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いれいす『星降るフェアリーテイル』 考察まとめ



はじめに

こちらの投稿は、6人組歌い手グループ
Irregular Dice (以下”いれいす”とします)の楽曲
『星降るフェアリーテイル』
の考察を綴ったものとなります。

2024年2月に開催が予定されているいれいす日本武道館ライブのリード曲であり、
作詞作曲に歌い手/アーティストのまふまふさんが携わられた特別な楽曲です。

以下に綴ったものは全て「一個人の解釈」に過ぎません。数ある解釈の中の一つとしてお読みいただけますと幸いです。


『星降るフェアリーテイル』考察

◇イントロが創り出す煌びやかな世界

この楽曲は、シンセサイザーを中心に構成されるイントロから始まります。
煌びやかで遊び心のあるサウンドが非常にまふまふさんらしく、丁寧に創り上げられる音楽の世界観に心惹かれます。


◇物語の始まり

オレンジ色の向こうに  バケツ半分かな

眠気を零したくらいにスタート
あの日に君が願った  夢を探しに行くところ

オレンジ色の向こう
「オレンジ色」とは、活動開始当初の初々しさ、エネルギーに満ち溢れた彼らの心を象徴する色ではないでしょうか。
星空や天体がテーマの曲であることから、
オレンジ色=太陽=日の出
⇒活動を開始し迎えた新しい朝を描いている
とも考えられます。

眠気を零したくらいにスタート
当初は無名の歌い手であった6人。
彼らの一番近くにあった何気ない日常、そこから物語が始まったことを表すフレーズであると考えられます。

あの日に君が願った  夢を探しに行くところ
結成当初6人が抱いた夢(武道館の景色)を辿る旅路にあると解釈できます。
ここでの「君」とは、
「過去の6人」を指すものであり、
「画面を隔てた先にいるファン」を指すものでもあるのではないでしょうか。

右も左も見えない闇に  泣いては立ちすくむ
なら僕たちが手を引こう
もう誰もつまずかなくなるように
その願い叶えよう!

右も左も見えない闇に
「闇」という言葉は、この後に登場する「星(光)」と対照的に用いられています。
闇の中にペンライトの光を灯す
6人とともに輝かしい景色を創り出す
ことで暗闇から連れ出そうという、いれいすらしさを感じる前向きなフレーズです。


◇夜空に光る星の正体

それはフェアリーテイル  
空に結わいた天体が幻でも
ネオンの明かりでも月でもない

君の光が  また歩いて行ける道しるべ

空に結わいた天体が幻でも
敢えて「幻」という輪郭のない言葉を使うことで、涙でぼやけた視界を表現しているのではないでしょうか。
たとえ幻だったとしても縋っていたいと願ってしまう程の美しさと、それを求める繊細な心の揺れ
形のないものの輪郭を辿るよう丁寧に描かれる歌詞が、とてもまふまふさんらしいと感じます。

また、結んだでも繋いだでもなく「結わいた」という言葉を選ぶところ。
綻びを一つ一つ縫い合わせていくような細やかさが感じられて、どんな瞬間も足跡を確かめながら積み上げてきた6人を象徴しているようです。

手を振る君と  この暗闇にいっぱいの星座になる
眩しくて両目が霞んでしまう
ひとりぼっちにもなれない
星降る夜の  果てのこと

この暗闇にいっぱいの星座になる
客席に光るペンライトと、その輝きによって創られる景色を星座に喩えたフレーズ。
「いっぱいの」という言葉は、光に満ちた空間と幸福感に満ちた心の両方を表しているように感じます。

「星」が含むもう一つの意味とは
この曲のテーマである「星」という言葉について、もう少し掘り下げて考えていきます。

星は何年も前の光が長い時を経て届くもの
⇒単に今そこに在るものを指すのではなくて、膨大な時間の概念を包含する
⇒ステージからの景色を星座に喩えることで、
「今は離れてしまった人と重ねた時間、未来で出会う可能性を秘めた存在も含めて織り成される景色」であることを意味しているのではないか

私はこのように考察しました。

これは、グループリーダーのないこさんが度々口にされる
「今ここに居てくれる人はもちろん、
過去に僕たちを好きでいてくれた人にも、
未来で出会うかもしれない存在にも、
大きな感謝を届けたい。」
という発言にも結びつけることができます。


◇彼らが手にした「大事なもの」

大事なものが増えると  いつかこんな手から
零れそうな気がしていた
子どもの頃は届いた  小さな隙間があったような

大事なものが増えると  いつかこんな手から
零れそうな気がしていた

一つの心では抱えきれない程の幸せに温もりを感じる一方で、いつかそれが終わりを告げてしまうのではないかという淡い不安感を抱いた心。
あまりに切実で健気で、彼らの歌声に乗せて届けられるとよりその切なさを実感するフレーズです。

子どもの頃は届いた  小さな隙間があったような
””The まふまふさんの作詞””。

歳を重ねるにつれて見落としがちになる存在にも目を向けられて、その小さな煌めきを音楽に落とし込めるまふまふさんの心が美しいと強く感じます。

少し脱線しますが、
まふまふさんのオリジナル曲『水彩銀河のクロニクル』にも
「大人になったら気づけない小さな綻びがあの日の全てだった」というフレーズが登場します。
歌詞の一つ一つにも、彼の音楽性を窺うことができますね。

果てない闇の彼方で  自分さえ見失いそうになる
なら今すぐに照らし出す
もう誰も端っこにいないように
その願い叶えよう!

もう誰も端っこにいないように
出会った人の全てに歌を、言葉を届けようと励む6人らしいフレーズ。
この言葉はきっと、彼ら6人にとって最上級の優しさなのではないでしょうか。


◇闇夜を照らす存在

どんな闇夜も
3・2・1の一瞬で  光になる
最果てのひとりも見逃さない
弧を描いた  一縷の流れる星と

どんな闇夜も  3・2・1の一瞬で  光になる
ここで登場する「闇夜」とは、日常の中で打ち当たる壁や抱える苦悩を表しているのではないでしょうか。
これは聴き手にとってだけでなく、彼ら6人にとっての闇夜でもあると思います。
そんな暗闇も、客席から浴びせられる声援や温かい視線によって一瞬で「光」に変わるのだと。
ファンとの結び付きを大切にする彼ららしいフレーズであると感じます。


◇6つの歌声が紡ぐ「おとぎ噺」

どこまでも遠い  果てしない夢を
この6人と  君で
いつまでも  描くおとぎ噺

いつまでも  描くおとぎ噺
「おとぎ噺」とは、比喩的に「現実離れした空想的な話」という意味を持ちます。(この曲のタイトルに含まれる「フェアリーテイル」も同様。)
何かひとつでも違えていれば、きっと在るはずもなかった今日。
そんな奇跡の一部始終を、「おとぎ噺」という言葉に集約しているのではないでしょうか。

りうらさん→–hotoke–さん→初兎さん
ないこさん→Ifさん→悠佑さん
と順々に紡がれていく6つの歌声が、一歩一歩着実に歩みを進めてきた彼らの軌跡を表しているようです。

この後続くMV中に、いれいす歴代楽曲の歌詞が流れていく演出があります。
それらの歌詞とともに過去を辿ると、数々の歴史が彼らの今を構成しているのだと分かりますね。


◇繰り返される彼らの想い

それはフェアリーテイル  空に結わいた天体が幻でも
ネオンの明かりでも月でもない
君の光が  また歩いて行ける道しるべ

いよいよラスサビ。ここでは、1サビと同じフレーズが噛み締めるように繰り返されています。
演奏も一番の盛り上がりを見せ、心に訴えかけるような歌声が印象的です。

君の光が  また歩いて行ける道しるべ
このフレーズは1サビにも登場しましたが、ここまでの流れを通して聴くと、よりその重みを実感します。
「君の光(応援)こそが、歩みを進める原動力であり道しるべである」と。
曲に込められた強いメッセージを感じる歌詞です。

手を振る君と  ボクら繋いでいっぱいの星座になる
涙で両目が霞んでしまう

涙で両目が霞んでしまう
思わず涙を浮かべてしまう程の美しい景色を前にした彼らの心情を表すフレーズ。
どこまでも素直で真っ直ぐな言葉に心があたたかくなる歌詞です。
MVに登場する6人の瞳には客席のペンライトが輝いており、この演出も涙を誘うポイントですね。


◇星降る夜の果て

ひとりぼっちにはさせない
君と歩ける  この先にある
星降る夜の  果てのこと

君と歩ける  この先にある
星降る夜の  果てのこと
「果て」とは、「物事の終わり」を表す言葉。

星降る夜の果て=彼らが活動に幕を下ろす瞬間
と解釈できます。

ここでの「果て」とは決して悲観的な意味ではなく、
「この先に続く物語の果て、そこに広がる世界を君と一緒に見に行きたい」
そんな、彼らの真っ直ぐな願いと希望が込められたフレーズなのではないでしょうか。

このフレーズの美しさは、
「終わりが来ることを自覚しているところ」
にあると考えます。
終わりを自覚するからこそ、今という時間の重みに気づくことができる。今という瞬間を大切に生きることができる。
そんな儚さも、この楽曲の魅力の一つなのではないでしょうか。


最後に

以上、いれいす『星降るフェアリーテイル』の考察でした。

まふまふさんの紡ぐ繊細な音楽と、個性豊かな6つの歌声の重なり合い。
その美しさに心を揺さぶられる、とても素敵な楽曲でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。
星降る夜の果て、彼らの瞳に映る世界が愛に溢れたものであることを願って。

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