毛並みがぼさぼさのレッサーパンダ

動物園にいるレッサーパンダが、毛並みが悪く、本来ならもふもふの尻尾が細いロープの様になっていることがあります。私が動物園でレッサーパンダ をみている時も、偶然居合わせた方が、皮膚病とか、老齢とかを心配していることもあります。
実は、レッサーパンダは、抜け毛の時期(換毛期と呼びます)があります。これは、北米の動物園協会が公開しているレッサーパンダ飼育マニュアルにも「Hair Loss: This is not uncommon in managed red pandas. There is a seasonal molt which hair loss can be quite pronounced, especially in the flanks and the tails. (和訳:脱毛、これはレッサーパンダでは珍しくありません。派手に抜けますが季節性です。脇腹と尻尾は特にハゲます)」と記載されている通り、みすぼらしい状態になっても、しばらくするともふもふに戻ります。換毛期は、概ね3月頃から6月頃に毛が抜けてみすぼらしくなり、7月以降には生えそろい始めて、日本で一番気温が上がる時期にもふもふになります。

では、季節性以外でも毛並みが悪くなることはないのかを調べたところ、レッサーパンダの投薬に関する論文によると、生後4ヶ月未満に限定される感染症による脱毛と、高齢パンダに見られる、甲状腺機能低下による脱毛(症状として左右対象の脱毛となる)及び、腎疾患による毛荒れが症例として挙げられていました。いずれの症例も珍しいものではないそうで、治療方も合わせて掲載されていました。

レッサーパンダの毛は、二重構造になっていて、表面(オーバーコートと呼ばれます)の毛は、雨が体に染み込まないよう、水が流れ落ちる粗めの毛が生えています。オーバーコートの下には断熱性の優れたフェルト状の細かい毛(ダウンコートとかアンダーコートと呼ばれます)で覆われています。また、雪の上でも滑りにくく、冷たさが伝わないように、脚の裏も毛で覆われています。もふもふ尻尾を巻いて温まることもできます。このようにレッサーパンダは寒冷地仕様の衣服を纏っているので、日本の夏はとても辛いと思われます。なので動物園では、ミストシャワーや、木陰、冷房設備を持つ小屋や室内などを飼育しているレッサーパンダ に提供しています。レッサーパンダのドキュメンタリ動画(Cherub of the Mist:霧のケルブ)を見ると、彼らが生息している場所の気候(標高の高い山岳部の低温多湿気候)にとても適した毛皮を持っていることがよく分かります。

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