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SCUBA DIVING の呼吸法って?その②

前回につづきSCUBAダイビングスキルの「呼吸法」について考えてみます。

ここからは、経験的な解説です。

言葉の表現で間違いやすい問題点。

◇呼吸のトリミングって?
 トリミングの和訳は?「切り取る、取り除く」やその他では「調整、整理」といった解釈になります。←う~ん、ますます解り辛い。

 このようにダイビングで使われるカタカナ用語は、腑に落ちない用語がいくつかあります。日本で、最も浸透してないダイビングカタカナ用語が「バディダイビング」だと思っていますが、トリミングもなんだか意味が「モヤッ」とします。さて、呼吸のトリミングでイントラが「空気を吸うと浮き上がり、空気を吐くと沈む」といった表現でトリミングを説明しますが、これも「当たらずとも遠からず」ではないかと思っています。解釈によっては水中で呼吸は吸うと浮き上がり吐くと沈むの繰返しで、スクーバ呼吸は常に浮き沈みするものだと解釈してしまう人もいます。問題はトリミングの解釈を誤読していると言えるのではないでしょうか。

 誤読としての問題はトリミングを和訳として解釈していないことにあるのではないでしょうか?そしてトリミングの和語を「止めるや調整」に置き換えるとトリミングが解りやすくなるのではないでしょうか。つまり「吸うを止めると浮き上がる。吐くを止めると沈む」や「吸い気味にすると浮き。吐き気味にすると沈む」が呼吸の調整「止める」はやってはいけない呼吸です。

余談になりますが、呼吸のトリミングも何故か昔のまだBC(浮力調整装置)が無かったころのスキルが見え隠れしているのかも知れません。

◇「ゆっくり深く吸って、ゆっくり長く吐く」の誤解
 この言葉の誤解を招く理由はスクーバ(SCUBA)器材である呼吸装置(レギュレーター)の歴史的精度変化を考慮していないのではないかと思うのです。レギュレーター開発創成期の場合は現在の高精度な器機に比べて完成度は低いものでした。そのために息苦しくない呼吸対応として、このような呼吸表現が使われていたと考えられます。つまり、現在の器材よりも創成期の器機は吸い辛い代物だったと云うことです。端的に云えば昔の教え方をそのまま変化(アップデート)なく継承していることではないでしょうか。

◇「習うより、慣れろ」と云う教えの誤解。
 先述したとおり、慣れるだけではスクーバ呼吸の完成型には近づけません。手本となる完成型を理解して、それと比較して何が自分の呼吸に邪魔をしているのかを考えて、何を改善していかなければ完成型に近づけないのかを理解していかなければ完成型への道筋は見えてきません。

◇次に理解すべきは「呼吸のメカニズム」を知ることです。

 まずスクーバ呼吸は陸上の呼吸とは少し違うことを理解しなければなりません。陸上の通常呼吸は「陰圧呼吸」です。陰圧呼吸とは、横隔膜の収縮による呼吸で、胸腔内の圧が陰圧になれば吸う動作になり、陽圧になれば吐く動作になります。しかしスクーバ呼吸の場合、このメカニズムが少し変わるのではないかと私は思っています。レギュレーターから入る空気は圧縮された空気「9気圧+環境圧(水深10mあたり1気圧増)」で陽圧に近く、陸上の通常呼吸(陰圧呼吸)とは少し違うということになるのではないでしょうか。医療で使うレスピレーターまではいかなくとも通常呼吸メカニズムで考えるのも少し違う気がしています。要するに陸上の呼吸とは少し違うということです。つまりオーバーに言えば深呼吸のような呼吸をしなくても肺に十分な空気が吸えると考えられる訳です。


★補足

 SCUBA呼吸の場合は呼気時に腹式呼吸を意識して、しっかり吐くことが重要です。SCUBA呼吸の場合、意識して吐けば反作用として吸気も息苦しくなく出来ると思います。私は呼吸を説明するときに「呼吸という字は呼が先で吸が後」で、呼吸と書きます。つまり呼気が重要です。と説明します。

 ◇呼吸のメカニズムを知る
 まず、呼吸には2つ方法があります。一つは胸式呼吸、もう一つは腹式呼吸ですがこの二つにはそれぞれ違いがあります。
 
 胸式呼吸の特徴は交感神経(自律神経)を刺激することで心臓の活動を活発にします。つまり激しいスポーツをする時は胸式呼吸が運動機能を高めます。もう少し説明すると胸式呼吸は基本的に無意識で行われている呼吸になり、自律神経である交感神経の影響を受けているために、胸式呼吸を行なっていると交感神経が刺激されてます。交感神経が刺激されるとアドレナリンが分泌されます。そして、アドレナリンが分泌されることで血管が収縮することによって心臓が血液を送り出す圧力が高まるため、血圧が上り心拍数が上がっていきます。
 
 腹式呼吸の特徴は副交感神経(自律神経)が刺激されることで心臓にかかる負担を軽減して、ストレスなどによって起きる心身の状態を緩和する働きをします。もう少し説明すると腹式呼吸による呼吸法を行なうと、お腹を動かすことで胸式呼吸よりも横隔膜を大きく動かすことになり、その横隔膜の周期的な動きが副交感神経を刺激してセロトニンが分泌されます。セロトニンが分泌されると、血管が拡張して血流が良くなることによって血圧が下がっていき、その結果心臓にかかる負担は減っていくために心拍数や脈拍も下がっていきます。※腹式呼吸の方がスクーバ呼吸には適していて、水中で発生するストレス緩和にも良い影響を与えてくれます。

 この様にSCUBA呼吸はダイバーに色々な影響をもたらします。
SCUBA呼吸がスクーバダイビングスキルの始まりで、全てのダイビングスキルに大きな影響を与えます。SCUBA呼吸の完成型が中性浮力・姿勢・トリムなど全てのスキル上達に深く結びついているのではないでしょうか。

まとめ
スクーバ呼吸の完成型は「直ぐには出来ないスキル」と理解して楽しみながら習得すればダイビングの楽しさが広がる。ただし、呼吸には初心者編・中級者編・熟練者編と段階的に完成型を辿ることが安全です。

◯初心者は吸気よりも呼気を意識して自然な呼吸で、息苦しくない自分に合った腹式呼吸のリズム身体感覚で覚える。くわえて、浮き沈みの少ない呼吸トリミングを目安にする。←呼吸のトリミングを誤解させない。

◯呼吸と浮き沈みの関係は浮力補助装置(BC)の調整にも起因するので、その違いをしっかり感覚として身につける。

◯初心者には、言葉で詳しく説明するよりもプールや流れなど環境に影響を受けない場所を選んでゆっくりとした時間で理解できるように教える事が大切です。くわえて、呼吸を教える場合の注意点は、慌てさせない、怖がらせない、言葉で複雑にさせない。常にリラックスさせて練習を繰り返し身体感覚を覚えてもらう環境づくりが大切です。

 最後に段階的な呼吸の上達を目指す表現として初級者が目指す状態を中性浮力(Neutral buoyancy)にして、中級者が目指す状態を無重力(Zero gravity )にして、それぞれ段階的に目標を分けるといいのではないでしょうか。

余談ですが、最近はZero gravityの表現を見る機会が増えました。日本でも、もっと、もっと自分自身を見つめてSCUBAが楽しめる環境とダイバーが増えるといいですね。

今回は長くなりましたが、以上となります。

 ご一読ありがとうございました。

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