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無題



人として過ごしていたその人は
今もその場所で活動している。
けれどその姿には少し変化が見られる。

人としての生命が失われる前に彼女は
自分自身をそのメインフレームと
融合させる道を選んだ。

今の彼女の生命を維持しているのは
コンピューターシステムと無限とも思える
膨大な情報量を持つ、ネットワーク空間だ。

私は月に何度か彼女に会いに行く。

最近の出来事やたわいもないこと、
今の自分のことをしゃべって
彼女に聞いてもらう。

彼女は昔のように答えてくれるが、
あの頃のような面影はない。

今の彼女は彼女であって彼女ではない。

彼女は今は機械であって、人ではないのだ。

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