小説「千夏の絵の中で」第四話
昼休みの教室で、太郎は窓外をぼんやり眺めていた。そこに同じクラスの宮田が近づいてきた。
宮田は太郎に話しかけた。「おー、太郎。昨日の話、どうだった?」
太郎は少し戸惑いつつ、宮田の質問に答えた。「あ、ああ…まだはっきりしないんだよ」
宮田は太郎の返答に耳を傾けた。「そっか。でも、千夏さんのこと、何か分かったら教えてくれよな」
太郎の表情は複雑になった。「でも宮田、千夏さんって、もしかして彼氏が…」
宮田の表情が一瞬、曇った。「え!? 本当かよ、太郎…」
宮田は明らかに落胆していた。
「いや、そんな簡単に決めつけるのは良くないと思うけど…」
太郎は宮田の反応を気にしながら、慎重に言葉を選んだ。
「そうか、そうか。でも太郎、千夏さんのこと、よく知ってるんだろ? 教えてくれよ」
宮田は太郎に期待を寄せた。
「正直、自分でも千夏さんのことはよくわからないんだ。最近、何か変だと思ってて…」
太郎はためらいがちに答えた。
そこへ、岩崎優香が近づいてきた。
「太郎くん、何の話してるの?」
太郎は優香の登場に、さらに戸惑いを隠せなかった。
「ああ、優香。宮田と千夏さんのことで…」
宮田は優香の反応をうかがった。
優香は興味津々で尋ね返した。「千夏さんのこと? 何か聞こえたんだけど、どうしたの?」
宮田は部活の練習に逃げるように立ち去った。
「あ、そうだ。俺、部活の練習に行かなきゃ。じゃあな、太郎」
優香は宮田の後ろ姿を見ながら、不思議そうに尋ねた。
「ん? 宮田くん、急にどうしたの?」
太郎は優香に向き直り、心境を打ち明けた。
「いや、その…宮田が千夏さんのことを好きなんだって。で、僕が千夏さんを見かけたら、彼氏がいるかもしれないって…」
優香は驚いた表情で太郎を見つめた。
「えっ!? そうなの!? でも太郎くんは?」
太郎は慌てふためきながら訂正した。
「い、いや、俺と千夏さんとは、そういう関係じゃないんだ」
優香はからかうように笑う。
「ふーん、そうなんだ。太郎くんったら、まだ恋愛には疎いみたいね」
予鈴が鳴り響き、太郎は慌ててそこから逃げ出すように教室に戻った
つづく
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