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趙治勲、4度目の棋聖を目指す(挑戦者決定戦編)

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当時を振り返って記事にします。
肩書などはなるべく当時のものにしたつもりですが、
違っているかもしれません。
大目に見てください。

七番勝負の鬼=趙治勲


趙治勲十段は棋聖、名人、本因坊の大三冠を獲得した経験がある。
二日制七番勝負の勝負強さは絶品で『七番勝負の鬼』と称えられていた。

そんな趙十段も2000年以降は後輩の追い上げにより、
七大タイトルからは遠ざかってしまう。

復活の雰囲気が漂ってきたのは2005年の十段戦。
王立誠十段から3勝2敗のフルセットで奪取する。
その後は山下敬吾棋聖の挑戦を2年連続で退けた。

当時、十段位は序列4位だった。
しかし十段だけでは復活とは言えない。
やはり三大タイトルを取らなくては。

最大の天敵=張栩名人


大チャンスが舞い込んできたのは2007年。
棋聖リーグを制し、挑戦者決定戦に駒を進める。

相手は張栩名人、碁聖。

四天王の一人で趙十段の天敵だ。

ここまでの成績は張名人12勝、趙十段の3勝と一方的にやられている。

趙十段がタイトルを目指すと大一番で張名人と対戦。
惜しくも敗れて涙を吞むことが多かった。

今回は積もりに積もった借りを返済するチャンスである。

内助の功


「普段の対局だと奥さんが『今日はテレビ対局ですか?』とか
『持ち時間は何時間ですか?』などと尋ねながら服を選んでくれます。
しかしこの日だけは『スーツはこれ。ネクタイはこれ』などと
何も尋ねずに決めてくれました。
多分、今日が挑戦者決定戦だと知っていたんだと思います。
無言の内助の功を感じ、気合が入りました」
と趙十段は後でこっそり教えてくれた。

当時はネット中継はない。
応援するためには日本棋院へ行くしかない。
趙十段の雄姿を見るために多くの棋士が東京本院へ集った。

1時間に1回ぐらい棋譜を見て暗記する方式で進行を知る。
かなり不便だけど、当時はそれが当たり前だと納得していた。

AIを活用しながら昔の棋譜を並べると新しい面白さがある。

趙十段、四目半勝ち

当時は序盤から趙十段が優勢。
最後までしっかり逃げ切った完勝譜という評判だった。

この記事を書くためにAIで調べた。
趙治勲先生の評価値が50を下回った局面はほぼない。
当時の形勢判断がひいき目ではなかったことがわかる。

局後の打ち上げで趙十段は
『白54では上辺打つべきだった』
と後悔していた。
AIの評価はどちらも評価値69なので甲乙つけがたい。

中盤、終盤でも悪くなった局面はない。
ちょっと評価値が揺らぐも逆転には至らない感じだ。

最後までヨセた結果、趙十段の4目半勝ち。
七番勝負の鬼が棋聖戦七番勝負に8年ぶりに帰ってきた。

インタビュアー『今日の対局にはどのような心境で臨みましたか?』

趙十段『張名人にはとても勝てるとは思いませんでした。
いい勝負できればいいと思っていたので勝ててうれしいです』


イ『山下棋聖にはどんな印象を持っていますか?』

趙十段
『山下さんのことは尊敬していますし、好きです。
七番勝負を打つ機会がもてたのですごく幸せ。
メチャクチャ強い人なのでもっと勝ってもいいはずなのに、
最近はちょっと不調ですね。
最初は歯が立たなかったけど、
最近はいい勝負ができるようになったので好きになりましたよ(笑)』

(十段戦五番勝負で山下棋聖に
2期連続勝利していることを指しての発言。
謙遜していることがわかる。)

棋士は本音を明かさない。
言葉通りに受け取ってはいけない。

最近はちょっと不調ですね

僕(趙治勲)に負けるなんて不調じゃないか?

山下棋聖が不調なのが勝因なのではなく、
趙十段が復調したり、山下棋聖の打ちぶりに
対応できるようになったのが勝因だと思っているはず。
(本心は教えてくれない)

最近はいい勝負できるように

十段戦五番勝負で2連続防衛。

って事実と照らし合わさないと本音が見えてこない。

『勝敗とか棋譜とか見れば真実がわかるでしょ?
言葉じゃなくて棋譜見てよ』
っていう雰囲気が多くの棋士には漂っているし、
趙治勲は特にその傾向が強い。

イ『八年ぶりの棋聖挑戦ですがどのような感想をお持ちですか?』

趙十段『八年間何してたんだろう?
冬眠してたわけでもあるまいし…
昔は二日制の碁は強かった。
二日制の碁を打てるかどうかわかりませんが、
またじっくり打てたらいいですね^^
挑戦できるのは望外なので始まるのが楽しみです。
始まったら苦しいんでしょうけどね(苦笑)』

と会心の勝利を挙げた趙十段はうれしそう。
おいらもうれしかった。

趙十段に指名されたので打ち上げに参加できた

『応援するためにわざわざ日本棋院に来たよ』
ってことを趙十段に伝えるため、ちょっと顔を見せた。

目があった瞬間、『来い』と一言。
(この『来い』は本心)

挑戦者決定戦の打ち上げは読売新聞の関係者だけで行われる。
おいらが参加するのは筋が悪いので行けるとは思っていなかった。
でも挑戦者の指名なら参加できそう。

今は閉店してしまったお寿司屋さんで打ち上げした。

こういう大人数の飲み会でも棋士は本心を明かさない。

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