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未完成の三冠王者

全日本プロレス「ドリームパワーシリーズ2024」最終戦、3月30日、大田区総合体育館で三冠ヘビー級選手権が行われ、挑戦者の安齋勇馬が王者である中嶋勝彦をジャーマンスープレックスホールドで破り新王者となり、デビューしてデビューして1年半足らず、24歳10か月と最年少での戴冠となった。

だが肝心の試合内容では中嶋を上回ったものではなく、安齋も最初こそは先手必勝と勢いよく攻めていったが、中嶋のローキックや右腕攻めの前に失速、中嶋ペースで試合が進み、胴絞めスリーパーで完全にグロッキー状態になるなど、安齋が負けてもおかしくなかった。最後は中嶋の一瞬の隙を突いてジャンピングニーからジャーマンスープレックスホールドで3カウントを奪ったが、奪わせてもらったようなものという印象が拭えなかった。

中嶋にしても最初は挑戦者に諏訪魔を希望していたが、安齋が出てきたことに疑問を抱いていた。おそらく中嶋の中に描いているストーリーとは全く違った挑戦者が出てきたからだと思う。試合中でも中嶋は挑戦者に相応しいか、容赦なく安齋を痛めつけた。最後も中嶋の攻め疲れなのかというと、まだまだ中嶋には余力が残っており、安齋も相手の攻めを受け切って勝ったという印象でもなかった。

1990年6月に三沢は鶴田に挑んで初勝利を収めたが、すぐ三冠王座を奪取したわけでなく、2年もかけてやっと王座を奪取した。鶴田に初めて勝ったときは、三沢光晴のプロレスは完成しておらず、2年の間に自分のプロレスを完成させたうえで王者となった。

安齋は自分のプロレスを完成させたのかというと、未完成というか、おそらくだが100%のうち8割が未完成といったところだろう、王者となった安齋の課題は、王者であるうちにどれだけ完成に近づけるかになってくると思う。

三冠ヘビー級王座は諏訪魔、宮原健斗だけなく、ジャンボ鶴田、天龍源一郎、スタン・ハンセン、三沢光晴、川田利明、小橋建太、田上明、武藤敬司、橋本真也などレジェンドが歴代王者に名を連ねている伝統的な王座、安齋に歴史と全日本プロレスという団体の重みを一気に背負うことになった。未完成王者である安齋の試練はこれから始まったばかりだ。

もう一つ気になるのは敗れた中嶋の去就で、世界タッグ王座もSAITO BROTHER(斉藤レイ&斉藤ジュン)が奪取し、世界ジュニアはライジングHAYATO、アジアタッグも田村男児が奪取するなど、次世代がベルトを独占したことで、全日本プロレスの景色もガラリと変わってしまった。

次世代の台頭はフリーでありながらも中嶋が望んでいたことだったが、景色が一気にガラリと変わったことで、中嶋の居場所も一気になくなってしまったような感じがする。次期シリーズである「チャンピオンカーニバル2024」には中嶋の名前が入っていない、果たしてゴジラ-1.0クラスの破壊者はどこへ向かっていくのだろうか

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