くつ下ねこのぼうけん
俺はねこ。
ただのねこじゃない。特別なねこだ。
何が特別かというと、俺はくつ下を履く。
他のねこはくつ下を履かないが、俺はくつ下を履く。
それがどういうことかわかるか?俺はかしこいっていうことだ。
くつ下を履くことで外に行ってから洗うのは手だけで良いし、冬になったら暖かい。
そんな俺のぼうけんについて聞かせてやる。ぜひ、語り継いでくれ。
主人との出会い
俺が生まれたのは日本の真ん中。夏はジメジメしていて、冬はめちゃくちゃ雪が降るところだ。
近くには山も海もある。俺の好物のアジもたくさん取れるから住み良い。
俺には主人がいた。名前はひろき。こいつは俺と違って頭が悪い。天気がいい日に散歩をしないし、雨なのに出かけることがある。相当頭が悪い。
ひろきは人間だが、人間の種類で言えば男ってやつだ。性器が付いているかどうかで種類を決めるらしいが、その点では俺と同じだ。
ひろきは頭が悪いが、俺に飯をくれるから、好きだ。くれる飯はそんなに美味くないしバラエティもそんなにないが、このご時世そんなに贅沢も言ってられない。
俺がひろきと出会ったのは、雨の日だった。その日俺は雨の中、とぼとぼ歩いていた。飯を食っていなかったから意識も朦朧していた。その時の俺は産まれたばっかり。外で産まれて捨てられた子猫だったわけだ。
俺はどこを目指すわけでもなく、ただ歩いていた。もしかしたら天国に向かっていたのかもしれない。その時「お前もひとりぼっちか」という声が聞こえた。その声の主は俺を抱き抱えた。抱かれて揺られてるうちに眠ってしまったが、目を覚ましたときにはタオルに巻かれていた。
「起きた起きた」ひろきは俺をタオルで拭きながら言った。
俺は助けられたみたいだった。そのときに食わしてもらったアジはすごく美味かった。
俺は鳴いた。
くつ下
今回はここまで。
次回もお楽しみに。
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