4 心術下 53

 心の器物狭き人は、わが智一つを用いて、萬の事に通ずと思い、人の智を用いず。
古語に、自ら用いれば、小なりといえり。
わが智一つ恃みて、人の智を用いざれば、世間の萬事、わが一人にて知りがたし。
知らざる事、多ければ、小智と云うべし。
心の器物の廣き人は、わが一人の智を用いず、廣く人に問いて聞き、其の良きを取り用いる故、諸人の知を合わせて、わが智とす。
是れ、大知とすべし。
凡そ、人は、各々、得たる所あり、慣れたる事あり。
十人には、十人の知あり。
百人には、百人の知あり。
各々、其の人の長所を取り、用いるべし。
ようするに、才ある人も、天下・古今、もろもろの事、われ一人の知にては、知り難し。
一人の知は限りあり。
衆人の知は、極まり無しと云り。

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