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きみはぼくのともだち(テヒョン編2)



1  月とはれた日の柚子茶と友達と



「おっ!つきいっそよ!」とててが言った。

韓国語で“月があります”という意味の言葉だ。
スタジアムという大きな舞台に立ったその翌日、2日目の公演では、その特別なステージの上から突き抜ける空にアンパンマンの形の雲がある、と楽しそうに話していた。

夢のような時間が過ぎて、コンサート会場を後にしながら、携帯のカメラを空に向けた何人かの女の子たちを見た。
ててが月を見ようと言ったから、私たちは空に浮かぶ三日月を見ていた。
てて=テヒョンくんは日本に来るたび「月がきれいですね」と話す。
「月がきれいですね」というのは夏目漱石が“I LOVE YOU”という言葉を日本語に訳したものだ。愛してるという言葉だけでは足りない想いがその遠回しな言葉の中にぎゅっと詰め込まれているみたいだ。
1日を終えた帰り道、月の形を見る。晴れた日に白く光る月を見るたびに“月がきれいだな”と思う。きっと世界中のARMYたちの多くが私と同じことをしているだろう。たったひとりの男の子が無邪気に投げたその言葉を大切に大切に抱きしめるように、暗闇に浮かぶ美しい月を見て、私たちの心はほんの少し、やさしい気持ちになるのだろう。
大人になって、いつのまにか誰かの為に生きて、いつのまにか目の前の事をやり過ごしていくことに必死で、空を見上げることを忘れていたであろう私たちは、あの日のかわいい「つきいっそよ!」という言葉やアンパンマンの雲の形を思い出すたびに空を見る。
そしてその空が晴れていたなら、笑うと四角くなるあの銀河一かわいい口の形を思い出すのだろう。



テヒョンくんは晴れた日に、おばあちゃんと柚子茶を片手に公園で日の出を待っていた日を思い出すという。
私たちはそんな彼を思い出して、ほんのりと切なくあたたかな気持ちになる。

雨の日もそうだ。
雨はいやだなと思う時、雨の日が好きだと言った彼のことを思い出す。ドラマの土砂降りのシーンに憧れていると言ったかわいらしさや、傘を差さず雨に当たってみたら気持ちが良かったと言った彼の感性を思い出して、私たちはまた、あたたかな気持ちになる。

私の顔にニキビが出来たとしよう。
ついていないな…と少し憂鬱な気分になるだろう。
だけど鏡の中の憎たらしいはずのそれを“お友達”と呼んでいたててくんを思い出したなら、私はまた少しやさしい気持ちになれるのだ。
(彼は憎っくき親知らずでさえ、“気難しい子”だったと語っていた。)

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2  銀河一やさしい不思議な男の子


キム・テヒョンは不思議な男の子だ。
2019年のサマーパッケージの撮影で訪れた広場で四葉のクローバーを探していた時、ジミンくんに偽物のクローバーを渡された時の純粋に驚いたかわいい顔が忘れられない。
絵文字みたいな笑顔でとても素直に驚いて、すぐに騙されたことに気づいた彼は少し悲しそうなふりをしておどけて見せたけれど、ジミンくんに対して「なんだよ」とか「これ違うじゃん」などという直接的な言葉を何も言わなかった。
その葉っぱを投げ捨てて冗談交じりにでも怒ってくれたら、ジミンくんは「ごめんごめん!」と軽く謝ってなかったことに出来たのかもしれない。
でも、そんな風にやさしく受け止められたら、なんだかとても悪いことをした気がするのではないだろうか。
ジミンくんはててをハグして「いつか探すよ」と言った。それは偽物のクローバーのようなその場しのぎのものではなく、ジミンくんの心からの言葉だろう。

95年生まれでててと同じ歳のジミンくんは彼のことを、“擦れていなくて汚れていない姿を見て、とても羨ましく思うときがある”と話していた。ジミンくんのことを汚れている人だと思ったことのあるファンは少ないだろう。だけど、きっとそういうテヒョンくんの“きれいさ”が、そんな考えを生んでしまうのではないだろうか。
これは私の想像だけれど、同い年でとても仲が良い2人の、それぞれが見ているこの世界の色はおそらくとても違っている気がする。
例えばジミンくんとグクはお互いに“君は僕 僕は君”と合言葉のように言っている。けれど、テヒョンくんとジミンくんはそうじゃない。
お互いがお互いの違いをよく知っているから、相手がどうして欲しいのかをいつも考え、相手を喜ばせるために、その時望んでいるであろう行動を選択する。たくさんの人たちが2人のじゃれ合いに心惹かれるのは、きっとそこにお互いを思いやる真心がにじみ出ているからだろう。
ジミンくんはててに優しい。
それはジミンくんがもともと優しいから…というだけではなく、いつも自分を思い遣ってくれるテヒョンくんの心を知っているからだろう。

テヒョンくんの世界一大好きなラッパーであるゆんぎヒョンは、生まれ変わったら石ころになりたいそうだ。
テヒョンくんは、もしも来世でゆんぎが石ころになったなら「僕がそれを身につけて美しいところにたくさん行くよ」と言っていた。
そして2019年の初め、GDAで彼はゆんぎヒョンを背負ってステージに登場した。
何故だったかは忘れてしまったけど、コンサート中に何度もハグをしに行って嫌がられていたこともあったし、年末のKBS歌謡祭では、ジミンくんと踊ったダンスにゆんぎも巻き込んでいて、また「やめろよ!」と言われていた。


彼がそういった突拍子もない不思議な行動をとるのは、テヒョンくんが四次元だからだろうか…?私はそうは思わない。
ただ何も考えず、やりたいからやっただけなのかもしれない。だけど、テヒョンくんの何をするか分からない、たわいもない遊びに巻き込まれたゆんぎヒョンは、いつもとても楽しそうに笑っている。何も考えていないのかもしれないけど、彼の行動によって彼の周囲の人たちが笑顔になるなら、それは彼の持っている魔法のような優しさだと私は思う。

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(頬のほくろにスマイルマークを描いたテヒョンくん)




3  HELLO GOOD BOY


毎年、6月にデビューを記念して行われているFESTAのコンテンツで、
ジンくんは、
“昔はしちゃダメだというと逆にそれをするような子だったけど、たくさん話をしていく中でとても積極的に変わってくれた友達だ”と話していた。
ナムジュンも以前「BONVOYAGE」ハワイ編で彼に宛てた手紙の中で、同じような話をしていたけれど、
今回も“テヒョンの独特さは、僕たちを知らない人たちの心をとても惹きつけるもの“だと話していた。
“その自由奔放さは放送されるにはすごく魅力的だけど、周囲の人たちはとても大変だ”とジンくんが笑って話していたその奔放さはたしかに私たちにとってとても魅力的だっただろう。
知らない人に話しかける人懐っこい笑顔も、迷子になっても誰かが助けてくれると、のんびりと散歩しながらさらに遠くへ行ってしまう身勝手さも、駐車場でボール遊びをして危うく道路に転がりそうになりゆんぎに怒られていたことも、映像を観なくても、思い出すだけでとてもとてもかわいくて魅力的だ。

Vliveで最近のお気に入りの曲をかけては楽しそうに歌ったり踊ったり、バラエティ番組に出ては司会の人に気に入られ、独壇場になっていたりと、自由に遊んで見せてくれたあの頃のかわいい彼を見せてくれることは、今となってはとても少ない。
テヒョンくんは幸せの基準値が変わったのだと言っていた。
「僕一人だけが良ければいいという考えを持っていたとしたら、
今はただ、僕たち防弾7人みんなが幸せなら僕は本当に幸せになるだろうし、
否定じゃなくて肯定をした方がもっと良い日が多くなると思います。」

そんな風に考える彼は今、いつも隣で一緒に走っている兄弟たちを想って自分の行動をたくさん選択しているのだろう。
ずっと前からそんな口数は多くなかったけれど、きっと何も言えないで立っている時も笑顔がなくただそこにいる時も、不機嫌や疲れているというわけではなく、誰も傷つけないように、誰も悲しませないように、たくさんの感情を整理しているのだと思う。

そして私はその彼の優しさがすべての人へ向けられるものではないというところにとても魅力を感じる。
海外公演でボルテージの上がったファンたちがステージに押し寄せていた時、席に戻るまで次の曲を歌いませんと言いきったり、weverseでマナーの悪い投稿をしたファンにも何度か注意をしていた。
テヒョンくんの守りたいものは彼の言葉通り、7人の幸せなのだろう。だから、いつもはふわふわと柔らかいオーラをまとっているような彼も、それを脅かす人を前にした時、毅然とした態度を見せる。

いつかVliveで、人付き合いのことで悩んでいたARMYのコメントに
「世の中には合わない人もいるしよく合う人もいるから
よく合う人と一緒に話をしたらその人とすごく良い友達になれるんじゃないでしょうか?」と答えていた。
どうせ合う人とは合うし、合わない人とはどうやって話しても私たちが努力しているようにしか見えないから、気の合う人と良い話をたくさんしながら良い思い出を作って欲しいと話した彼の言葉には、彼の正直さと誠実さと、歳月の重みを感じた。
テヒョンくんは日本の年齢で24歳になる、まだ若い青年だというのに、どうしてこんなに人の気持ちに寄り添えるのだろう?
幼い頃仲間はずれにされたこと、その友達と大人になって偶然会って仲良くなったことをいつかも話してくれたけれど、たくさんの経験が今の彼をつくってきたのだろう。
昔は人懐っこかったけど、自分のことをキム・テヒョンではなくVとして見る人が多く、性格が大きく変わって今の自分が残った…とweverseでARMYの悩みに答えていた。きっとたくさん汚い世界やずるい大人に出会ってきてしまったのだろう。きれいな心を持っているテヒョンくんだから、いつも良い人にだけ囲まれて、きれいなものだけを見て過ごして欲しいけど、きっと私たちが思うよりずっと複雑な世界に揉まれ、傷つけられて汚されて、それでも彼はあんなに美しいままで、私たちの心がふっとほぐれるような優しい言葉をたくさん聞かせてくれるのだろうと思う。

グクが2019年に伸ばしていた髪を切ったことが話題に上がった時、すごくかわいかったよとメンバーたちは口々に褒めていた。
ARMYの中にはグクが髪を伸ばしたことをよく思っていない人もいて、その事を本人たちが知っていたのかどうかは分からないけれど、兄たちが、そんなグクの姿も見れてよかったと口々に話す中、テヒョンくんは、
「次は僕が伸ばします!」と言っていた。
テヒョンくんは時々、知っていて欲しくないことを知っていたりする。
賞賛ならともかく、ファンが適当に放った心ない言葉なんて、知ってほしくなんてないのに、彼はそれを見ている時がある。
だからこれは想像でしかないけれど、グクに向けられた心ない言葉を一つでも目にしてしまったなら、この時放った言葉の持つ意味はとてもとても深く温かい。

ケンカした友達と同じクラスになってしまってどうしようと悩むARMYに
「仲直りしたいならして、嫌ならしないで下さい。
でもその人が仲直りしたい感じなら、そのときは受け入れて下さい。」と声をかけていたテヒョンくんの言葉もまたとても優しかった。
きっと親や学校の先生ならケンカしたら仲直りを促すだろう。だけど、嫌なら許さなくていいと言ってくれると、とても心が軽くなる。相手を許すことのできない自分をこの子はきっともう責めたりしないだろう。そしてもし、自分を否定せず、相手が元どおりを望むならその時は受け入れてあげてという考えは、なんて優しいのだろう。純粋無垢とは違う。ジミンくんのいう“擦れていなくて汚れていない”テヒョンくんをとてもとても感じた。

テヒョンくんは性格が変わってしまったと言っていたけれど、変わらないところもたくさんあると、私は思う。
例えば年末の歌謡祭で、事務所の後輩グループが新人賞を受賞した時、本人たちよりも先にガッツポーズをキメて喜んでいた。この素直さは彼がずっと昔から持っている良いところだ。
「BONVOYAGE」や「RUN BTS!」の中でメンバーたちと過ごす彼もまた、ジミンくんと走り回っていたずらばかりしていたあの頃のテヒョンくんだ。
人は変わる。それは時にさみしいことだけど、良いことでもある。
テヒョンくんは、練習生になることがうれしくて宿舎にくる前に、髪を茶色く染めたそうだ。ナムジュンの手紙の中にいた、お父さんに連れられてやってきて裸足で宿舎を駆け回っていた茶色い髪の毛の男の子は、今もまだ、彼の中にちゃんと生きている。



4  君の幸せをねがって


今、彼にとってこの世界は優しい世界でいてくれるのだろうか?
思いつきで器用にやりこなす天才肌のように見えて、一から十まできちんと確認するテヒョンくんが、きっと私たちに聴かせようと作ってくれたプレイリストだったかもしれないのに、うるさいと言われる世界は。私たちを喜ばせようとしてくれたのに、権利の話を振りかざされる世界は。
ステージやコンテンツだけでは飽き足りず、彼の全てを把握したいとつきまとう狂った感情に晒され、世界の風潮や誰が決めたのか分からない曖昧な常識をたった24歳の男の子に背負わせるこの世界は、彼にとってどんな風に映るのだろう。


2019年の初めに彼は私たちに「風景」という曲をプレゼントしてくれた。
デビューした頃から撮りためてきた大好きなカメラに収められたたくさんの風景は、すべて、私たちARMYがくれたものだから、美しい風景を収める理由もまた、私たちに見せたいからだと言ってくれた。
うれしくて黙っていられなかったのか年末の歌謡祭でもうすぐサプライズのプレゼントがあるとバラしてしまっていた。(その次のサプライズもジミンくんのうっかりによってバレてしまった。)
その次に聴かせてくれた「Winter Bear」のMVはツアー中で忙しい中、パリの美しい町並みの中で撮影されていたとても美しい風景のつまった作品だった。
忙しいのにMVまで撮ったからかは分からないけど、その時テヒョンくんは風邪をひいてしまっていて、笑ってはいけないのだけど、そのことさえもとてもとても愛おしく感じさせてくれた。


「メンバーみんなでずっと幸せに生きていきたいです。

大き舞台にも立つことができたしたくさん機会も得ましたが
もっと高いところを目指すより
今より少し低い位置にいてもいいから僕たちみんなで笑いながら幸せに
いつまでも音楽を続けられたら嬉しいです。」
そう言ったテヒョンくんの願いが、彼の言う謎の天使さまという存在に届いてくれたらいい。解散を考えていたと話した2018年のMAMAで堰を切ったように泣き始めた涙の理由はなんだったのだろう?きっとあの瞬間かみしめていた一緒にいられる喜びがいつまでも消えないで、7人の幸せを願うテヒョンくんの頬に、二度とあの涙が流れなければいい。

私たちの愛はきっと君を傷つけるだろう。
薄汚い世界に君の美しさを晒すだろう。
あるいは大切にガラスケースに入れて飾るように、自由のない世界に閉じ込めるだろう。
それでも守ってあげたいと矛盾だらけの祈りをそっと大切に抱くだろう。
いつもいつもきれいなものばかり見てと、
優しい人に囲まれて、いつかは大好きな君のお父さんみたいに、友達のようなパパになってほしくて、だけど今はまだそうならないで…と、わがままに願うだろう。
わがままな私たちは、非公開練習生だった彼が初めて公開された時、届いた一通の手紙がうれしくて何度も何度も読み返してはヒョン達にも見せびらかしていたあの頃のように、私たちはまだ彼にうれしさをプレゼントすることができているのだろうか?*



5  ビューティフルストーリー


星の王子さまは旅の果てに砂漠にたどり着く。
王様やうぬぼれ屋や商人や、忙しなく働き続ける点灯夫や、煩悩にまみれた色々な人たちと出会い別れ、たどり着いた砂漠で「砂漠って、すこしさびしいね……」と言う。
やがて王子さまにとってさびしかった砂漠は美しいものになった。


「砂漠が美しいのは、どこかに井戸をかくしているからだよ」


この言葉のように彼の見つめる砂漠のような世界にもそんな井戸があるといい。
優しい男の子が、大切なものを守れる世界であってほしい。
星の王子さまみたいに、目に見えない大切なものをたくさんくれる不思議な男の子が、私たちの描いたただの幻想だったとしても、私はどんなときも、何があっても彼を信頼し続けるだろう。


この世界はとても美しい。
雨の降る日も、ほっぺにお友達ができた日も、
月のきれいな夜も、
どこかに君をかくしているこの世界は
とてもとても美しい。
その美しい世界で今日も、君の歌を聴く。
どうか、君の大好きな人たちと笑っていられる世界でいてと祈りながら、
柔らかくてあたたかな君の歌声と優しいメロディと共に
君のくれた美しい風景を想って
きっととびきり楽しいはずの次の物語を祈って



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※おわりに
最後まで読んでくださりありがとうございます。
このnoteは人物の考察ではありません。だれかの中の“好き”という気持ちがいっぱいになりますように。



*雨の日の話→2018 ananより

*IZEマガジンより


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