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風土・体質と土壌づくり

■ 風土・体質改革と企業革命


企業の改革を植物を育てることに例えてみるならば、
 ①土壌を耕す
 ②種を蒔く
 ③水をやり
 ④肥料をやる
 ⑤花が咲き、実がなる
   ・・・というようになる


 この第一段階の「土壌を耕す」というのが風土・体質の改革だというようにイメージするといい。

 では、耕されている土壌と耕されていない土壌とでは具体的にどんな差があるのでしようか。

 一言で言うと「言いだしっぺが損をする」と思う人がどのくらいいるのか、「言うだけムダ」と思っている人がどれくらいいるかで、風土・体質的にその組織がどの程度問題をもっているか、つまり、土壌がどのくらい耕されているかがほぼ分かります。その割合が多ければ多いほど、土壌が耕されていない、つまり重症と言うことができる。

 なぜ、そんな風土・体質が生まれるのでしようか。

 何かはっきりとした制度的根拠があるわけではありません。
誰かが何かの問題を提起した時「じゃ、君がやりなさい」と言うはどこにでもいます。それは悪意ではなく、よかれと思って言っている場合がほとんどです。しかし言われる側からすると、何か言うと必ず仕事が回ってきてしまう。お互いの事情がよく分からなかったり、気持ちの上でもつながっていない時は、せっかく何か新しい事、革命的なことをを初めても周りからのサポートはなく孤立しやすい。こういう経験が土壌を悪くする原因なのです。

 ところで、これほど重要な問題なのに、この風土・体質の問題が今までそれほど大きくクローズアップされてこなかったのはなぜなのでしょうか。

 企業の中でリーダーシップをとれる人というのは、少々土壌が悪くてもそんな事を意に介さず、ドンドンやってしまえる人が意外に多い。つまり、こういう人にとっては土壌の良し悪しはあまり関係ないのです。こういう人の中には枠を超えるような言いだしっぺには決してならないけれど、与えられた課題は何としてでもやってしまう人というのが一番多いが、枠を越えてでもやれてしまう人も時にはいます。

 いずれにせよ、こういうごく一部の人々は土壌開拓というロー発進をしなくても、セカンド発進のできる人たちでです。こういう人たちは自分がセカンド発進ができるものだから、土壌の存在にあまり気がつかないのが特徴です。

 「そんなこと思い切ってドンドンやればいいんだ」「そんなものやらないほうが悪いんだよ」と平気な顔で言ってしまうものだから、それを言われるほうの部下には違和感が残る。

 問題は、こういう土壌を無視するタイプの人だけが仕事ができる人だというわけではないということです。土壌を無視したそういうセカンド発進は不得意だけど、土壌さえ良ければ本当は仕事のできる人というのは数多くいます。

 しかし、従来の耕されていない土壌ではこういうタイプの人はあまり力を発揮できずに終わるケースが多かった。今は高度成長の時代と違って、耕されていない土壌でも力が発揮できるごく一部の人だけではなく、いろんなタイプの人の能力、つまり普通の人の能力を十分に発揮できる状況づくりが大切です。だからこそ、土壌開拓、つまり風土・体質の問題がクローズアップされ始めています。

 風土・体質を変えていくにはどういうことをすればいいのか。
風土・体質改革はどういうメカニズムで働いているのか、と言うことを知ることが第一の条件だが、ただ知るだけではだめ。みんなで何かを一緒にやっていこうというようなポジティブなエネルギーを共有する事が大切です。
みんなで何かをやっていこうという仲間意識は、お互いにやり取りし、一緒に苦労する中で生まれてきます。
相手の事情が分かる中で、一緒に協力し合うなかで信頼関係が生まれてきます。この”信頼関係”と”風土・体質とはどういうものなのか”という知識とか、車の両輪のようになって改革を進める役割を果たしていきます。

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■ 二割の社員が変わればよい


 何かに困る、問題を感じているといった問題意識を少しでも持っていなくては何も始まりません。人によって問題意識の強弱は明らかにあります。

 しかし、現時点では問題意識は弱くても、新しい情報などから刺激を受ける事によって、その問題意識が急速に強まることはよくあることです。

 同じ情報を受けても受信感度には個人差があるから反応はさまざまなのです。情報感度の弱い人に無理強いして問題意識を持てといってみても始まらない。単なる時間のムダです。

改革は情報感度の強い1~2割の人を中心に進めていくだけで十分の機能する。

 つまり、1~2割の人がネットワーク化されていれば「言いだしっぺ」は孤立しないし、損をしにくい状況が生まれます。もともと、そういう情報感度のよい人たちは仕事のうえでも影響力の強い人だったりするし、管理職の中のキーマンなどがうまくこのネットワークの中に入っていると、まず風土・体質は変わっていきます。

 ただ、風土・体質改革というのは人の気持ちとかかわっているから何をやるにしてもタイミングが大切です。よいタイミングをとらえていこうと思うと、どうしても時間はそれなりにかかります。

 ブルドーザーで整地をするというようなわけにはいきません。

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■ 風土・体質の変化に気づく

 しかも、第一段階で風土・体質が変化してきても、第四段階の「花が咲く」もしくは「実がなる」状態と違って極めて分かりにくいのが現実です。

 風土・体質が変化してきてはいるが、まだ実がなっていない第一段階の状態において、変化を感じる人というのは、種を蒔こうと努力している人、水をやり肥料をやろうと頑張っている人、つまり、改革のためにネットワークと信頼関係をつくりながら、仕事を変えていこうと努力をしている人です。

こういう努力をしてみて始めて、風土・体質の変化は実感できます。

 風土・体質が変化してきている状態でも「別に何も変わっていないよ」という人たちは、自ら何も変えようとしていない人、つまり傍観者であり、評論家である事が多い。自ら何かを変えようとしている人の多くはわずかな変化にも一喜一憂するものなのです。

 風土・体質の問題というのは明確に目に見えるわけではないから、極めて分かりにくく判定しにくい問題ではあるが、企業の体力というのはまさに風土・体質の問題そのものです。

 そして、この風土・体質のいかんが、今のような時代に「運」を引き寄せる「何ものか」を左右する。

企業の命運を分けるものが風土・体質なのです。


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