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鉄道ダイヤを考える ❶京葉線編 2. 混雑緩和と速達性の両立

5. 改善停車駅選考

今回の記事では、前回上げた3つのポイントである、蘇我以遠からの「速達性」・優等通過駅の「利便性」・混雑の「平準化」を達成するために、各種別の停車駅の改善案を考えていく。

5-1. 特急「わかしお・さざなみ」

まずは特急だ。現在の特急は、海浜幕張に停車する半数の特急以外は東京~蘇我間ノンストップである。しかし、これでは京葉線の中でも通勤客が多く利用する八丁堀・新木場が無視されることになる。特に新木場は八丁堀と比べても圧倒的に多くの通勤客の利用(定期乗降者6.8万人。八丁堀は3.1万人)があり(とはいっても、新木場周辺には特段何かあるわけではないので、大半は乗換需要だが)、ラッシュ時にはホームが客で埋まり溢れかえるほどの混雑を見せる。この通勤客が多く使う駅に特急を停めれば夕時間帯を中心に着席需要を確保できると思われることから、平日11時以前運転の上り特急と平日17時以降運転の下り特急は、八丁堀・新木場に停車させるべきであると考える。そして新木場は通勤客の牙城であると同時にお台場へのアクセス駅でもあり、りんかい線・有楽町線を用いてお台場に向かう人も多く利用する。このため、土休日15時以前運転の上り特急と土休日13時以降運転の下り特急も新木場に停車させるべきであると考える。八丁堀は通勤利用中心のため土休日は特急停車なしでも良いだろう。なお特急は7月以降全列車がE257系5両編成での運転となる。混雑状況を調べるため、試しに平日の特急の利用状況を調べてみた。東京19:00発の「わかしお15号」は9両にも関わらず窓側がすべて埋まるほどの混雑(混雑率55%程度)で、5両編成だと混雑率は約90%となる。わかしおに関しては輸送力に難があり、今後5両で捌けるか心配である。一方で東京18:30発の「さざなみ3号」は窓側にも若干空きがある程度の混雑(混雑率40%)で、単純計算で5両編成でも混雑率は約65%程度となるため、「さざなみ」に関しては5両編成が適正だろう。

5-2. 通勤快速

そして最大の難点、通勤快速である。今回はX上で提唱されていたデータを7つ集めた。以下にそれを示す。


図4:通勤快速停車駅候補。
①従来の通勤快速。新木場→蘇我間ノンストップ。
②千葉市などが提唱している停車駅パターン。①に海浜幕張を加えたパターン。
③全距離輸送特化型停車駅。②にさらに新浦安を加えたパターン。
④中距離輸送重視型停車駅。海浜幕張から各駅に停まる。
⑤近中距離輸送重視型停車駅。南船橋からの各駅と新浦安に停まる。
⑥近距離輸送重視型停車駅。東京~新浦安間を各駅に停車した上で、海浜幕張にも停車する。
⑦⑥から海浜幕張を外したパターン。

5-2-1. 速達性
まず「速達性」の問題を解決するため、従来の通勤快速並みの所要時間を確保しなければならない。そう考えると、朝ラッシュ時間帯の所要時間増を考慮しなくても東京~蘇我間で43分と快速よりも時間がかかってしまう⑤は外れる。9月改正で発表された快速の中には蘇我~東京間49分という便も存在するが、これは朝ラッシュ時間帯最速の各停と僅か2分しか所要時間差が変わらない。2022年時点の通勤快速は驚異的に速く、東京~蘇我間はなんと下り最速が33分(東京19:18→蘇我19:51/19:53→君津20:32、表定速度78.2km/h)朝ラッシュ時間帯でも上り39分(勝浦6:25→蘇我7:43/7:46→東京8:25)をキープしていた(参考までに、2023年時点では下り37分、上り42分。表定速度は最速で69.7km/h)。朝ラッシュ帯に新たに追加される快速の所要時間は最速47分、未だ旧通勤快速と8分の差がある。なおこの時間帯は現在特急ですら東京~蘇我間最速43分(さざなみ4号)となっており、「速達性」という面から見ると2023年からの2年間で京葉線は大幅に不便になったと言わざるを得ない。

5-2-2. 利便性
次に「利便性」の面で残った6つの停車駅パターンを見ていく。ここでは、①が外れる程度である。①の従来の通勤快速が廃止された理由として、JRは「他列車に比べて7割程度しか利用がなかった」というのを理由として挙げているが、これは恐らく内房線・外房線沿線から通勤する客というのはどうしても京葉線内から通勤する客よりも少なくなってしまうためであると考えられる。2線合わせて一番利用が多い鎌取ですら稲毛海岸に負けるレベルで、千葉や海浜幕張へ通勤する人のことも考えると東京方面への通勤需要は圧倒的に京葉線沿線の方が大きいと言わざるを得ない。なお②だが、これが実現されない理由としてJRは「乗換客で海浜幕張が混雑する」というのを挙げている。この点については「平準化」の面で述べる。

5-2-3. 平準化
その「平準化」の面についてだが、これは下から順に見ていく。まず⑦についてだが、これは結局のところ蘇我~新浦安間は今までと同程度の混雑になり、同区間の混雑平準化は難しくなってしまうので(海浜幕張からの客が各停に集中し混む一方、新浦安までノンストップの通勤快速は空く。どちらにせよ各停も新浦安に停まるので結局混雑は通勤快速の方が若干下になる)外れる。次に④の海浜幕張以東各停の便。一見海浜幕張駅のホーム混雑を起こさずに済む最善の案のように見えるが、これでは同じく海浜幕張以東各停の快速と役目が被ってしまう。そうなればわざわざ通勤快速を設定する意味は薄れてしまうので④も外れる。

5-2-3-1. 「海浜幕張」停車の是非
これで残ったのは②の海浜幕張追加パターン・③の2駅追加パターン・⑥の都心側並行ダイヤパターンだが、これらの便は全て海浜幕張〜蘇我間ノンストップである。JRが通勤快速の海浜幕張停車を行わない理由として「通勤快速⇔各停の乗換客で海浜幕張駅がキャパオーバーになる可能性がある」というのが挙げられているが、ホーム滞留問題が大きいのは現在新木場が挙げられる。では、これらを実現したところで海浜幕張でも新木場と同じようなホーム滞留問題が起こるのか?といえば、答えはNOだろう。まず、美浜区の3駅(検見川浜・稲毛海岸・千葉みなと)の定期乗降人員は6.52万人であるが、新木場の定期乗降人員は6.86万人にも及ぶ。現在朝ラッシュ時間帯停車列車が各駅停車のみとなっている(改正前もそう)海浜幕張駅は1乗車口8人程度で済んでいるが、新木場は1乗車口に30人以上は軽く並んでいる(さらに言うと、これらの大半は武蔵野線直通列車の利用客である)。さらに海浜幕張駅のホーム幅は「頑張れば15人並べる」くらいだが、新木場も同程度なので、乗車口の整理さえすれば上り方向であっても海浜幕張は夕ラッシュ時間帯の新木場よりかは客を捌けると考える。よって海浜幕張に通勤快速を停車させても、新木場のようなホーム滞留問題は起きないと考える。

5-2-3-2. 「新浦安」停車の是非
では次に、「新浦安」の停車の有無を考える。新浦安は前述の海浜幕張(5.73万人)をも上回る6.15万人もの定期乗降人員を誇り、朝ラッシュ時にはピーク前でも1乗車口10人以上の混雑となる、海浜幕張に並ぶ京葉線の2大需要駅である。平日は。さらに新浦安は通学需要も大きく、下車客も意外といるため、停車させれば混雑緩和と利便性向上につながるだろう。
この結論から、残る停車パターンは③と⑥。このうち⑥は混雑平準化という面では良いが、越中島・潮見・葛西臨海公園では利用客数に対し本数過剰となってしまう(参考までに、京葉線優等通過駅の利用客数を全て合わせても新木場に負ける)ため外し、残った③の新浦安+海浜幕張停車パターンを今回の通勤快速改善案の軸とする。ただ、当然③にもデメリットは存在する。それが「接続等を工夫しなければ通勤快速に混雑が集中する」というものである。これに関しては、後の運行形態作成の面で述べる。

5-2-3-3.「南船橋」停車の是非
ところで、ここまでで議論に出ていない駅がある。武蔵野線直通の始発駅、「南船橋」だ。ここに通勤快速を停車させるべき、という意見もX上では大量に見られた。しかし、通勤快速が運転されるような時間帯は武蔵野線直通列車は海浜幕張発であるため、海浜幕張で武蔵野線と接続すれば南船橋に停める意味もなくなるほか、快速と役割分担ができなくなるので、今回は南船橋については考えないものとする。

5-3. 快速

次は快速だ。通勤快速ほどではないが快速もかなりの速達性を持っており、
東京~蘇我間を最速41分(表定速度62.9km/h)で結んでいる。ただ、2023年度までの夕ラッシュ時間帯は列車密度が高くなることから、快速は最速43分まで遅くなる。快速に関しては通勤快速との分担のため、現行の停車駅のままとして改善案を考える。

6. まとめ

今回改善案として考えた停車駅は以下の通りとなる。

図5:ダイヤ案における停車駅考察
特急→八丁堀・新木場に一部停車
通勤快速:新浦安・海浜幕張に停車
快速→現行通り

次回からはこれを基に、京葉線のダイヤ改善案を作成していこうと思う。

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