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#015「相互依存から自立へ」山王戦で覚醒した湘北メンバーたちの上位資質から考える消去法の極意とは③自立編

さて、『スラムダンク×ストレングスファインダー』のnoteを前回・前々回と書き連ねてきたが、今回でラストだ。後半戦開始とともに、伝家の宝刀・ゾーンプレスをしかけてきた山王。堂本監督が「3分で試合にカタをつける」と主張するほど、その威力はすさまじいもので、宮城・三井・流川の3人でボール運びに徹するも、後半4分20秒が経過した時点で20点差・・・。

開始4分20秒で20点差。絶望の淵に立たされた湘北はどうなる?
  • ゾーンプレスを突破できない宮城

  • リバウンドが取れず交代を命じられてしまった桜木

  • 河田に攻守ともども完全に封じられてしまい自信をなくしていく赤木

  • 一之倉のスッポンディフェンスで完全にスタミナが0になった三井

  • 集中力が覚醒した沢北の完璧な攻めと守りに抑え込まれた流川

湘北の中で何かが狂い始める。ここからどうやって逆転勝利できたのか?
それについて、「相互依存を実感した個人の自立と覚醒」というテーマで締めくくろうと思う。

1.相互依存と自立

今回思考の立脚点となったのは、YouTubeのTEDx Talksで東京大学先端科学技術研究センターの熊谷准教授が語られていた「依存の価値を再考する」という動画内のある言葉である。

自分の無力さを自覚し、依存の必然性に気づいたところから回復が始まる。

TEDx Talks「依存の価値を再考する | 晋一郎 熊谷 | TEDxHitotsubashiU」

ここで言う回復とは、自分の役割や能力に確信を持って前に進む「自立」である。熊谷准教授は「本当の人間らしい自立とは、決して依存しないこととイコールではない」と語る。裏を返せば「依存先が多い人の方が自立している」ということになる。この問題提起には目からウロコだった。

TEDx Talks「依存の価値を再考する | 晋一郎 熊谷 | TEDxHitotsubashiU」より引用

世の中には、自分だけで乗り越えられないことはたくさんある。それを知ると、自分は無力だと実感する。相互依存の必要性を認めること。そこから自立への第一歩は始まる。
湘北のメンバーたちも最強山王を前に、各々が無力さを実感するとともに、メンバーへの相互依存を支えに回復→再起→自立したからこそ、勝利を収められた。その一部始終を解説してみようと思う。

2.相互依存がもたらした自立と、それにより覚醒した資質

相互依存については、#014で書いた通り、ストレングスファインダーの分布が物語ってくれている。「自分に足りないものは他の誰かが補ってくれている」という安心感が相互依存であり、それがあるから”真の自立”へと向かっていけるわけだ。

湘北バスケ部ストレングスファインダー分布と依存先について

山王戦で己の無力さに直面した湘北メンバーたちが再起し自立していく起点となったのは、安西先生の戦略的思考力である。タイムアウトを取り、分析思考+戦略性で導き出された最初の指示は「切り込み隊長・宮城リョータ1人で、ゾーンプレスを突破する」であった。

1)宮城の活発性&親密性が覚醒

後半開始早々、山王伝家の宝刀ゾーンプレスが発動。ボール運びをするはずの宮城が何度も深津・沢北のダブルチームに遭っていた。湘北バスケの起点であり、ポジティブエナジャイザーであるはずの自分が、ボールを中央まで運べない。仮にパスが通ったとしても、赤木は河田を前に萎縮している。三井は前半に一之倉のスッポンディフェンスを喰らいスタミナ0。エース流川は沢北の超高校級のディフェンスに苦戦し本領発揮できてない。唯一運動量の落ちていない桜木も単独でのオフェンス力はいまいち。宮城自身も、自分より数十センチも上背の高い山王選手に阻まれ、頭パンク状態であった。良さであるポジティブさもまったく発揮できずにいた。

宮城の無力さ

タイムアウトを取った安西先生は、そんな八方塞がりの宮城に「1人でゾーンプレスを突破する」よう指示をする。この難局において、神奈川No.1センター赤木でも、スーパースターの三井・流川でも、規格外の身体能力を持つ桜木でもなく、全国的にはほとんど名も知られていない168cmの小さなポイントガード宮城に、切り込み隊長としてすべてを託したのである。これにより宮城の活発性が刺激されることとなる。
そんな大役に重圧を感じていた宮城の背後から彩子は声をかけると、おもむろに「手ェ出して」と切り出す。そしてリョータの手のひらに「No.1ガード」というメッセージを書きこんだ。その文字を見た宮城はいつもの冷静さと自信を取り戻す。その後見事、山王のゾーンプレスを突き崩すことに成功するのだ。親密性特有の、親しい人との信頼関係が潜在能力を開花させた。

宮城の自立

その後も山王は幾度となくゾーンプレスを仕掛けるが、覚醒した宮城はそれをことごとく突破していく。その背景には「自分がボールを前方にさえ運べれば、後は仲間がなんとかしてくれる」という相互依存の関係性があるからこそ、俊足ドリブルという「やるべきこと」に一点集中でき、自立に至ったのだろう。

2)桜木の自我&着想が覚醒

前半は奇襲アリウープの成功や、河田弟との力勝負に勝ったりと見せ場があった桜木だが、後半出だしは精細を欠く。マッチアップしている野辺(ポール)からリバウンドをまったく取らせてもらえてなかったのだ。自らのことを天才と称し根拠のない自己確信だけで上手くやれていた桜木だったが、山王の圧倒的実力を前に、成すすべをなくしていた。新たな作戦立案のため一時的にベンチに下げられることになるも、納得できず怒りに震えることとなる。

桜木の無力さ

安西先生はベンチに下がった桜木へ逆転するためのプランを話しはじめる。プランの内容は単純明快で、桜木のリバウンド力に依存することでチームに強い連携を取り戻させるというものだった。先ほどまでの怒りとは打って変わり、初めて誰かに大役をまかされ、自我を刺激された桜木のモチベーションはマックスになる。
安西先生の期待どおり、元々の身体能力の高さに加え、着想フルスロットルの奇策も駆使してリバウンドを量産化し、マッチアップ相手の野辺を叩きのめしていく。

桜木の自立

自分がリバウンドさえ取れれば、宮城の絶妙なパス、赤木のスイッチ、三井の3ポイントが生まれる好循環につながるという相互依存関係が見えているからこそ、オフェンスリバウンドを取るという「やるべきこと」に一点集中でき、桜木も自立していく。

3)赤木の目標志向&責任感が覚醒

キャプテン赤木は、人一倍責任感の強い男だ。問題児ばかりの集団が伸び伸びとプレーできていたのも、赤木がすべてを受け止めていたからこその存在が大きい。反面、赤木は1人ですべてを抱え込む性格でもある。「山王戦にかつためには、自分が全国No.1センターの河田に勝って、ゴールをたくさん決めることだ!」その責任感から、こんな思い込みを持っていたことだろう。だが、住む世界が違う河田を前に手も足も出ず、自信を喪失し、心が折れかけていた。

赤木の無力さ

そこに魚住が現れ、「華麗な技を持つ河田は鯛。お前(赤木)は鰈だ。泥にまみれろよ」とメッセージを残して立ち去る。VS湘北戦の魚住も、赤木には勝てなかったが、自分が刺身のツマとなってチームを勝たせるために泥臭く戦った。同じ苦しみを味わった魚住だからこそ言えるセリフであり、赤木もそのメッセージを受け取り覚醒する。「No.1センターの称号はお前のモンでいいぜ。でもな、全国制覇は譲れんのだ・・・!!」河田との勝負には負けるかもしれないが、「全国制覇」という高く掲げた目標志向を成就するために”体を張る”ことで、チームを勝たせる責任感を全うするようになる。三井に3ポイントを打たせるため、赤木がスクリーンをかけて、宮城がその隙に三井にパスを出せる好循環を作り出していったのだ。

赤木の自立

三井の3ポイントや桜木のリバウンドなど、「ウチには主役になれるやつがたくさんいる」という相互依存が認識できたからこそ、スクリーンやスイッチといった「やるべきこと」に一点集中でき、赤木も自立を果たした。

4)三井の最上志向&信念が覚醒

前半の一之倉のディフェンスにより、スタミナを奪い取られてしまった三井。後半、マッチアップの相手がオフェンスが得意な松本に代わるも、動きについていけずバテバテなため「体力ねえなあオレは・・・」と試合中にも関わらず原点思考的に過去を回顧し始める。中学の時は自他ともに認めるスーパースターだった三井。ブランクを経て復活したものの、自己評価では当時のようなキレはなく、完全に”アイデンティティ迷子”になっていった。

三井の無力さ

ところが三井はここから、怒涛の粘りを見せる。自分のために赤木がスクリーンをかけてくれ、その一瞬を見逃さず宮城がパスをくれるはず、シュートが落ちても桜木がリバウンドを取ってくれるはずという信頼が、限界を迎えているはずの三井を覚醒させた。自分の唯一無二の武器である3ポイントシュートという強みにフォーカスするという最上志向っぷりで、25点もの得点を1人で叩き出す。また、スーパースター三井という失ったアイデンティティの代わりに、昔安西先生にかけてもらった「あきらめたらそこで試合終了ですよ」という言葉を大切にする信念が、「あきらめの悪い男三井」という新たなアイデンティティを誕生させた。

三井の自立

シュートに徹するしかない自分のために、スクリーン、パス、リバウンドをしてくれる心強い味方への相互依存を赤ん坊のように実感できたことで、3ポイントシュートの量産という「やるべきこと」が目の前に現れ、三井は限界を何度も超えて蘇り、自立を果たす。

5)流川の内省&競争性が覚醒

赤木が河田に完全に抑え込まれていたころ、流川も山王のエース沢北に完全に力の差を見せつけられていた。1on1を挑むもブロックにあい、逆にカウンターで鮮やかなシュートを決められる。相手のブロックをかわすアメリカ仕込みのフローターシュートを目の前で見せつけられる。そんな超高校級の実力を持つ沢北の無双により、残り時間5分で再び19点差まで点差は拡大してしまう。沢北が先に覚醒したことにより、スーパールーキーだった流川がこんなにも鮮やかに負かされてしまう姿に、湘北メンバーや、応援席にも激震が走る。自我を全面に出したワンマンプレーが脆くも崩れ去ろうとしていた。

流川の無力さ

だが流川は、沢北という選手が本物だったことを知り、不敵に笑みを浮かべる。壁が高ければ高いほど、自分に成長をもたらすと考えていたのだろう。試合中ながら、仙道との練習時に受けた言葉を内省し、徐々に覚醒していく。常に自分でシュートを行う流川が、アイコンタクトによるノールックパスを出した。「あの天上天下唯我独尊男がパスを!!」神奈川中のバスケ関係者が戦慄する。一対一至上主義という自我を脱ぎ捨て、パスを取り入れて味方を生かす選択肢も取り入れるというプレースタイルへ変革を遂げた。すべては「勝つため」に。元々あった競争性を高い次元で覚醒させた流川に、沢北も翻弄されていく。流川は沢北を抜き去り、フローターシュートをその場で盗み決めたことで、19点あった点差は8点まで縮まっていく。

流川の自立

「早く行きたければ、ひとりで行け。遠くまで行きたければ、みんなで行け。」アフリカのことわざを体現したかのような流川の覚醒。強者に勝つための相互依存の大切さを実感したからこそ、1on1、パス、3ポイントなど数々の技を組み合わせた独自スタイルの実行という「やるべきこと」が明確
になり、流川は自立していく。

  • 誰よりも低く速いドリブルでコートを駆け抜け、絶対にもう一度流れがくると信じてチームを鼓舞するガードの7番

  • マッチアップした河田には敵わなくとも、チームの勝利を信じ、泥臭く賢明に体を張って味方を生かすセンターの4番

  • 誰が見ても体力の限界を超えておりフラフラな状態にもかかわらず、決してあきらめず、勝利に向かって信じがたいほどに3Pを決めてくるシューターの14番

  • エース沢北に圧倒されても、決して屈せずに何度も立ち向かい、底なしの実力と勝利への強い意志を見せつけた1年生エースの11番

  • そして、破天荒な行動で会場を騒がせつつも、誰よりも強いボールへの執着心とガッツで、リバウンドとルーズボールに飛び込む赤い髪の10番

何度突き放しても這い上がってくる湘北というチームに観客も心を突き動かされ、結果湘北は死闘の末、最強山王に勝利を収めることとなるーーー

3.人生は消去法

1)自立に向けた選択と集中

40万部のベストセラー「スラムダンク勝利学」の著者である辻秀一さんは、
自立性において大切なことを「自分のパフォーマンスに対する責任」と語られている。

山王戦において、湘北メンバーそれぞれが互いへの信頼と相互依存を実感できたからこそ、「自分のパフォーマンスに対する責任」が芽生え、自立していったと言えるだろう。

個人の責任を果たして自立するには、「自分はこれだ!」と思えるものに確信を持つことがなにより大切だと考える。人間は1日24時間という平等な時間配分の中で生きている。能力の伸長に、時間というリソースを有効配分して成長をしてれば理想だ。だがすべての面において100%能力を解放し、万能になるというのは無理だ。選択と集中を経て、なにかに特化していく必要がある。
多くの人は「どの分野にリソースを配分すべきか」であったり、「何に特化して能力として開花させていくべきか」に迷ってモヤモヤすることだろう。人間は合理的な生き物でもある。「こっちに進むことで、時間やお金を無駄にしたくない」という思考が働くため、行動する前にリスクや可能性を十分検討し、確証が得られないと進めないものだ。ただ、現代社会には情報が多すぎる。頭で考えて正解を選ぶには、あまりにも人間の脳は情報量に対して未熟過ぎる。選択と集中ができず、また今日も「自分はこれだ!」にたどり着けない。

2)ストレングスファインダーで選択と集中を実現

ストレングスファインダーは選択と集中を効率的に実現させてくれるツールだ。上位資質に着目し、自分に合った才能に時間とお金を集中投下し、強みに発展させて磨けば良い。下位資質に使う時間もお金も必要ない。そうするうちに、「自分はこれだ!」に巡り会える。
湘北のメンバーも、最終的に上位資質にフォーカスをし、個々の能力を覚醒させることで、最強山王を敗れるくらいの自立性を手に入れた。(僕の空想だが)

人生は消去法で良くなっていく。自分のCan'tでもある下位資質をあきらめ、「これじゃない」ものを一つずつ消していくことで、自然と上位資質に目が向く。これじゃないを体験し続けると、自分の人生においてやらなくてもいいDon'tが明確になることで、選択肢がしぼられていく。最終的に「自分にはこれしかない!」と思える確信に出会える。確信が覚醒に変わる。覚醒した個人同士が相互依存し合うことで、真の自立へと変貌していく。

今回スラムダンクを勝手にストレングス分析して見えた、相互依存と自立についての記事は以上だ。
改めて思ったのは

「スラムダンクありがとう!最高!」という感謝と感動。

奇しくもスラムダンクの聖地、湘南でワーケーションしている期間中にこの記事を書けたことを嬉しく思う。
新装版2巻の表紙にもなっている聖地の写真を最後にご覧ください。

それではまた!

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