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芝野虎丸名人のエピソード

 


囲碁に向き合うため芝野名人がやっていること

芝野名人はのめり込みやすい性格だ。
その資質によって囲碁に打ち込み、
数々の実績を積み上げてきた。

 ひとたび歯車が狂い、
他のことにはまってしまうと囲碁がおろそかになることを
芝野名人は恐れている。

囲碁に向き合うため、芝野は様々なことを自制しているのだ。

 例えばゲームをする場合はどんなに面白いと思ったゲームでも、
その日のうちにスマホから削除する。
再びそのゲームをプレイする場合もあるが、
その場合も再び削除する。

 年末年始も囲碁を研究するリズムを保つため、休みをつくらない。
 
 はたから見ていると勤勉そのものだが
「のめり込みやすい性格なので囲碁へ向かい合う習慣をキープし続けているんです」
と笑いながら語る芝野。
謙遜ではなく、本音で言っている気がする。

囲碁に向き合うため、様々なものと適度な距離を保ち、
芝野名人は努力し続ける。

後輩を指導するのは誰のため?

若い頃からタイトルを獲得している芝野名人は後輩を指導することが多い。

上野愛咲美女流名人は
「芝野名人にはネット碁だけでも300局近く教えてもらっています。
恐れ多いので自分からは申し込めません。
でも不本意な内容で負けてしまった場合は
『もう一局』ボタンを押してしまいます」
と語る。

芝野名人にこのエピソードをぶつけると
「300局も打ったかなー?」と首をひねる。

2年前には芝野虎丸名人が
酒井佑規四段と福岡航太朗四段、上野梨沙二段を
誘って『とらけん』を立ち上げた。
コロナ禍ではネットで対戦し、
勝ち上がった二人が対局する方式だった。

直接対局する場合は総当たりリーグになる。
マンネリを防ぐために許家元九段や上野愛咲美女流名人を誘うこともある。

『手合いよりもとらけんの方が気合が入ります』
という感想を聞いた芝野名人は大いに喜んだ。

このように書くと芝野が後輩に恩恵を与えているように見える。
しかし芝野は
『囲碁へのモチベーションが低下するのを防ぐため、後輩を誘いました。
教える立場になれば普段からしっかり勉強しなくてはいけないので。
3人とも飛躍的に活躍しているのでいい刺激になります。
一番恩恵を受けているのは僕かもしれません』
と否定する。

後輩へのいい目標になろうとした結果
2022年、芝野は名人位へ返り咲く。

無口だった芝野名人のリップサービス

芝野が若い頃から洪道場に通っていた。
洪道場からは『芝野はかなり無口です。
師範の洪四段に質問されたとき、
返答せずに泣いてしまったこともあります』
という情報をつかんでいた。

取材がかなり難航すると警戒していたが、
実際に話してみるといろいろなことを語ってくれる。

2023年の十段戦五番勝負で取材した際には
「二日制初日の午前などは手数が進んでいないので余裕があります。
正直に言うとおやつに夢中になって頭から囲碁が消えてしまうぐらい。
しかし本局ではかなり煮詰まっているのでおやつが頭から消えていました」

とリップサービスしてくれるぐらい話が上手くなった。

盤上はもちろん、盤外でも芝野名人は成長し続けているのだ。







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