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養生訓 巻第八 育幼


 小児をそだつるは、三分の飢と寒とを存すべしと、古人いえり。
いう意は、小児はすこし、うやし、少ひやすべしとなり。
小児にかぎらず、大人も亦かくの如くすべし。
小児に、味よき食に、あかしめ、きぬ多くきせて、あたため過すは、大にわざわいとなる。
俗人と婦人は、理にくらくして、子を養う道をしらず、只、あくまでうまき物をくはせ、きぬあつくきせ、あたため過すゆえ、必病多く、或は命短し。
貧家の子は、衣食ともしき故、無病にしていのち長し。


 小児は、脾胃もろくしてせばし。
故に食にやぶられやすし。
つねに病人をたもつごとくにすべし。
小児は、陽さかんにして熱多し。
つねに熱をおそれて、熱をもらすべし。
あたため過せば筋骨よはし。
天氣よき時は、外に出して、風日にあたらしむべし。
此の如すれば、身堅固にして病なし。
はだにきする服は、ふるき布を用ゆ。
新しききぬ、新しきわたは、あたため過してあしし。
用ゆべからず。


 小児を保養する法は、香月牛山医士のあらはせる育草に詳に記せり。
考みるべし。
故に今ここに畧せり。

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