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三栄建築設計は、増益なのになぜ営業キャッシュフローがマイナスなのか?

この記事では、株式会社三栄建築設計の2020年8月期について、取り上げていきます。

株式会社三栄建築設計は、分譲住宅の生産・販売を主力事業として、注文住宅の請負、保有物件の賃貸、分譲マンション事業、投資用アパート事業などを行う。「同じ家は、つくらない。」というコーポレートメッセージのもと、分譲住宅であるにもかかわらず、デザイン・設計にこだわった住宅を提供している。

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2019年8月度決算説明会資料

倒産した住宅会社から「注文住宅事業」を譲渡

東京都港区南青山を拠点に、富裕層(高額帯)向け注文住宅会社を手掛けていた株式会社ウィズ・ワンが、2019年1月30日に民事再生法の適用を受けたため、2019年4月10日付で、建築工事事業(注文住宅事業)及び建物リフォーム工事事業の事業譲渡実行に至っています。

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前年と比べ、増収増益だが、請負事業は・・・

売上高、営業利益ともに、前年同期比が120%を超えており、高い成長率です。

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ただし、事業別に見ていくと、「不動産請負事業(注文住宅等)」は、売上高は前年を上回ってるものの、売上総利益(粗利益)と営業利益が前年を下回っています。

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ウィズ・ワンから注文住宅やリフォームなどの請負事業を譲受したことで、自社の注文住宅事業の受注拡大を図り、更なるブランド力の向上を見込んでいるのだと思われますが、事業譲受概要の「譲受け資産・負債の項目」を見ると、仕掛りの案件なども引き継いでいるため、もしかすると利益を削ってでも対応している部分があるのかもしれません。

(2)譲受け資産・負債の項目
本事業に関わる未成工事支出金及び住宅展示場に関わる付帯設備及び建物等の資産等。なお、顧客からの前受債務等(ただし顧客との間で契約上の地位承継の同意が取れたもの)、アフターメンテナンス以外の債務は承継しない予定です。


1件当たりの請負価格は約◯◯◯◯万円↑、
粗利益額も約◯◯◯万円↑

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前期454戸あった請負・注文住宅件数は、昨期より業者からの請負受注から、エンド顧客からの注文住宅受注へシフトしたことから、請負住宅の引渡件数は大きく減少しています。

ですが、件数が減り、売上高が高くなっているということは、1件当たりの価格は上がっていることになります。

1件当たりの請負価格
18年:17,307÷454=約3812万円
19年:17,726÷327=約5421万円

1件当たりの粗利益額
18年:1,819÷454=約400万円
19年:1,714÷327=約524万円

1件当たりで比べると、請負価格は約1600万円上がり、粗利益額は約124万円上がっています。

仮に請負受注が19年と同じ年間327件だとしたら、粗利益額は約17億円。18年の454件の約18億円と比べて、件数が100件以上減っても、1件当たりの粗利益額が大きい分、差は小さくなります。逆に、今まで弱かったエンド顧客向けで件数を伸ばせるなら、上回る可能性も秘めています。

ちなみに、分譲の方は、

1件当たりの分譲価格
18年:68,354÷1,279=約5344万円
19年:79,227÷1,600=約4952万円

1件当たりの粗利益額
18年:10,664÷454=約235万円
19年:11,422÷327=約349万円

となっています。

単純に考えると、注文住宅の方は元々業者からの請負受注だったので、安くせざるを得なかったのでしょうか。富裕層向けの注文住宅事業の譲受をキッカケに、エンド顧客にシフトし、5000万円クラスの価格帯を狙えることになったということになります。


増益でも営業キャッシュフローがマイナスな理由

冒頭で増収増益と取り上げましたが、キャッシュフローを見ると、営業キャッシュフローはマイナスです。

額の差はありますが、2018年も2019年も同じパターンになっています。

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営業CF:-
投資CF:-
財務CF:+

営業活動でキャッシュフローを生み出せていない中で、投資も行っているため、借入金により投資資金を賄っている状態です。

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