内省を震わせる恐怖の問いかけ「最近どう?」を考える
こんにちは、井戸勇輝です。
前回、内省の人は雑談が苦手って話をしましたが、今日はそのテーマに深く向き合います。
どうしても内省の人は意識や思考が自分の内側にいきやすいので、外の世界に興味持つってことが難しいのと、思考が重いので瞬発的な回答ができず、雑談みたいなテンポが求められる会話スタイルについていけないという足かせもあると思ってます。
今日はそんな内省が恐怖で震え散らしてしまう「悪魔の質問」について取り上げていきます。
すべての雑談のTOPオブTOPに君臨する恐怖の言葉、それは
「最近どう?」
この質問に怯えながら内省人間は過ごしています。内省の方分かりますよね?あと慎重さ上位の人も共感できるはず。
僕は前職で名古屋に本社がある会社に勤めてまして、名古屋から東京本社への出張が一ヶ月に1,2回あったんですよ。そこでのエレベーター乗る時間がなによりも憂鬱でしたね。東京本社出張のときはビルの8階か10階に出勤するので、ぜったいエレベーター乗らないといけなかったんですけど、社員数百人いる会社で、エレベーター2機しかなかったので、だいたい誰かと相乗りすることになるじゃないですか。
普段僕が名古屋にいるから、東京本社にずっといる人からしたら僕がくるの珍しい感覚なのか、エレベーターで会ったらたまに「おっ珍しいじゃん。最近どう?」って聞いてくる人いるんですよ。先輩だけじゃなくて、後輩からも「最近どうですか?」って聞いてきよるんですよ。エレベーターで相乗りしたら聞かれるあの質問、無責任すぎません?
何度も言うように、内省は考えすぎるんですよ。問いがある限り、どこまでも深く向き合わなきゃって使命に駆られてるんですよ。
で、最近どうって、分解すると2つの側面から回答しなきゃいけなくて、余計にこの問題を複雑化させているんですよ。
①最近っていつからいつまで?
最近どうの最近って、いつからいつまでですか?この論争に決着つけるためにも、明確に定義してウィキペディア乗せといてもらいたいです。ちなみに最近という言葉をネットで調べたら「現在に一番近い過去」って記載されてて全く参考にならないんですよね。
昨日は近すぎるし特筆すべき出来事が起こってないかもしれないですよね。じゃあレンジを広く取って過去3ヶ月?いやいや、3か月前にあった記憶を一瞬で取り出せるほど内省の思考って浅くはないのよ。じゃあここ2週間くらいかな?あ、でもちょうど1ヶ月半くらい前に大きめのプレゼン終えたところだから、その話しよかな?でも1ヶ月半て最近か・・・?
ってな感じで、最近っていつ?問題に翻弄されて頭の中グルングルンなってるんですよ。
②「どう?」って何?
でこの問題が根深いのは、内省が最近っていつ問題に向き合ってると同時に、さらなる別の問題が併発してるっていうところなんですよ。みなさん、「どう」って何ですか?何を答えればいいの?やめてくれよ。内省は1つのことを深く考えてしまうのに、同じ規模のややこしい問題投入してくなよ。って内心思ってます。
どうってなにが聞きたいの?どのカテゴリの話したらいいんやろ?仕事のこと?プライベート?いやエレベーターが密室とは言え、誰が聞いてるかわからんから、社内の人の話とかできひんし、仕事の話かな?でもたまにしか会わへんこの人に自分の仕事の話しても、共通認識や前提が違うから理解・共感しきれないだろうし、どのレベルの話したらええんや?インパクトがあるのは1ヶ月半前のプレゼンの話やけど、その結果だけ話してもインパクトは伝わらへんから、前提から話しておきたいんやけど、エレベーターあと10秒くらいでドア開きそうやし、そんな時間ないやん。あ、そや。そろそろ会社辞めようと思ってるからその話しよかな?いやあかんあかん!こんなたまにしか会わへん、そこまで信頼してるわけじゃない先輩にそんな情報漏らしたら、どう漏れ伝わるか分かったもんじゃないやん。止めとこ。
・・・みたいなことを一瞬で脳内反芻しまくった結果、限られた時間内で最近に対してもどうに対しても最適解を導き出すことができず、エレベーターのドア開く直前に引きつった笑顔で「ぼ、ぼちぼちっす・・・」ってなんの生産性も情報量もない一言を漏らしてしまうんです。
そんで当然のように微妙な空気になって、先輩が「お、おう、ほなまた!ま、また飲み行こーぜ」みたいに気を使わせてその場を立ち去るまでがデフォルトです。その後内心「こいつコミュ障やなって思われたんやろなー」とか内省・反省しながら、自己嫌悪につながるってことが多々ありました。
相手からしたらそんな深い意味はなくて、「よっ!元気?」くらいの軽いノリの質問というか挨拶なんでしょうがね…。困りますよね、最近どう。この根深い問いに対する最適解というか正解あったら、誰か教えてください。
やっぱり内省は会話は“目的があって行うもの”だと考えてるんですよ。目的のない雑談を続けることは苦手で、生産的な会話だけをしていたいんです。だから「最近どう?」という質問をされたときも単なる雑談と脳が認識せずに、なるだけ生産的な会話をしようと考えます。
じゃあ、かといってエレベーター相乗りした人が目的意識むき出しで「最近の1ヶ月で1番嬉しかったこと教えて?」とかいきなり聞かれても困るんですよね。目的がちゃんとある問いに対しても、しっかり深く思考してから回答したいので、問いに対しては好意的なんですが、今度は短時間で納得するレベルの、質の回答が出せなかったという自己嫌悪に陥る可能性があるので、急に目的がある問いを投げかけて即回答を求めるのも止めて欲しいもんですよね。
「How are you?」の功罪
この最近どう問題と似た話しで、留学中に経験したエピソードなんですけど、僕2005年に、カナダのトロントに留学してたことがあるんです。その時語学学校に通ってたんですけど、何が憂鬱だったって、毎朝の挨拶なんですよ。
英語圏の人って例外なく「How Are You?」って聞いてきますよね?・・・ただの挨拶なんですよねHow are youって。なんで、正解は「I'm fine, thank you!And you?」なんですよ。直訳すると、私は元気です。あなたは?って意味で、一応最後質問までセットになってるんですけど、別にお互い質問し合ってる感覚はなくて、日本なら「おはようございます」「おはようございます」ってくらいの感覚なんですよね。
でも、おそらく20年前から内省だったんでしょうね。考えすぎちゃうんですよ。How Are You?に毎回真剣に向き合っちゃうんですよ。
「How Are You?って、僕の今日の機嫌を聞いてきてはるんやな。今日はどんな感じやろ?体調は問題ないけど、課題の文法テスト全然わからんかったから今日の1限目の授業憂鬱やねんな。。あ、でも今日の昼から前から可愛いと思ってた別のクラスの女の子含めた数人でダウンタウンに遊びに行くから、それに関してはちょっとテンションあがるなー。まあ課題のこともあるけど、トータルでは問題ないでしょう、I'm fine, thank you!And you?」
・・・
これくらい一瞬で頭回転させて考えて、毎回結論出してI'm fineって言ってたんですよ。だから朝クラス入ったら複数人からHow Are You?言われるから、「朝から質問攻めすなよ」って思ってました。脳のリソース食うやろ!どんだけ朝から疲れさせてきよるねん!How Are You?のせいで、どんどんファインから遠ざかっていくわ!バリに辟易してましたね。How Are You?文化には。
一度本当に気分がすぐれない時があって、クラスメイトからの何気ないHow Are You?に対して「So so」って言ったんですよ。理由までは覚えてないですけど、前の晩お酒の失敗があったりとか、体調がすぐれなかったり、漠然とした不安があって、軽く落ちてるときだったんでしょうね。Sosoって向こうでは「普通・そこそこ」って意味なんで、まあアイムファインよりは適切だろうって思って「んー・・・Soso」って言ったんですよ。そしたら「・・・お前、大丈夫か?なんかあったんか?どうした?話し聞こか?え、一旦帰るか?」ってめっっっっっちゃ心配されたんですよ。どれくらい心配されたかっていうと、2006年のM-1決勝でチュートリアルの福田さんが自転車のチリンチリン盗まれたのを心配する徳井さんバリに「お前大丈夫か?え、一旦帰るか?」ってめっちゃ心配されて。
英語圏ではあんまりHow Are You?の後にSo soって使わないらしいんです。気分が普通のときは、I'm fineじゃなくてI'm OKとか、I'm alrightがよく使われる返しっぽいんですけど、問いに真正面から向き合いすぎてSo soって答えて必要以上に心配されて引かれるっていう。
とにかく、最近どう?もHow Are You?も、内省にとっては一大事なんです。問いが生まれた時点で答えを探しに思考の海へ潜ってしまうんだから。そしてそこからなかなか上がってこれないのに、挨拶だから早く返事しなきゃって思ってテンパってしまうんだから。
それではまた。
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