12.あたらしい海
君の頬を伝うのが諦めだったとして
髪は伸びてゆくから
変わらないでと言えなくなるよ
暗い場所では色が見えなかったね
ただ君は火をつけた 手に持った花火に
あたらしい海を見たの
言葉を詰まらせて正しさに潜っていく逡巡の中に
懐かしい色に染めた夕凪に逸れた
潮を思い出す時 孤独が孤独でいて
誰にも言えない占いを捨てた時から過ぎていた
行き場のない船を見下ろした 堤防沿いを
赤い灯台がある日々よ 今、港に着いたんだよ
「汚れずにいること」は
「どこにもいないこと」だったよ
それでも通過しなくちゃいけない/
通過しなくちゃ見えないものを
覚えていられたら降る花火を背に
君はどこでも行けるよ
あたらしい海を見たの
胸につかえるような眩しさに
綻んでいる沈黙の中に
果たせない呪いみたいな祈りはもう二度と
似合わない場所で居て欲しい
潮街通りの上
話し方に似た夕景を愛しく思えたなら歩けるよ
離れていくその手が それこそが時間だったんだよ
あたらしい海を見たの
ありふれて些細な相槌に
どこかにいるという肯定の中に
透過した凪いだ海が眩しくて細めた
暗い瞼の中から目を開ける時がきた
また昨日で会えるよ
私が私として
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