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変わるフリーペーパー 【think local】

当地(茨城県水戸市)では地域情報誌が無料宅配されるようになって20年以上になる。一部書店売りのものもあるが、それらは広告掲載店で無料で手に入る。事実上有償販売誌は駆逐されたことになる。

以前、無料宅配を始めた地域情報誌の制作会社で仕事をしていた。発行は別会社だが同じ建物の中で、実質一体の組織と言っていいだろう。

その当時はそれなりに勢いもあったが現在は発行原資を得る広告も減り、ページ数は1/3程度だ。水戸市という茨城県の県庁所在地、県都のメディアとしては残念な現状だ。

広告が減ったということは、発行エリア(水戸)の活力低下を意味する。
主たる広告主だった飲食店がコロナ禍で積極集客できなかったことも要因のひとつには違いないが、広告主やその見込み客たる事業者がSNSなどである程度の効果を得られることを学んできた結果とも言える。
広告料を払って10人集客するよりもTwitterなりなんなりで5人来てくれたら、そちらの方がいいに決まっている。そういった情報媒体としての価値の低下に対応が十分ではなかったのも事実だろう。

だが、そんな状況でもページ数を維持したり、発行回数を増やしている情報誌・紙もある。
内容を観察してみると、主力エリアである水戸市内の情報よりも周辺市町村の情報、そこに所在する事業者の広告が増えている。

つまり「水戸から外への移動を促す」ことが明確に見てとれるのだ。

県都として人口の多さは、周辺市町村への十分な動員給源となる。独自の地域情報媒体を持たない市町村の事業者は、これで水戸からのヒトとカネの移動の可能性を高められよう。
同時に、水戸に所在する発行元は「水戸の外から」カネを移動させる(広告料を獲得する)ことで情報媒体としての存続を可能にし、価値を維持したわけだ。
これは決して目立たないが、広告ビジネスモデルを用いて「外からヒトとカネの移動を促す」という地域貢献と言える。地域内に限ったそれらの移動は、やがてすり減るのだから。


地域媒体としての情報誌のあり方は、とうに曲がり角を過ぎている。足もとを固めたはいいが、固めすぎて動けなくなってはいないだろうか。

現状維持は劣化である。

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