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冬の陽

二階に上がる階段の踊り場に窓がある。窓のすぐ前には百日紅があって、今年の剪定では高さを下げなかったので、窓辺が紅葉している。そればかりか階段の白壁がうっすらと桃色に染まっている。
もう何年この家に住んだだろう。百日紅の高さや、陽のあたる強さやタイミング、さまざまな偶然や要因が重なってやっと出会える素敵なひととき。同じ家に住んでいるからと言って毎年出会えるわけではない。

白壁は稀有な一瞬を稀有な一瞬としてうけとり、染まるだけ。「去年は桃色に染めてくれたじゃない」と未来の重ならない偶然や要因をなじることはしない。

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