『新聞記者』を観た
今年の日本アカデミー賞を総ナメした今作の主演・松坂桃李はいろんな人から「よくこの映画に出たね。大丈夫?」と心配されたそうだ。こんなこと10年前なら考えられなかった。たかが現政権に批判的な作品に出演したくらいで俳優生命の心配をされるなんて! しかしこの出来事は今の世の中の空気感をよく表しているとも言える。
新聞やテレビなどのマスメディアも飼い慣らされ大人しくなった昨今、この作品を受賞させたことは日本映画界からの気骨あるメッセージでもある。しかも韓国の女優を最優秀主演女優賞に選ぶなんて「ある界隈」の人たちの神経をさぞかし逆撫でしたことだろう。爽快!
【以降ネタバレあり】
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刺激的な内容が話題になった今作だが、プロットや演出も素晴らしいと思う。官僚の杉原(松坂桃李)と新聞記者の吉岡(シム・ウンギョン)の二人を軸に物語は進んでいくが、組織の腐敗、過去の傷、恩人の自死、父親としての自覚、などと通して杉原と吉岡の人生が丁寧に積み上げられ、絶妙にシンクロしていく。告発へと決意する道程が無理矢理ではなく、「必然として」描かれているように思えた。
ラスト。「ああこれでハッピーエンドかな」と安心してたところにいい意味で裏切りの展開が待っていた。死を匂わせる脅しに「わざわざありがとうございました」という吉岡の返答はなかなか格好よかった。
そして松坂桃李の演技だ。魂を売った前と後では顔が全然違うのだ。「松坂桃李って実はすごい俳優なのでは!」と感嘆した。
まさにリアルタイムの映画だ。今、観るべき映画だ。現政権がつづくうちは今作のテレビ放映は無理だろうな。
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