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「BRING THE SOUL : THE MOVIE」を観て


When you were here before
Couldn't look you in the eye
You're just like an angel
Your skin makes me cry

You float like a feather
In a beautiful world
And I wish I was special
You're so fuckin’ special

But I'm a creep, I'm a weirdo.
What the hell am I doing here?
I don't belong here.
( Radiohead『CREEP』より )

“君がここにいても 目を合わせることができなかった
君はまるで天使のようで 君の肌は僕を泣かせる

君は羽のように この美しい世界を舞う
そして想うよ
僕もspecialだったらよかったのに
君はとてもやばいくらいにspecialだ” ..................



2019年8月7日 『BRING THE SOUL : THE MOVIE』が公開された。
2018年8月25日、ソウルから幕を開けたBTS WORD TOUR LOVE YOURSELFのソウル公演からアメリカ・ヨーロッパ公演までの出来事を納めたドキュメンタリーだ。
冒頭に載せた『CREEP』というRadioheadの名曲の歌詞の一部は、本編とは何も関係ない。けれど不思議にも、このドキュメンタリーを観た私の感想と一致した。
スクリーンの中の7人の男の子たちは、どんな瞬間も美しい。
疲れて荒れた肌も光る汗も、彼らを造るすべてが美しく観る人の心を掴むだろう。
そして想う。
“私もspecialだったらよかったのに”

“俺はキモくて、俺はおかしな奴で、こんなところでぐずぐずしてるなんて、なんて事だ…”となげくトムヨークの歌声がとても沁みる。
毎分毎秒、その身を削るようにファンたちに全力を捧げ生きる彼らはあまりにも美しく私はとてもちっぽけだ。
(※以下、映画の内容に触れています。)




映画はパリ公演を終えた彼らの会食のシーンから始まる。
パラパラと集まるメンバーの中にテヒョンがいない。
どうやら美術鑑賞へ行っているらしい。(そのパリの街での散策も、ただ遊んでいたわけではなく8月に公開された自作曲のMVの撮影の為だったようだ。)
テヒョンが登場するとメンバーたちは一斉にからかっていた。
「主人公は遅れて登場する」と誰かが言っていたけれど、そんなことを言われながらはにかみ、いそいそと席に着いたキムテヒョンは、物語の主人公だけが放つかっこ良さがあった。
そんな風にふざけあい、7人で食事をしながら、ソウルコンから始まったこれまでの出来事を振り返る。大変だったことも辛かったことも、時に少しだけ感慨深げな言い回しをしても、お互いの癖を真似してみたり、他愛のない話の中で、短いようで長かった旅の出来事の多くはおもしろおかしく語られていく。

一つのテーブルを囲みおいしい食事とお酒を呑み、これまでの思い出を語り合う、スペシャルなはずの7人の男の子たちの会話は、とても私たちの日常と重なり合う。
悲しかったことも辛かったことも、失敗をして恥ずかしかったことも…私たちはいつもきっと、おもしろおかしく友人たちに話すだろう。そして誰かと笑いあえた瞬間、それは思っていたよりも大変な問題ではなくなって、大抵のことは、案外良い経験だったな…と思えるようになる。



世界のBTSの魅力は何か…
その理由はどんな言葉で語るよりこの映画を観ればよくわかる。
音楽や映像の編集のセンスもすごく素敵だった。
飾らない7人の姿の合間に挟み込まれる映像の演出はとてもかっこよく、彼らのファンではない人でも楽しめるようになっていると感じたけれど、そこにうつる美しい男の子たちのとんでもないかわいらしさは、ファンではない人にどこまで伝わるのだろう…?

例えば、故郷から遠く離れたパリの街での会食中、ホットク(韓国のお菓子)が出された時、みんな故郷の定番である慣れ親しんだメニューに大喜びをしていたけれど、そんな中ジンくんは「ひとり一つですか?」と尋ねていた。
以前ロブスターを頼みまくってメンバーに呆れられていたジンくんだから、一つ以上食べてもいいか確認したかったのだろうか…?
理由は定かではないけれど、ジンくんぽくてかわいい。

それからプライベートジェットでの移動中、座席のリクライニングがうまく操作できず変な方向になってみんなを笑わせていた、はしゃぐテヒョンのかわいさったらないし、ジムで身体のメンテナンス中、「マッチョになったらどうしよう」と言ったゆんぎのまんざらでもない表情もかわいかったけれど、マッチョになった自分を“キャプテンコリア”になるんじゃ…と言っていたのにはさすがすぎて感動した。
ジョングクがホテルの部屋で作業をしているシーンもかわいかった。愛犬の絵を描いて見せてくれた時、会場から微笑ましい笑い声が聞こえたのは犬の絵がかわいかったからというより「うりくるみ(クルムという愛犬の名前)」という彼の言葉の発音のかわいさと突拍子もない突然の行動へのおどろきからじゃないだろうか。


また、白いフードを着て舞台裏でインタビューに答えていたRMは、BTSの楽曲の文学的な詩の多くを手がけ、国連でのスピーチも立派にこなしたリーダーらしく、とてもすてきな応対をしていたのだけれど、通常、フードの先からまっすぐに出てくるはずの紐は服の内側から伸びているように見えた……。

そう、彼はおそらくこの時、服を表裏反対に着ている。

それが事実かどうか分からないけれど、LYSヨーロッパ版のメイキングを観た人の中には、他にもきっとその服裏表のやつでは…?とざわざわしていた人がいるに違いない。
メイキングでは、ジンくんにもらった服をうれしそうに着て見せた彼に、落ち着いた様子で前ポケットがないから裏表に着ているよとジンくんが指摘していた。
愛すべき人たちだ。


彼らはいつでも最高のパフォーマンスを魅せてくれる。
ソウルコン初日、ミスをして公演後に涙したジョングクに
ゆんぎは、
「100点満点中102点だったよ?」と声をかけていた。
そしてみんなで、それをいうなら『I`m Fine』の時のナムジュンはひどかったと笑いながら言い合っていた。
他のメンバーが体調を崩したりミスをした時もそうだ。
ヨーロッパではグクが怪我をし椅子に座ってパフォーマンスをすることになったり、テヒョンの風邪が悪化し、声が枯れてしまうというハプニングに見舞われたが、そんな時にもお互いに笑って声をかけ合っていた。
テテが痛めたのどで高音が出るのか確認していた時のジミンくんの表情が忘れられない。デビューしてからずっと、練習生の期間を含めるともっともっと長い時間、一日の大半を一緒に過ごしてきたお互いの痛みは、自分のこと以上に手に取るように感じてしまうのだろう。
お互いに痛いほど感じるから、適当な慰めは誰も言わない。感じるからこそ笑って、時には真剣にかけてあげられる言葉がある。

そしてそういった出来事が起こるたび、チームの雰囲気を盛り上げているホソクくんのプロ意識に感動した。
自分だって風邪をひいていたし、みんなと同じように疲れているだろうに、彼はいつでも明るく振る舞う。ステージの序盤の足りない部分を補うよう全体で話し合っていたとき、自分が引っ張っていくからと話していた姿はとてつもなくかっこよかった。
それぞれがそれぞれのやり方で、お互いを支えているのだろう。


クリスマスが休みじゃないことにさみしさを感じたり、長時間のフライトを嘆いたり、そしてすぐ口をついて出てしまった言葉に「世の中はもっと厳しいから、そんなこと言っちゃダメだ」と自分を反省したりする彼らは、私たちにとってあまりにも遠く、とても身近だ。

そして私たちが旅行先でたくさんの刺激を受けリフレッシュできるように、彼らもまた、動物園やベルリンの壁沿いを歩き、色々なことを考える。
ホテルの部屋から見えたとても美しい夜景を見て、
ジミンくんは
「だからみんな高い所に住みたがるんだな」と言った。
そんなありきたりのように思える感想を抱く彼の素直さは、とても身近なようで、とても遠く、美しい。



映画の冒頭でジョングクは“冬の匂いが好き”だと話していた。
ラストシーン、外の空気に触れたナムジュンは
「空の色がきれいだ」と言った。
夜の空気を吸い込むように、風を浴びていたグクの頬に触れた空気は、どんな温度をしていたのだろう。
季節の匂いを感じられること。空の色をきれいだと思えること。
それは誰にでもある当たり前の感覚で、だけど忙しく過ごす日常の中ですぐに見逃してしまう特別なことだ。

そんな世界の美しさを噛みしめながら、彼らはいつものように隣にいる愛おしい兄弟たちとふざけ合い、笑っていた。
当たり前だけど見逃してしまいがちな気持ちや感覚を大切にしているのは、彼らの特別にすてきなところだ。

彼らの心にはいつも愛がある。


だからとても美しい。


I don't care if it hurts
I want to have control
I want a perfect body
I want a perfect soul

I want you to notice
When I'm not around
You're so fuckin' special
I wish I was special                                              (『CREEP』より)

“傷ついたっていい コントロールしたい
完璧な体が欲しい 完璧な魂が欲しい

君に気づいていて欲しいんだ 僕がいないときも
君はめちゃくちゃspecialだって
僕も君のようになりたいんだ…”


コンサートに訪れたARMYのひとりが話していた。
“人生の辛い時期に彼らの音楽と出会った。”
“彼らが私の人生を変えてくれた。”

きっとみんなそれぞれの人生の中で、いろいろな思いを抱えて彼らの音楽に出会ったのだ。
会場を埋め尽くすARMY BOMBの光の数だけ、一人一人の世界がある。


この映画が幕を閉じるさいごに、
夜が落ちてきて、薄闇が7人の美しい男の子たちを包み込む。
街に並ぶビルの窓に、ひとつひとつ明かりが灯る。


まるで『Mikrokosmos』の詩のように、その灯りのひとつひとつに歴史があるのだ。


世界で一番輝いているように見える彼らを照らす、私たちARMYもまた、それぞれが一つの星なのだと彼らは歌う。



You're so fuckin' special
I wish I was special

つまづき転んで涙を流す姿さえ美しくなりたい。

そんなことを願って7人の姿を思うとき、
きっと私たちの中にも愛がある。


ぐずぐずしていた昨日より、もっとかっこよくなれたらいい。
このあまりにスペシャルな男の子たちを、
彼らを照らすだけの今日の自分を、
“昨日よりもっと 明日より少し 愛せるように”





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