設シャワーブースの中でインタビューを受けている。
つい先日はあの宮藤官九郎さんとの対談を繰り広げてみた。
業界トップのベテラン脚本家から新進気鋭の注目脚本家へ、脚本に対する熱い魂が受け継がれるような、そんな対談だ。

自分「いや、子供の頃からめちゃくちゃ「池袋ウエストゲートパーク」好きで、めちゃくちゃ尊敬してます!!」
宮藤「いやぁ、照れるなぁ。でも君が書いたこなだの連ドラ「ひらめきはシャワータイムに」。あれまじで半端なかったよ。ここ最近で一番良かった。」
自分「えー!!まじですかぁ!!マジばちぼこ嬉しいです!!
とかいって工藤さん、本当は見てないんじゃないですかぁ!?」
宮藤「いやいや見てるよ笑。ほんとあれすごい良いよ。基本コメディだけどちゃんと泣かすとこ泣かしてさ。メリハリが絶妙だよね。
まぁまだ、1話しか見てないけど笑」
自分「いや1話だけって笑」

笑…

なーにが 笑 だよバカが。
とさすがにシラフになった時はツッこまざるを得ないのだけれど
酔ってシャワーを浴びていると無性に、というか自然にインタビューを受けたり対談を繰り広げてしまう自分がいる。
いつの間にか自分は有名になって、いつのまにか成功談で悦に浸り、いつのまにか下積み時代の苦悩でこれからの若い世代に勇気を与えてしまう。
さらには有名人と対談し、褒められ、喜び、終いには小ボケまで挟み込む。

そんな不思議な、奇妙な、うっすら君の悪いシャワータイムの奇癖。

いつかは本当にインタビューされる日が来るんだか来ないんだか。
人は幸せな妄想をするとそれに満足してしまって行動に移しづらくなる、なんて事をこないだネットニュースでみたから、もしかしたらこの奇癖はやめた方がいいのかもしれない。

まぁでもそんなことはおかまいなし。
こういう変なところこそが自分だし、そこを伸ばしてこそ個性が生まれるはずだ。

短所は認めて長所を伸ばすなんて事はよく言われているけれど
本当に伸ばすべきなのはきっと
「シャワーを浴びながらインタビューを受ける妄想をする」
みたいな変なところだと思う。

見栄とか恥じらいとか、本音とか建前とか、良いとことか悪いとことかぜーんぶひっぺがした時に現れる変なところ。
そこを愛でて愛でてピッカピカの変なところにしてあげれば
もしかしたら唯一無二の存在になれるかもしれない。
そうやって無理やり自分の奇癖を、雰囲気良い感じの思考へと昇華している

次に酔いどれでシャワーを浴びたら、そんな雰囲気良い感じの思考をインタビューで語りたいと思っている。

では!!


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