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【出版物紹介】共著書『映画とイデオロギー』

映画学叢書『映画とイデオロギー』加藤幹郎監修、杉野健太郎編、共著、ミネルヴァ書房、2015年(第4章「Shall weリメイク?──『Shall weダンス?』とハリウッド映画のイデオロギー」執筆)


書評掲載情報

本論集は、映画とイデオロギーがどのように絡み合っているかを解き明かす9篇の論考から成る。

そのうち6篇は、一本ないし数本の限られた作品に焦点を合わせて、そこにより広範な文脈におけるイデオロギーがどのように折り畳まれているかを読み解いている。トーキーへの移行期に作られた初の日ソ合作映画『大東京』にみられるイデオロギー的交渉(フィォードロワ・アナスタシア)や、『イージー・ライダー』に反映するアメリカのイデオロギー的対立(杉野健太郎)や、ヴェトナム帰還兵映画である『タクシー・ドライバー』に織り込まれたアメリカ史の汚点に関するアレゴリー(大勝裕史)や、返還後の香港の政治的なポジションのアレゴリーとしての、ウォン・カーウァイの『花様年華』と『2046』の〈狭間の時空間〉(藤城孝輔)がそれぞれ綿密に読み解かれるほか、周防正行の『Shall we ダンス?』のハリウッド版リメイクを例に「イデオロギー的実践としてのリメイク」が論じられる(井原慶一郎)。(堀潤之氏=関西大学教授・映画研究・表象文化論)

表象文化論学会『REPRE』25号

第4章 Shall weリメイク?
    ──『Shall weダンス?』とハリウッド映画のイデオロギー


1 〈アメリカ化〉されたリメイク
2 アメリカ公開版『Shall weダンス?』——予備的考察 
3 リメイク版『Shall we Dance?』——ハリウッド製アメリカ映画の作り方
4 オリジナルとリメイク──脚本とミザンセーヌの比較分析
5 なぜリメイクするのか?——ハリウッド映画産業の〈ヘゲモニー〉

本章が扱うのは、映画のなかのイデオロギーというよりも、むしろイデオロギーとしての映画――イデオロギー的実践としてのリメイク――である。本章では、ハリウッドによってリメイクされた外国映画のひとつの事例として『Shall we ダンス?』を取り上げ、それが〈アメリカ化〉された過程を詳細に見ていく(その過程で〈映画のなかのイデオロギー〉についても一部論じる)。本章の目的は、ハリウッド映画産業というブラックボックスのなかで行われた〈アメリカ化〉のプロセスを具体的に明らかにすることであり(その際、周防監督による2冊の著書『「Shall we ダンス?」アメリカを行く』、『アメリカ人が作った「Shall we ダンス?」』は貴重な資料となる)、ハリウッドが外国映画をリメイクするという行為それ自体のなかに〈ハリウッド映画のイデオロギー〉を読み取ることである。また同時に、本章は、約10倍の予算をかけて製作された映画が全世界でオリジナル以上の興行収入を得るいっぽうで、なぜアメリカにおいてオリジナルを越える評価を得ることができなかったのかというハリウッド映画が抱える構造的問題についても明らかにする。